風邪をひいた際に「冷たい飲み物を飲んでも大丈夫だろうか」と迷われる方は多いのではないでしょうか。
風邪の時に冷たい飲み物を飲むことについては、体温調節機能への負担や免疫機能への影響、のどや気道への刺激などの観点から、一般的には控えることが推奨されています。
風邪による発熱時には体が体温を上げてウイルスと戦おうとしているため、冷たい飲み物により体温を下げることは回復を妨げる可能性があるとされています。
また、冷たい飲み物はのどや気道を刺激し、炎症を悪化させたり咳を誘発したりする場合があります。
ただし、冷たい飲み物の影響には個人差があり、症状の程度や体質によっても適切な対応は異なるため、自分の体調を注意深く観察し、必要に応じて専門的な相談を受けることが重要とされています。
風邪の時に冷たい飲み物を飲むことの影響とリスク
風邪の時に冷たい飲み物を飲むことは、体温調節機能への負担、血行や免疫機能への悪影響、のどや気道への刺激など、複数のリスクを伴う可能性があるため、基本的には避けることが推奨されています。
体温調節機能への影響では、風邪による発熱は体の自然な防御反応の一つであり、体温を上げることでウイルスの増殖を抑制し、免疫システムの働きを活性化させる重要な役割を果たしているとされています。冷たい飲み物を摂取することで体内温度が下がると、この自然な治癒過程が妨げられ、回復が遅れる可能性があります。また、体温を維持しようとする身体の代償機能により、本来ウイルスとの戦いに使われるべきエネルギーが体温調節に消費され、免疫力の低下につながる場合があるとされています。
血行と免疫機能への影響として、冷たい飲み物の摂取により血管が収縮し、血液循環が悪化することで、免疫細胞や栄養素の組織への運搬が阻害される可能性があります。特にのどや上気道周辺の血流が低下すると、炎症部位への免疫細胞の到達が遅れ、炎症の改善が妨げられる場合があるとされています。また、冷えにより自律神経のバランスが乱れ、交感神経が優位になることで、免疫機能の調節に悪影響を与える可能性もあります。
のどや気道への刺激では、冷たい飲み物が炎症を起こしているのどや気道の粘膜に直接触れることで、刺激により炎症が悪化したり、痛みが増強したりする可能性があります。特に急性咽頭炎や扁桃炎を患っている場合には、冷たい刺激により症状が悪化することが多いとされています。また、冷たい飲み物により気道の筋肉が収縮し、咳や痰の排出が困難になったり、気道の過敏性が高まったりする場合もあるとされています。
消化機能への負担として、風邪により既に胃腸の働きが低下している状態で冷たい飲み物を摂取すると、消化機能にさらなる負担をかける可能性があります。冷たい飲み物は胃の血流を低下させ、消化酵素の働きを阻害することで、消化不良や腹痛、下痢などの消化器症状を引き起こす場合があるとされています。また、冷たい飲み物により胃腸が冷えることで、全身の冷えにつながり、免疫機能のさらなる低下を招く可能性もあります。
風邪の時の冷たい飲み物摂取は複数のリスクを伴うため、症状や体調により慎重な判断が必要です。
続いて、風邪の症状別に冷たい飲み物が与える具体的な影響について見ていきましょう。
風邪の症状別・冷たい飲み物が与える具体的な影響
風邪の症状別に冷たい飲み物が与える影響は、発熱、のどの痛み、咳、鼻水などの各症状に対してそれぞれ異なる悪影響をもたらす可能性があり、症状の悪化や回復の遅延につながるとされています。
発熱時の冷たい飲み物の影響では、発熱は風邪ウイルスに対する重要な防御機能であり、冷たい飲み物により体温を下げることは、この自然な治癒過程を妨げる可能性があります。体温が1度上昇すると免疫細胞の活動が約5-6倍活性化するとされており、冷たい飲み物による体温低下は免疫機能の低下を招く可能性があります。また、急激な体温変化により体温調節中枢が混乱し、悪寒や震えが誘発される場合もあるとされています。発熱時には体が脱水しやすい状態にありますが、冷たい飲み物よりも常温や温かい飲み物の方が、体への負担を少なく水分補給を行えるとされています。
のどの痛みへの影響として、炎症を起こしているのどの粘膜に冷たい飲み物が触れることで、血管の急激な収縮により痛みが増強される可能性があります。また、冷たい刺激により炎症部位の血流が低下し、組織修復に必要な栄養素や免疫細胞の供給が阻害される場合があるとされています。のどの筋肉が冷えることで嚥下機能に影響を与え、飲み込み時の不快感や痛みが増加する可能性もあります。冷たい飲み物により咽頭反射が亢進し、咳や嘔吐反射が誘発される場合もあるとされています。
咳や鼻水への影響では、冷たい飲み物による気道への刺激により、既に過敏になっている咳受容体がさらに刺激され、咳の頻度や強度が増加する可能性があります。特に乾性咳嗽(乾いた咳)では、冷たい刺激により咳き込みが悪化し、のどへの負担が増大する場合があるとされています。鼻水に関しては、冷たい飲み物により鼻腔内の血管が収縮し、一時的に鼻づまりが悪化したり、鼻水の粘性が変化したりする可能性があります。また、冷たい刺激により鼻腔や副鼻腔の炎症が悪化し、症状の長期化につながる場合もあるとされています。
全身症状への影響として、風邪による全身倦怠感や筋肉痛、関節痛などの症状は、冷たい飲み物により体が冷えることでさらに悪化する可能性があります。冷えにより血液循環が悪化し、筋肉や関節への酸素・栄養素の供給が減少することで、痛みや不快感が増強される場合があるとされています。また、冷たい飲み物により消化機能が低下し、食欲不振や腹部不快感などの消化器症状が現れたり、既存の症状が悪化したりする可能性もあります。睡眠の質にも影響を与え、体の冷えにより深い睡眠が妨げられ、回復に必要な休息が十分に取れなくなる場合があるとされています。
風邪の各症状に対して冷たい飲み物は概ね悪影響を与える可能性が高いため、症状に応じた適切な選択が重要です。
次に、風邪の時に特に避けるべき冷たい飲み物について説明いたします。
風邪の時に避けるべき冷たい飲み物と理由
風邪の時に避けるべき冷たい飲み物として、氷入りの飲み物、冷たいアルコール飲料、冷たいカフェイン飲料、糖分の多い冷たい飲み物は、それぞれ特有のリスクがあるため特に注意が必要とされています。
氷入りの飲み物では、氷により飲み物の温度が極めて低くなることで、体への冷却効果が最大となり、体温調節機能に大きな負担をかける可能性があります。氷の直接的な刺激により、のどや食道の粘膜が急激に冷却され、炎症の悪化や血管の過度な収縮を引き起こす場合があるとされています。また、氷を噛むことでのどや歯に機械的な刺激を与え、既に炎症を起こしている組織にさらなる負担をかける可能性もあります。特に扁桃炎や咽頭炎がある場合には、氷の刺激により症状が著しく悪化する場合があるとされています。
冷たいアルコール飲料については、アルコール自体が免疫機能を抑制し、脱水を促進する作用があるため、風邪時には特に避けるべき飲み物とされています。冷たいアルコール飲料では、アルコールの有害作用に加えて冷却による悪影響が加わり、回復の大幅な遅延や症状の悪化を招く可能性があります。アルコールによる血管拡張作用と冷却による血管収縮作用が相互に作用することで、血圧や循環動態に悪影響を与える場合もあるとされています。また、アルコールにより判断力が低下し、適切な体調管理や服薬管理ができなくなるリスクもあります。
冷たいカフェイン飲料では、カフェインの利尿作用により脱水が促進され、風邪による発熱で既に脱水傾向にある体にさらなる負担をかける可能性があります。カフェインの覚醒作用により、回復に必要な睡眠が妨げられ、免疫機能の回復が阻害される場合があるとされています。また、カフェインにより胃酸分泌が促進され、風邪により弱った胃腸に負担をかける可能性もあります。冷たいコーヒーや紅茶、エナジードリンクなどは、これらの複合的な悪影響により症状の悪化を招く可能性が高いとされています。
糖分の多い冷たい飲み物として、冷たいジュース、アイスコーヒー、フラペチーノ系の飲み物などは、過剰な糖分摂取により免疫機能が一時的に低下する可能性があります。高糖質の摂取により血糖値が急激に上昇し、その後の急降下により体に負担をかけ、疲労感や倦怠感が増強される場合があるとされています。また、糖分により口腔内の細菌バランスが変化し、のどの炎症が悪化したり、二次感染のリスクが高まったりする可能性もあります。人工甘味料を含む冷たい飲み物も、消化機能への負担や腸内細菌叢への影響により、間接的に免疫機能に悪影響を与える場合があるとされています。
風邪の時に避けるべき冷たい飲み物は多岐にわたり、それぞれに特有のリスクがあるため注意が必要です。
続いて、風邪の時に適した飲み物と代替案について見ていきましょう。
風邪の時に適した飲み物と冷たい飲み物の代替案
風邪の時に適した飲み物として、温かい飲み物を中心とした適切な水分補給により、症状の軽減と回復の促進が期待できるとされています。
温かい飲み物の効果では、温かい飲み物は体を内側から温め、血液循環を促進することで免疫細胞の活動を活性化し、炎症部位への栄養素の供給を改善する効果があるとされています。温かい蒸気を吸入することで、のどや鼻腔の保湿効果も得られ、乾燥による粘膜の刺激を軽減できます。特に生姜湯、はちみつ入りの温かい飲み物、ハーブティーなどは、抗炎症作用や鎮咳作用により症状の緩和に役立つ可能性があります。温かいスープ類も水分補給と栄養補給を同時に行え、消化にも優しいため風邪時の理想的な飲み物とされています。
適切な水分補給の方法として、風邪時には発熱や発汗により通常より多くの水分が失われるため、こまめな水分補給が重要とされています。一度に大量に飲むのではなく、少量ずつ頻繁に摂取することで、胃腸への負担を軽減しながら効果的な水分補給が可能になります。常温の水や白湯も、冷たい飲み物の良い代替となり、体に負担をかけずに水分補給ができるとされています。電解質の補給も重要で、薄めたスポーツドリンクや経口補水液を常温で摂取することで、発熱により失われた電解質を効率的に補うことができます。
症状を和らげる飲み物では、のどの痛みに対してはちみつ入りの温かい飲み物が効果的とされており、はちみつの抗菌作用と保湿効果により症状の緩和が期待できます。咳に対しては温かいレモン湯や生姜湯が、去痰作用や鎮咳作用により効果的とされる場合があります。鼻づまりには温かいペパーミントティーやカモミールティーが、鼻腔の血管拡張や抗炎症作用により症状の軽減に役立つ可能性があります。ただし、これらの効果には個人差があり、アレルギーのある方は注意が必要とされています。
栄養補給に適した飲み物として、温かいスープ類(鶏がらスープ、野菜スープ、味噌汁など)は水分補給と栄養補給を同時に行える優れた選択肢とされています。ビタミンCを豊富に含む温かいゆず茶やローズヒップティーは、免疫機能のサポートに役立つ可能性があります。牛乳を温めたホットミルクは、良質なタンパク質とカルシウムの補給ができ、安眠効果も期待できるとされています。ただし、乳製品により痰が増える感覚を持つ方もいるため、個人の体調に応じて選択することが重要です。
風邪時の飲み物選択は症状の改善と回復促進に重要な役割を果たしますが、適切な判断が困難な場合もあります。
最後に、医療機関に相談すべき場合について説明いたします。
風邪時の飲み物選択で医療機関に相談すべき場合
風邪時の飲み物選択で医療機関への相談を検討すべき状況として、脱水症状の進行、飲み込み困難、基礎疾患による特別な注意が必要な場合などに、適切なタイミングで受診することが重要とされています。
脱水症状が疑われる場合では、口渇感が強い、尿量の著明な減少、尿の色が濃い、皮膚の弾力性の低下、めまいや立ちくらみ、頭痛の悪化などの症状が現れた場合には、早期の医学的評価が必要とされています。特に高熱が続いている場合、嘔吐や下痢を伴う場合、十分な水分摂取ができない場合には、脱水が急速に進行するリスクがあるため速やかな受診が推奨されます。高齢者や小児では脱水症状が重篤化しやすいため、軽微な症状でも注意深く観察し、必要に応じて早期の相談が重要とされています。
飲み込み困難な場合として、のどの痛みや腫れが激しく、水分摂取が困難な場合には緊急性の高い状態の可能性があります。唾液も飲み込めない、声が出ない、呼吸困難を伴うなどの症状がある場合には、急性喉頭蓋炎や扁桃周囲膿瘍などの重篤な疾患の可能性があるため、直ちに医療機関を受診することが必要とされています。また、飲み物を飲む際にむせる、誤嚥を繰り返すなどの症状がある場合には、嚥下機能の評価と適切な水分摂取方法について専門的な指導を受けることが推奨されます。
基礎疾患がある方の注意点として、糖尿病の方では血糖値の変動に注意し、糖分を含む飲み物の摂取について医師の指導を受けることが重要とされています。腎疾患の方では水分制限や電解質管理について、心疾患の方では循環動態への影響について、それぞれ専門的な配慮が必要な場合があります。免疫抑制薬を服用中の方、化学療法中の方などでは、感染症の重篤化リスクが高いため、軽微な症状でも早期の相談が推奨されます。
適切な水分補給指導を受けるタイミングとして、市販の経口補水液や電解質飲料の選択に迷う場合、体重減少が著しい場合、食欲不振により固形物の摂取ができない期間が長い場合などには、管理栄養士や医師による専門的な指導が有効とされています。妊娠中や授乳中の方では、水分補給方法や飲み物の選択について特別な配慮が必要な場合があるため、産婦人科医への相談が推奨されます。また、薬剤との相互作用が心配な場合、ハーブティーなどの安全性について不安がある場合なども、薬剤師や医師への相談により適切な指導を受けることができるとされています。
風邪時の飲み物選択についての判断や対処法には個人差があり、適切な対応についてはご相談ください。適切な水分補給と栄養管理により、風邪からの早期回復と健康維持が期待できる場合があります。
※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療に代わるものではありません。症状や治療に関するご相談は、医療機関にご相談ください。
監修医師

略歴
2014年10月 | 神戸大学博士課程入学 |
2019年3月 | 博士課程卒業医師免許取得 |
2019年4月 | 赤穂市民病院 |
2021年4月 | 亀田総合病院 |
2022年1月 | 新宿アイランド内科クリニック院長 |
2023年2月 | いずみホームケアクリニック |