アトピーはいつから発症する?年齢別の発生時期と症状の特徴について

アトピー

「アトピーはいつから発症するの?」「赤ちゃんの湿疹はいつからアトピーと診断されるの?」といった疑問をお持ちの方は多いのではないでしょうか。

発症時期や症状の現れ方には個人差があり、年齢によって特徴的なパターンがあります。

乳児期に発症するケースが最も多いとされていますが、幼児期以降や成人になってから発症する場合もあります。

発症時期によって症状の特徴や経過も異なることが知られています。

早期発見と適切な対応により症状の改善が期待できる場合がありますが、個々の発症時期や診断については専門的な評価が重要とされています。

アトピーはいつから発症するのか?年齢別の発症パターン

アトピー性皮膚炎の発症時期は、約60〜70%が生後6ヶ月までに、約80〜90%が2歳までに発症するとされており、乳児期が最も多い発症時期ですが、幼児期以降や成人期に新たに発症するケースもあり、年齢によって異なる発症パターンがあります。

乳児期の発症(生後2ヶ月〜2歳)について、アトピー性皮膚炎の最も典型的な発症時期は乳児期です。生後2〜3ヶ月頃から症状が現れ始めることが多く、遅くとも2歳までに発症するケースが大半を占めます。この時期の発症は、皮膚のバリア機能が未熟であることや、免疫系の発達途中であることが関与していると考えられています。乳児期に発症した場合、成長とともに症状が改善するケースも多く、約30〜40%が3歳までに、約50〜70%が学童期までに寛解するという報告があります。ただし、重症例や家族にアレルギー疾患の病歴が多い場合には、寛解率がやや低くなる傾向があるとされています。

幼児期・学童期の発症では、2歳以降に初めて発症するケースは、乳児期発症と比較すると少ないものの一定数存在します。この時期の発症は、幼稚園や保育園、学校など集団生活の開始によるストレスや環境の変化、感染症の頻度増加などが影響している可能性があります。また、食物アレルギーが関与するケースも見られます。幼児期・学童期発症の場合、乳児期発症と比較して症状が長期化する傾向があり、思春期から成人期まで持続する割合が高いとされています。

思春期・成人期の発症について、思春期(12〜18歳頃)や成人期(18歳以降)に初めて発症するアトピー性皮膚炎もあります。この年齢での新規発症は全体の約10〜20%程度とされています。成人期発症の特徴として、顔面や首、上半身を中心に症状が現れやすく、乾燥型の症状が主体となることが多いとされています。ストレス、睡眠不足、不規則な生活、化粧品や整髪料などの刺激、職業性の曝露などが発症の引き金となる場合があります。成人期発症の場合、寛解率は乳児期発症と比較して低く、長期的な管理が必要となることが多いとされています。

高齢期の発症では、60歳以降に初めてアトピー性皮膚炎と診断されるケースも稀に存在します。ただし、高齢者の皮膚炎は他の疾患(貨幣状湿疹、皮脂欠乏性湿疹など)との鑑別が重要で、真のアトピー性皮膚炎かどうかの診断は慎重に行う必要があります。高齢者では皮膚のバリア機能が低下していること、免疫機能の変化、複数の薬剤使用などが発症に関与する可能性があるとされています。

このように、アトピー性皮膚炎は生後6ヶ月までに約60〜70%、2歳までに約80〜90%が発症する乳児期が最多ですが、あらゆる年齢で発症する可能性があります。

続いて、アトピーの初期症状がいつから現れるかについて見ていきましょう。

アトピーの初期症状といつから現れるか

アトピー性皮膚炎の初期症状は年齢によって異なる特徴を示し、乳児期では生後2〜3ヶ月頃から顔や頭部に湿疹が現れ始め、幼児期以降では関節部位を中心に症状が出現することが多く、症状の現れ方や経過にも個人差があるとされています。

乳児期の初期症状について、生後2〜3ヶ月頃から、まず頬や額、頭部に赤みやカサカサした湿疹が現れることが多いとされています。最初は軽度の乾燥や赤みから始まり、徐々にじくじくとした湿疹に進行する場合があります。特徴的なのは、口の周りは比較的症状が出にくく、「口周囲の蒼白」と呼ばれる所見が見られることがあります。症状は対称性に現れることが多く、両頬や両腕など左右対称の部位に出現します。この時期の症状は、乳児湿疹や脂漏性皮膚炎との鑑別が難しい場合があり、経過観察と専門的な評価が必要とされています。

年齢による症状の現れ方の違いでは、乳児期後半から幼児期(1〜2歳頃)になると、顔の症状は軽減し、首、肘の内側、膝の裏側など関節部位に症状が移行することが典型的なパターンです。この時期になると、じくじくした湿疹から乾燥した湿疹へと性質が変化し、掻き壊しにより皮膚が厚くなる(苔癬化)ことがあります。学童期以降では、顔面では眼の周囲、口の周囲に症状が出やすく、体幹では乾燥した皮膚と湿疹が混在します。思春期・成人期では、顔面、首、胸、背中など上半身を中心に症状が現れやすく、乾燥が主体となる傾向があるとされています。

症状が出始めてからの経過について、初期症状が現れてから数週間から数ヶ月の経過を観察することで、アトピー性皮膚炎かどうかの判断がより明確になります。アトピー性皮膚炎の場合、症状が一時的に改善しても再び悪化するという慢性的な経過を辿ることが特徴的です。季節や環境の変化、体調によって症状が変動し、良くなったり悪くなったりを繰り返します。また、強いかゆみを伴うことが特徴で、特に夜間のかゆみにより睡眠が妨げられることがあります。

早期発見のポイントでは、皮膚の乾燥が持続する、保湿をしても乾燥が改善しない、特定の部位に繰り返し湿疹が現れる、かゆみのために掻く行動が見られる、家族にアレルギー疾患の病歴がある、などのサインがある場合には、早めの相談が推奨されます。特に乳児では、単なる乳児湿疹と思っていても実はアトピー性皮膚炎の初期症状である場合があるため、症状が2ヶ月以上続く場合や広範囲に広がる場合には専門的な評価が重要とされています。

このように、初期症状は年齢により異なり、乳児期では生後2〜3ヶ月頃から顔面に、幼児期以降では関節部位に症状が現れ始めます。

次に、アトピーの診断がいつから可能かについて説明いたします。

アトピーの診断はいつから可能か

アトピー性皮膚炎の診断は、症状の経過と特徴的な所見を総合的に評価して行われ、生後2〜3ヶ月以降であれば診断可能ですが、乳児湿疹との鑑別には数ヶ月の経過観察が必要な場合があり、確定診断のタイミングは個々の症状や経過によって異なるとされています。

診断の基準と時期について、アトピー性皮膚炎の診断は日本皮膚科学会のガイドラインに基づいて行われます。主な診断基準として、かゆみがある、特徴的な湿疹の分布(年齢による好発部位)、慢性・反復性の経過(乳児では2ヶ月以上、それ以外では6ヶ月以上)などが挙げられます。理論的には生後2〜3ヶ月頃から診断は可能ですが、この時期は他の皮膚疾患(乳児湿疹、脂漏性皮膚炎など)との区別が難しいため、多くの場合は数ヶ月の経過を見てから確定診断されます。生後6ヶ月頃になると、症状のパターンや経過が明確になり、診断がしやすくなるとされています。

乳児湿疹との見分け方では、乳児湿疹は生後1〜2ヶ月頃に現れ、通常は生後6ヶ月頃までに自然に改善します。一方、アトピー性皮膚炎は生後2〜3ヶ月以降に現れ、慢性的に持続または反復します。乳児湿疹は皮脂の分泌が多い部位(顔面、頭部)に黄色いかさぶたを伴うことが多く、脂漏性の特徴があります。アトピー性皮膚炎は乾燥した皮膚とかゆみを伴う湿疹が特徴です。ただし、初期段階では両者の区別が困難な場合が多く、経過を観察しながら診断することが一般的です。数ヶ月経過しても症状が持続・悪化する場合、アトピー性皮膚炎の可能性が高くなるとされています。

受診のタイミングについて、以下のような場合には早めの受診が推奨されます。生後2〜3ヶ月以降に湿疹が現れ2ヶ月以上持続している、保湿などのスキンケアを行っても改善しない、症状が広範囲に広がっている、かゆみのために機嫌が悪い、睡眠が妨げられている、家族にアレルギー疾患の病歴が多いなどです。早期に受診することで、適切なスキンケア指導や必要に応じた治療を開始でき、症状の悪化を防ぐことができます。「様子を見よう」と放置すると症状が慢性化・重症化する可能性があるため、気になる症状がある場合には早めの相談が重要とされています。

早期診断の重要性では、アトピー性皮膚炎は早期に診断し適切な治療とスキンケアを開始することで、症状の改善だけでなく、将来的なアレルギーマーチの予防にもつながる可能性が示唆されています。乳児期のアトピー性皮膚炎を適切に管理することで、食物アレルギー、喘息、アレルギー性鼻炎などの発症リスクを低減できる可能性があります。また、早期からの皮膚バリア機能の保護により、アレルゲンの経皮感作を防ぐことができるとされています。診断が遅れると、慢性的な炎症や掻き壊しにより皮膚の状態が悪化し、治療により長い期間を要する可能性があります。

このように、診断は生後2〜3ヶ月以降に可能ですが、乳児湿疹との鑑別には経過観察が必要で、確定診断のタイミングは個々により異なります。

続いて、治療やケアをいつから始めるべきかについて見ていきましょう。

アトピーの治療やケアはいつから始めるべきか

アトピー性皮膚炎の治療やケアは、診断が確定する前の段階から予防的なスキンケアを開始し、症状が現れた時点で適切な治療を速やかに開始することが重要であり、早期介入により症状の改善と将来的なアレルギー疾患の予防効果が期待できるとされています。

乳児期からのスキンケアについて、アトピー性皮膚炎の診断がまだ確定していない段階でも、生後すぐから保湿を中心としたスキンケアを行うことが推奨されます。特に家族にアレルギー疾患の病歴がある場合、乳児期早期からの保湿ケアがアトピー性皮膚炎の発症予防に効果的という研究結果があります。新生児期から低刺激性の保湿剤を全身に塗布し、皮膚のバリア機能を保つことが大切です。入浴後は5分以内に保湿剤を塗布することで、水分の蒸発を防ぎ効果的な保湿ができます。過度な洗浄は避け、石鹸やボディソープは必要最小限の使用に留めることが推奨されます。

予防的ケアの開始時期では、アトピー性皮膚炎のハイリスク群(両親または兄弟がアレルギー疾患を持つ)では、生後1週間以内から予防的な保湿ケアを開始することで、発症リスクを約30〜50%低減できる可能性があるという報告があります。ただし、すべての乳児に予防効果があるわけではなく、個人差があることも知られています。予防的ケアとして、毎日の保湿、刺激の少ない衣類の選択、適切な室温・湿度の維持、アレルゲンへの過度な曝露の回避などが基本となります。過度な清潔志向は逆効果になる場合もあるため、バランスが重要とされています。

治療開始の適切なタイミングについて、湿疹や炎症などの明らかな症状が現れた時点で、速やかに治療を開始することが重要です。「もう少し様子を見よう」と放置すると、症状が悪化し治療により長い期間を要することになります。乳児期では症状が現れてから2週間以上持続する場合、または症状が広範囲に及ぶ場合には、受診し治療を開始することが推奨されます。治療は症状の程度に応じて、保湿剤のみ、ステロイド外用薬、タクロリムス軟膏などが使用されます。軽症のうちに適切に治療することで、短期間で症状をコントロールできることが多いとされています。

早期介入の効果では、アトピー性皮膚炎の早期治療により、いくつかの重要な効果が期待できます。症状の早期改善と慢性化の予防、皮膚バリア機能の早期回復、掻き壊しによる皮膚損傷の予防、二次感染のリスク低減、アレルゲンの経皮感作の予防(食物アレルギーなどの予防)、将来的なアレルギーマーチの抑制などです。特に乳幼児期の適切な治療は、その後の人生における生活の質に大きく影響する可能性があるため、早期介入の重要性が強調されています。

このように、予防的スキンケアは生後早期から、治療は症状出現時から速やかに開始することで早期改善と予防効果が期待できます。

最後に、医療機関を受診すべきタイミングについて説明いたします。

アトピーの症状で医療機関を受診すべきタイミング

医療機関での相談が必要なアトピー性皮膚炎の症状かどうかは、症状の出現時期、持続期間、重症度、生活への影響を多角的に検討して判断することが大切とされています。

早急な受診を検討すべき症状として、乳児で広範囲の湿疹や強い炎症がある場合、発熱を伴う皮膚症状、黄色いかさぶたや膿を伴う皮膚病変(二次感染の疑い)、かゆみのために著しく機嫌が悪い、睡眠が全くとれないなどがあります。また、生後2〜3ヶ月頃から湿疹が現れ2ヶ月以上持続している、保湿などのスキンケアを行っても改善しない、症状が急速に悪化しているなどの場合には、速やかな受診が推奨されます。乳幼児では症状の進行が早く、二次感染のリスクも高いため、早めの対応が重要とされています。

継続的な観察が必要なケースでは、乳児湿疹とアトピー性皮膚炎の区別がつかず経過観察中の場合や、軽度の症状が続いているが診断が確定していない場合があります。家族にアレルギー疾患の病歴が多く予防的なケアについて相談したい、適切なスキンケア方法について指導を受けたい、食物アレルギーとの関連が疑われる、他のアレルギー症状(喘鳴、鼻炎など)も併発しているなどの場合には、専門的な評価と指導が有効です。定期的な経過観察により、症状の変化を早期に捉え、適切な対応が可能になります。

特に注意が必要な方として、生後6ヶ月未満の乳児では皮膚が非常に敏感で症状が急速に変化する可能性があるため、軽度の症状でも早めの相談が推奨されます。家族にアトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性鼻炎、食物アレルギーなどの病歴がある場合(ハイリスク群)では、予防的な観点からも早期の相談が有効です。早産児や低出生体重児では皮膚バリア機能がより未熟なため、特に注意深いケアと観察が必要です。また、初めての子育てで適切なスキンケア方法が分からない場合にも、専門家からの指導を受けることが推奨されます。

このような症状の出現時期、持続期間、重症度、生活への影響の多角的検討に基づく適切な対応については、ご相談ください。早期の適切な対応により、症状のコントロール、慢性化の予防、アレルギーマーチの抑制が期待できる場合があります。


※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療に代わるものではありません。症状や治療に関するご相談は、医療機関にご相談ください。

監修医師

理事長・院長
今村 英利
Imamura Eli

略歴

2014年10月神戸大学博士課程入学
2019年3月博士課程卒業医師免許取得
2019年4月赤穂市民病院
2021年4月亀田総合病院
2022年1月新宿アイランド内科クリニック院長
2023年2月いずみホームケアクリニック