風邪をひいた後に「髪の毛が抜けやすくなった」と感じられた経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
風邪による抜け毛の増加は、発熱による身体的ストレスや栄養状態の変化、薬剤の影響などによって生じる可能性があるとされています。
風邪で抜け毛が増える現象は一時的なものである場合が多いとされていますが、症状の現れ方や程度には個人差があります。
適切なヘアケアや栄養管理により改善が期待できる場合がありますが、抜け毛が大量に続く場合や他の気になる症状を伴う場合には、専門的な判断が重要とされています。
風邪で抜け毛が増えるのはなぜ?主な原因とメカニズム
風邪で抜け毛が増える主な原因は、発熱による身体的ストレスと栄養状態の変化、薬剤による影響が考えられるとされています。
発熱による身体的ストレスについて、風邪による高熱は全身に大きな負担をかけ、毛髪の成長サイクルに影響を与える可能性があります。毛髪は通常、成長期・退行期・休止期のサイクルを繰り返していますが、発熱などの強いストレスにより成長期の毛髪が一時的に休止期に移行することがあるとされています。この現象は「テロゲン脱毛症」と呼ばれ、ストレス後2〜3ヶ月で抜け毛として現れることが特徴です。
栄養状態の変化も重要な要因です。風邪による食欲不振や消化機能の低下により、毛髪の成長に必要なタンパク質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素が不足する可能性があります。特に亜鉛、鉄分、ビタミンB群、ビタミンDなどは毛髪の健康に重要とされており、これらの不足が一時的な抜け毛の増加につながる場合があるとされています。
薬剤による影響では、風邪薬に含まれる成分が毛髪に影響を与える可能性も考えられます。抗生物質や解熱鎮痛剤なども、長期間の使用により毛髪の成長に影響を与える場合があるとされています。また、風邪による睡眠不足やストレスも、間接的に毛髪の健康に影響を与える可能性があります。
風邪による抜け毛の原因は複合的で個人差があるため、症状の現れ方も人によって異なります。
続いて、風邪による抜け毛の具体的な特徴について見ていきましょう。
風邪による抜け毛の特徴と症状の現れ方
風邪による抜け毛は、一時的で全体的な毛髪の薄くなりとして現れることが多く、特定の部位に限定されない特徴があるとされています。
抜け毛の現れ方の特徴として、風邪の症状が治まった後、約2〜3ヶ月してから抜け毛が増加することが一般的とされています。これは毛髪の成長サイクルの特性によるもので、ストレスを受けた毛髪が休止期を経て自然に抜け落ちるタイミングのためです。抜け毛は徐々に増加し、数週間から数ヶ月続いた後、自然に改善に向かうことが多いとされています。
抜け毛のパターンでは、男性型脱毛症のような特定の部位(頭頂部や生え際)に限定されるのではなく、頭部全体から均等に抜ける傾向があります。洗髪時やブラッシング時に普段より多くの髪が抜けることを感じる方が多く、枕や洗面台に落ちている髪の毛の量が増えたと感じる場合もあります。
症状の程度には個人差が大きく、軽微な変化から明らかに分かる程度まで様々です。一般的には、正常な範囲内での一時的な増加であることが多いとされていますが、日常生活に支障をきたすほどの大量の抜け毛がある場合には、他の原因の可能性も考慮する必要があります。
風邪による抜け毛の特徴を理解することで適切な対応が可能になります。
次に、これらの症状に対する適切な対処法について説明いたします。
風邪で抜け毛が増えた時の対処法とヘアケアのポイント
風邪で抜け毛が増えた場合の対処法として、適切な栄養管理と優しいヘアケアが基本的なアプローチとして重要とされています。
栄養管理の重要性について、毛髪の回復を促進するためには、バランスの取れた食事により必要な栄養素を摂取することが推奨されます。タンパク質は毛髪の主成分であるため、肉類、魚類、卵、豆類などの良質なタンパク質を十分に摂取することが大切です。また、亜鉛を含む牡蠣やナッツ類、鉄分を含む緑黄色野菜やレバー、ビタミンB群を含む全粒穀物なども毛髪の健康に有用とされています。
優しいヘアケアの実践では、抜け毛が増加している時期には頭皮や毛髪への刺激を最小限に抑えることが重要です。洗髪時には優しくマッサージするように洗い、強く擦ることは避けるべきとされています。シャンプーは刺激の少ないものを選び、洗髪後は自然乾燥を心がけるか、ドライヤーを使用する場合は低温で使用することが推奨されます。
生活習慣の改善として、十分な睡眠とストレス管理も毛髪の回復に重要な役割を果たします。質の良い睡眠により成長ホルモンの分泌が促進され、毛髪の再生に役立つ可能性があります。また、適度な運動により血行を促進することも、頭皮の健康維持に有効とされています。
風邪による抜け毛への対処法は個人の状態により効果が異なるため、適切なアプローチについてはご相談ください。
続いて、風邪以外で抜け毛が増える場合の可能性について見ていきましょう。
風邪以外で抜け毛が増える場合の可能性
抜け毛の増加は風邪以外の様々な原因でも生じる可能性があり、適切な判断のためには他の要因も考慮することが重要とされています。
ホルモンバランスの変化による抜け毛として、甲状腺機能異常、男性ホルモンの影響による男性型脱毛症、女性の場合は出産後や更年期によるホルモン変化などが考えられます。これらの場合、抜け毛のパターンや進行の仕方が風邪による一時的な抜け毛とは異なる特徴を示すことが多いとされています。甲状腺機能異常では、抜け毛と同時に体重の変化や疲労感などの全身症状を伴う場合があります。
自己免疫疾患や皮膚疾患による脱毛では、円形脱毛症、脂漏性皮膚炎、乾癬などが原因となる場合があります。これらの場合、特定の部位に限定された脱毛や、頭皮の炎症、かゆみなどの症状を伴うことが特徴とされています。また、感染症による脱毛や、膠原病などの全身疾患に伴う症状として現れる場合もあります。
その他の要因として、薬剤による副作用、過度なダイエットによる栄養不足、精神的ストレス、頭皮への物理的刺激、化学的処理による毛髪の損傷などが考えられます。また、季節的な要因や遺伝的素因、加齢による自然な変化も抜け毛の原因となる可能性があります。
抜け毛の原因は多岐にわたるため、風邪以外の要因が疑われる場合や症状が長期間続く場合には専門的な判断が重要です。
最後に、医療機関を受診すべきタイミングについて説明いたします。
抜け毛の増加で医療機関を受診すべきタイミング
抜け毛の増加で医療機関への相談を検討すべきタイミングとして、抜け毛の量や持続期間、他の症状の有無などを総合的に判断することが重要とされています。
早急な受診を検討すべき症状として、突然大量の抜け毛が生じた場合や、円形やパッチ状の脱毛が現れた場合があります。また、頭皮の発赤、かゆみ、痛み、腫れなどの炎症症状を伴う場合には、感染症や皮膚疾患の可能性があるため早めの相談が推奨されます。全身の倦怠感、体重の急激な変化、発熱などの全身症状を伴う場合にも注意が必要とされています。
継続的な観察が必要なケースでは、風邪の回復後6ヶ月以上経過しても抜け毛が改善しない場合や、徐々に抜け毛が増加している場合があります。また、家族歴に脱毛症がある場合や、生活習慣の改善を行っても症状が続く場合には、専門的な評価が有用な場合があります。
特に注意が必要な方として、既に薬物治療を受けている方では、薬剤による副作用の可能性もあるため変化に気づいた時点でご相談いただくことが大切です。また、妊娠中や授乳中の女性、成長期のお子様では、ホルモンバランスや成長過程との関連も考慮する必要があるため、気になる変化がある場合には早めの相談が推奨されます。
抜け毛の増加についての判断や対処法には個人差があり、適切な対応についてはご相談ください。早期の適切な対応により、原因の特定や症状の改善、さらなる進行の予防が期待できる場合があります。
※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療に代わるものではありません。症状や治療に関するご相談は、医療機関にご相談ください。
監修医師

略歴
2014年10月 | 神戸大学博士課程入学 |
2019年3月 | 博士課程卒業医師免許取得 |
2019年4月 | 赤穂市民病院 |
2021年4月 | 亀田総合病院 |
2022年1月 | 新宿アイランド内科クリニック院長 |
2023年2月 | いずみホームケアクリニック |