風邪で力が入らないのはなぜ?筋力低下の症状と回復のポイントとは

風邪

風邪をひいた際に「身体に力が入らない」「手足がだるくて力が出ない」といった経験をされた方は多いのではないでしょうか。

風邪による力が入らない症状は、免疫反応に伴う身体の変化や体力の消耗、栄養・水分不足などによって生じる可能性があるとされています。

風邪で力が入らないと感じる症状は身体の自然な反応の一つと考えられていますが、筋力低下の程度や持続期間には個人差があります。

適切な休息と栄養補給により症状の軽減が期待できる場合がありますが、異常に強い筋力低下が続く場合や他の気になる症状を伴う場合には、専門的な判断が重要とされています。

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風邪で力が入らないのはなぜ?筋力低下が生じる原因とメカニズム

風邪で力が入らない症状の背景には、免疫システムの活動、エネルギー消費の増大、栄養・水分の不足、服用薬剤の作用など、複数の要因が相互に影響し合っているとされています。

免疫反応による筋力低下のメカニズムについて、風邪ウイルスと闘うために活性化された免疫システムは、サイトカインと呼ばれる炎症性物質を放出します。これらのサイトカインは筋肉組織にも影響を与え、筋肉の収縮力を低下させることが知られています。特にインターロイキン-1やTNF-αなどは、筋タンパク質の分解を促進し、筋力の低下を引き起こす可能性があるとされており、これは身体がエネルギーを免疫反応に集中させるための反応と考えられています。

体力消耗と代謝の変化も重要な要因です。風邪による発熱は基礎代謝を大幅に上昇させ、普段より多くのエネルギーが消費されます。また、食欲不振により十分な栄養が摂取できない状態が続くと、筋肉のエネルギー源であるグリコーゲンが枯渇し、筋力の低下につながる可能性があります。脱水状態も血液循環に影響を与え、筋肉への酸素や栄養の供給が低下することで力が入らない状態を引き起こすとされています。

薬剤による影響では、風邪薬に含まれる成分が筋肉の神経伝達に影響を与える場合があります。解熱鎮痛剤や抗ヒスタミン薬などは、種類によっては筋力低下や倦怠感を副作用として持つものがあるとされています。また、咳止め薬に含まれる成分も中枢神経系に作用し、筋肉の協調性に影響を与える可能性があります。

このように、免疫システムの活動、エネルギー消費の増大、栄養・水分の不足、服用薬剤の作用といった多数の要因が重なり合って筋力低下が引き起こされます。

続いて、風邪による力が入らない症状の具体的な特徴について見ていきましょう。

風邪による力が入らない症状の特徴と他の症状との関連

風邪に伴う筋力低下には、全身性かつ持続性という特有の性質があり、通常の疲労感とは明確に区別される症状パターンを示すとされています。

筋力低下の現れ方の特徴として、起き上がる、立ち上がる、歩くなどの基本的な動作に普段より力が必要になる、重いものを持ち上げられない、階段の昇降がつらいなどがあります。特に朝起きた時に顕著に現れることが多く、一日を通して改善しにくい傾向があるとされています。また、握力の低下により瓶のふたが開けられない、文字を書く手に力が入らないなど、細かい動作にも影響が現れる場合があります。

他の風邪症状との関連では、発熱の程度と筋力低下の強さが相関することが多いとされています。熱が高いほど力が入らない症状も強くなる傾向があり、解熱と共に徐々に改善する場合があります。全身の倦怠感や関節痛、筋肉痛と同時に現れることも多く、これらの症状は相互に影響し合うとされています。咳や鼻水などの呼吸器症状により睡眠の質が低下することも、筋力回復の遅れにつながる可能性があります。

症状の経過については、風邪の初期から中期にかけて最も強く現れることが多く、他の風邪症状と並行して改善する傾向があります。ただし、筋力の完全な回復には体力の回復が必要なため、発熱などの急性症状が改善した後も数日から1週間程度は軽度の筋力低下が続く場合があるとされています。高齢者や基礎疾患をお持ちの方では、回復により長い期間を要する可能性があります。

このような全身性かつ持続性の筋力低下の症状パターンを認識することで、より効果的な対応策を講じることができます。

次に、これらの症状に対する適切な対処法について説明いたします。

風邪で力が入らない時の対処法と日常生活での工夫

風邪による筋力低下の回復には、充分な安静、バランスの取れた栄養・水分摂取、徐々に活動レベルを上げていく段階的アプローチが効果的とされています。

十分な休息と栄養補給について、筋力低下は身体の回復に必要な自然な反応であるため、無理に活動を続けるよりも十分な休息を取ることが推奨されます。良質なタンパク質を含む消化の良い食事を心がけ、筋肉の修復に必要な栄養素を補給することが大切です。水分補給も重要で、特に発熱時には通常より多めの水分摂取が必要とされています。ビタミンB群やビタミンCなどの栄養素も筋力回復に役立つ可能性があります。

日常生活での注意点では、転倒や怪我を防ぐため、普段より慎重に行動することが重要です。階段の昇降時には手すりを使用し、重いものを持つ際には他の人に協力を求めることが推奨されます。入浴時には立ちくらみや転倒に注意し、必要に応じて椅子を使用することも有効です。運転や危険を伴う作業は避け、安全を最優先に考えることが大切です。

段階的な活動再開の方法では、症状の改善に合わせて徐々に活動量を増やすことが重要とされています。最初は軽い散歩程度から始め、体調を見ながら少しずつ運動強度を上げていくことが推奨されます。急激な運動は体力の消耗を招き、回復を遅らせる可能性があるため注意が必要です。職場復帰や日常活動の再開についても、段階的に行うことで再発や症状の悪化を防ぐことができるとされています。

このような充分な安静、バランスの取れた栄養・水分摂取、徐々に活動レベルを上げていく回復方法の詳細については、個人の状況を考慮してご相談ください。

続いて、風邪以外で力が入らない症状が続く場合の可能性について見ていきましょう。

風邪以外で力が入らない場合の可能性

筋力低下を引き起こす要因は風邪以外にも神経・筋疾患、内分泌疾患、精神疾患など多岐にわたるため、総合的な視点からの原因検討が必要とされています。

神経・筋疾患による筋力低下では、重症筋無力症、多発性硬化症、筋炎、末梢神経障害などが原因となる場合があります。重症筋無力症では特に眼瞼下垂や複視などの症状を伴うことが多く、活動により筋力低下が悪化する特徴があります。多発性硬化症では筋力低下と共に感覚障害や視覚異常を伴う場合があるとされています。筋炎では筋肉痛や圧痛を伴う筋力低下が特徴的です。

内分泌疾患や代謝異常による筋力低下として、甲状腺機能低下症、副腎機能不全、糖尿病、電解質異常などが考えられます。甲状腺機能低下症では筋力低下と共に体重増加、寒がり、徐脈などの症状を伴うことが多いとされています。副腎機能不全では易疲労性や色素沈着を伴う場合があります。低カリウム血症などの電解質異常では急激な筋力低下を引き起こす可能性があります。

その他の原因として、うつ病などの精神疾患、慢性疲労症候群、貧血、肝疾患、腎疾患、悪性腫瘍なども筋力低下の原因となる可能性があります。薬剤の副作用(ステロイド、利尿剤、スタチンなど)、アルコールの過剰摂取、栄養不良、長期間の不活動なども筋力低下に関与する場合があるとされています。また、加齢に伴う筋肉量の減少(サルコペニア)も考慮すべき要因です。

このように神経・筋疾患、内分泌疾患、精神疾患など多岐にわたる原因が考えられるため、風邪以外の可能性についても総合的な評価が重要です。

最後に、医療機関を受診すべきタイミングについて説明いたします。

異常な筋力低下で医療機関を受診すべきタイミング

医療機関での相談が必要な筋力低下かどうかは、症状の重症度、継続期間、併発症状、日常生活への影響度を多角的に検討して判断することが大切とされています。

早急な受診を検討すべき症状として、急激に進行する筋力低下や、呼吸筋の麻痺による呼吸困難、嚥下困難、複視や眼瞼下垂などの症状を伴う場合があります。また、歩行困難や立ち上がれないほどの重度の筋力低下、意識障害を伴う場合には緊急性が高いとされています。感覚障害や膀胱直腸障害を伴う筋力低下も早急な対応が必要な場合があります。

継続的な観察が必要なケースでは、風邪症状が完全に回復したにもかかわらず筋力低下が2週間以上続く場合や、日常生活に支障をきたすほどの筋力低下がある場合があります。徐々に進行する筋力低下や、特定の筋群に限局した筋力低下、筋肉痛や筋肉の萎縮を伴う場合にも相談が推奨されます。また、体重減少、発熱、皮疹などの全身症状を伴う筋力低下にも注意が必要とされています。

特に注意が必要な方として、既に神経疾患や内分泌疾患などの慢性疾患をお持ちの方では、基礎疾患の悪化や合併症の可能性もあるため、変化に気づいた時点で早めにご相談いただくことが大切です。また、高齢者では軽微な症状でも急激に悪化する可能性があるため、家族の方による注意深い観察も重要です。複数の薬を服用されている方では薬剤の副作用の可能性も考慮する必要があります。

このような筋力低下の評価や対応方法は個々の状況によって異なるため、適切な判断についてはご相談ください。早期の適切な対応により、原因の特定や症状の改善、生活の質の向上が期待できる場合があります。


※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療に代わるものではありません。症状や治療に関するご相談は、医療機関にご相談ください。

監修医師

理事長・院長
今村 英利
Imamura Eli

略歴

2014年10月神戸大学博士課程入学
2019年3月博士課程卒業医師免許取得
2019年4月赤穂市民病院
2021年4月亀田総合病院
2022年1月新宿アイランド内科クリニック院長
2023年2月いずみホームケアクリニック