「アトピーの症状は何が原因で悪くなるの?」思われていらっしゃる方は多いのではないでしょうか。
アトピー性皮膚炎には様々な要因が関与しており、個人によって異なるパターンがあります。
症状の悪化を繰り返すことで慢性化や重症化につながる可能性があるため、原因の特定と適切な対応が重要です。
環境要因、生活習慣、ストレス、スキンケアの問題など、複数の要素が複合的に作用することが多いとされています。
悪化の原因を理解し予防策を講じることで、症状の安定化が期待できる場合があります。個々の要因や対策については、専門的な評価が重要とされています。
アトピーが悪化する主な原因とメカニズム
アトピー性皮膚炎が悪化する主な原因として、ダニ・カビ・花粉などの環境アレルゲン、睡眠不足や食生活の乱れなどの生活習慣要因、精神的ストレス、感染症や体調変化などが挙げられ、これらが複合的に作用して症状の悪化を引き起こすとされています。
環境要因による悪化について、室内環境に存在するダニ、カビ、ペットの毛やフケなどのアレルゲンは、アトピー性皮膚炎の悪化要因として重要です。特にダニは寝具や布製品に多く生息し、その死骸やフンがアレルゲンとなります。カビは湿度の高い環境で繁殖しやすく、浴室や結露しやすい場所に注意が必要です。また、大気汚染物質(PM2.5、排気ガスなど)も皮膚への刺激となり、症状を悪化させる可能性があります。住環境の清潔度や換気状態が症状に影響するとされています。
生活習慣に関連する要因では、睡眠不足は免疫バランスを乱し、皮膚のバリア機能を低下させるため、症状悪化の大きな要因となります。特に夜更かしや不規則な睡眠リズムは、体内時計を乱し炎症反応を増強させる可能性があります。食生活では、栄養バランスの偏り、アルコールの過剰摂取、刺激物の摂取などが悪化要因となることがあります。また、過度な入浴や熱いお湯での洗浄、石鹸の使い過ぎなども皮膚の乾燥を招き、症状を悪化させる可能性があるとされています。
精神的ストレスの影響では、仕事や人間関係のストレス、不安、緊張などの精神的負担は、自律神経系や免疫系に影響を与え、アトピー性皮膚炎の症状を悪化させることが知られています。ストレスによりかゆみの感受性が高まり、掻き壊しが増えることで症状が悪化するという悪循環が形成されます。また、アトピー性皮膚炎の症状そのものがストレス源となり、さらなる悪化を招く場合もあります。ストレス管理は症状コントロールの重要な要素とされています。
体調変化による悪化について、風邪やインフルエンザなどの感染症、疲労の蓄積、月経周期に伴うホルモン変動、妊娠・出産などの身体の変化は、免疫状態に影響を与えアトピー症状を悪化させる可能性があります。特に感染症により免疫系が活性化すると、アレルギー反応も増強されることがあります。また、慢性的な疲労は皮膚のバリア機能を低下させ、外部刺激に対する抵抗力を弱める可能性があるとされています。
このように、環境アレルゲン、生活習慣の乱れ、精神的ストレス、体調変化など多様な要因が相互に作用して症状の悪化を引き起こします。
続いて、季節や気候による悪化の原因について見ていきましょう。
季節や気候によるアトピー悪化の原因
アトピー性皮膚炎の症状は季節や気候条件によって大きく変動し、冬季の乾燥、夏季の汗と高温、季節の変わり目の気温差などが悪化の引き金となることが多く、個人によって悪化しやすい季節のパターンが異なるとされています。
季節ごとの悪化パターンについて、冬季(11月〜2月)は最も症状が悪化しやすい季節とされています。空気の乾燥により皮膚の水分が失われやすく、バリア機能が低下します。また、暖房の使用により室内も乾燥し、さらに症状を悪化させます。厚手の衣類による摩擦や蒸れも悪化要因となります。春季(3月〜5月)は花粉の飛散により、花粉症を合併している方では症状が悪化しやすくなります。また、気温の変動が大きく、体温調節が難しい時期でもあります。
夏季(6月〜8月)の悪化要因では、高温多湿により発汗が増加し、汗が刺激となってかゆみや炎症が悪化することがあります。汗に含まれる塩分や老廃物が皮膚を刺激し、特に首や関節部位などの汗が溜まりやすい部位で症状が悪化しやすくなります。また、強い紫外線も皮膚に刺激を与え、炎症を増強させる可能性があります。エアコンによる室内の乾燥や、プールの塩素も悪化要因となることがあります。秋季(9月〜11月)は気温や湿度が安定しやすく比較的症状が落ち着く時期ですが、季節の変わり目の急激な気温変化により悪化することもあります。
気温・湿度の影響では、皮膚のバリア機能は適度な湿度(40〜60%程度)で最も良好に保たれます。湿度が低すぎると皮膚が乾燥し、高すぎると汗による刺激が増加します。また、急激な気温変化は体温調節機能に負担をかけ、自律神経のバランスを乱すことで症状が悪化する可能性があります。寒暖差の大きい日や、室内外の温度差が大きい環境では特に注意が必要とされています。
紫外線と汗の影響について、紫外線は皮膚の炎症を引き起こし、DNA損傷や活性酸素の発生により症状を悪化させる可能性があります。一方、適度な日光浴はビタミンDの生成を促進し症状改善に寄与する場合もあるため、バランスが重要です。汗は本来体温調節に必要なものですが、アトピー性皮膚炎の方では汗が皮膚に残ることで刺激となり、かゆみや炎症を引き起こします。汗をかいた後は速やかに拭き取り、可能であれば洗い流すことが推奨されます。
季節の変わり目の注意点では、気温や湿度の急激な変化に体が適応できず、免疫バランスが乱れやすくなります。また、季節の変わり目は生活リズムが変化しやすい時期でもあり(新学期、新年度、衣替えなど)、これらのストレスも症状悪化に関与する可能性があります。季節の変わり目には予防的にスキンケアを強化し、体調管理に注意することが効果的とされています。
このように、季節や気候条件は多様な経路でアトピー症状に影響を与え、個人により悪化しやすい季節パターンが異なります。
次に、スキンケアや治療に関連する悪化原因について説明いたします。
スキンケアや治療に関連する悪化原因
アトピー性皮膚炎の悪化は、不適切なスキンケア方法、保湿の不足、治療薬の不適切な使用や自己中断などの治療管理の問題によっても引き起こされ、適切なケアと治療の継続が症状安定化に不可欠とされています。
不適切なスキンケアについて、刺激の強い石鹸やボディソープの使用、熱いお湯での洗浄、タオルでの強い摩擦などは、皮膚のバリア機能を損ない症状を悪化させます。特に、「清潔にしよう」として過度に洗浄することは、必要な皮脂まで除去してしまい、かえって乾燥を招く可能性があります。また、入浴後の保湿を怠ると、入浴により一時的に水分を含んだ皮膚から急速に水分が蒸発し、入浴前よりも乾燥する「過乾燥」の状態になります。入浴は5〜10分程度のぬるめのお湯で、刺激の少ない洗浄剤を使用し、入浴後は速やかに保湿することが重要とされています。
薬剤使用の問題では、ステロイド外用薬を使用している場合、医師の指示を守らずに急に中断したり、使用量や頻度を自己判断で変更したりすると、症状が悪化したりリバウンドが起こったりする可能性があります。また、十分な量を塗布していない、塗る範囲が不適切、塗るタイミングが不適切などの使用方法の問題も、治療効果を低下させ症状悪化につながります。さらに、複数の外用薬を使用している場合、塗る順序や間隔を誤ると効果が減弱することもあるとされています。
保湿不足による悪化では、アトピー性皮膚炎の基本治療は保湿であり、保湿を怠ると皮膚のバリア機能が低下し、症状が悪化します。「症状が良くなったから保湿をやめる」というのは最も多い失敗パターンの一つです。症状が改善した後も予防的に保湿を継続することが、寛解状態の維持に重要です。保湿剤の使用量が不十分、塗る頻度が少ない、塗り忘れが多いなども、保湿効果を十分に得られず悪化につながる可能性があります。
治療の自己中断リスクについて、症状が改善すると治療を自己判断で中断してしまう方が多くいますが、これは再燃の最大の原因となります。アトピー性皮膚炎は慢性疾患であり、見た目に症状が改善しても皮膚のバリア機能は完全には回復していない場合が多いため、継続的な治療とスキンケアが必要です。治療の中断や減量については、必ず医師と相談しながら段階的に行うことが重要です。また、定期受診を怠ると、症状の変化に気づきにくく、悪化が進行してから対応することになり、回復に時間を要する可能性があるとされています。
このように、不適切なスキンケア、保湿不足、治療管理の問題などが症状悪化を招き、適切なケアと治療継続が重要です。
続いて、悪化を防ぐための具体的な対策について見ていきましょう。
アトピー悪化を防ぐための対策と工夫
アトピー性皮膚炎の悪化を防ぐには、個人の悪化要因を特定し、生活環境や習慣の調整、早期対応の実践、症状パターンの記録を通じた管理が有効であり、これらを継続的に実施することで症状の安定化が期待できるとされています。
悪化要因の特定方法について、自分にとっての悪化要因を特定することが予防の第一歩です。症状が悪化した際に、その前後の生活状況を振り返り記録することで、パターンが見えてきます。食事内容、睡眠時間、ストレスの有無、天候や気温、接触したもの、使用した製品など、できるだけ詳細に記録することが推奨されます。数週間から数ヶ月の記録を蓄積することで、自分特有の悪化要因が明確になることが多いとされています。ただし、複数の要因が重なって悪化する場合も多いため、一つの要因だけに固執せず、総合的に評価することが重要です。
日常生活での予防策では、住環境の整備(定期的な掃除、換気、適切な湿度管理、寝具の洗濯)、規則正しい生活リズム(十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動)、ストレス管理(リラックスできる時間の確保、趣味や楽しみの時間)、適切な衣類の選択(肌に優しい綿素材、ゆったりしたサイズ、こまめな洗濯)などが基本となります。また、季節や体調に応じたスキンケアの調整、悪化要因となるアレルゲンや刺激物の回避なども重要です。完璧を目指すとストレスになるため、できる範囲で継続することが大切とされています。
悪化時の早期対応について、症状が悪化し始めた初期段階で適切に対応することで、重症化を防ぐことができます。「いつもと違う」「少し悪化しているかも」と感じた時点で、保湿を強化する、外用薬の使用を適切に調整する、悪化要因を避ける、十分な休息を取るなどの対応を速やかに行うことが効果的です。我慢して放置すると症状が進行し、回復により長い期間を要することになります。また、自己判断で対応が難しい場合には、早めに医療機関を受診することが推奨されます。
悪化パターンの記録では、症状日記やスマートフォンのアプリなどを活用して、日々の症状の程度、かゆみの強さ、睡眠の質、使用した薬の種類と量、悪化要因などを記録することが有効です。また、定期的に皮膚の写真を撮影しておくと、視覚的に経過を確認でき、医師への説明も容易になります。これらの記録は、悪化パターンの特定、治療効果の評価、医師との情報共有に役立ちます。長期的な記録により、季節性の変動や生活習慣との関連が明確になり、より効果的な予防策を立てることができるとされています。
このように、悪化要因の特定、予防的な生活調整、早期対応、記録による管理を継続することで症状の安定化が期待できます。
最後に、医療機関を受診すべきタイミングについて説明いたします。
アトピーの症状で医療機関を受診すべきタイミング
医療機関での相談が必要なアトピー性皮膚炎の悪化かどうかは、症状の急激な変化、自己管理での対応困難さ、二次感染の兆候、生活への重大な影響を多角的に検討して判断することが大切とされています。
早急な受診を検討すべき症状として、急激に症状が悪化し広範囲に湿疹が拡大した場合、発熱を伴う皮膚症状、黄色いかさぶたや膿を伴う皮膚病変(とびひなど二次感染の疑い)、広範囲に水疱が多発した場合(カポジ水痘様発疹症の疑い)があります。また、かゆみが制御不能で睡眠が全くとれない、掻き壊しによる出血が止まらない、皮膚の痛みが強い、全身状態の悪化(発熱、倦怠感、リンパ節腫脹など)を伴う場合には早急な対応が必要とされています。これらは重症化や合併症のリスクがあるため、速やかな受診が推奨されます。
継続的な観察が必要なケースでは、適切なスキンケアや治療を行っても症状が改善しない場合や、悪化と改善を繰り返し安定しない場合があります。これまで効果があった治療が効かなくなった、悪化の原因が特定できない、複数の悪化要因が重なっている、生活や仕事に支障をきたすほどの症状が続くなどの場合には、治療方針の見直しや専門的な評価が必要です。また、悪化を繰り返すことで精神的な負担が大きくなっている場合にも、心理的サポートを含めた総合的な対応について相談することが推奨されます。
特に注意が必要な方として、乳幼児では症状が急速に悪化する可能性があり、掻き壊しによる感染リスクも高いため、悪化の兆候が見られた時点で早めの相談が推奨されます。免疫抑制薬を使用中の方や基礎疾患をお持ちの方では、感染症のリスクが高いため注意深い観察が重要です。妊娠中・授乳中の方では、治療薬の選択に制限があるため、症状が悪化した際には速やかに相談することが大切です。また、これまで安定していた方が急に悪化した場合には、新たな悪化要因の出現や他の疾患の可能性もあるため、専門的な評価が必要とされています。
このような症状の急激な変化、自己管理の困難さ、二次感染の兆候、生活への重大な影響の多角的検討に基づく適切な対応については、ご相談ください。早期の適切な対応により、症状のコントロール、合併症の予防、生活の質の向上が期待できる場合があります。
※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療に代わるものではありません。症状や治療に関するご相談は、医療機関にご相談ください。
監修医師

略歴
2014年10月 | 神戸大学博士課程入学 |
2019年3月 | 博士課程卒業医師免許取得 |
2019年4月 | 赤穂市民病院 |
2021年4月 | 亀田総合病院 |
2022年1月 | 新宿アイランド内科クリニック院長 |
2023年2月 | いずみホームケアクリニック |