「アトピーがあるけど医療脱毛を受けられるの?」「施術を受けて症状が悪化しないか心配」といった不安をお持ちの方は少なくありません。
アトピー性皮膚炎を持つ方が医療脱毛を検討する際には、リスクと注意点を十分に理解することが大切です。
皮膚に炎症や症状がある状態での施術については、慎重な判断が必要とされています。
肌の状態や症状の程度によって施術の可否が異なるため、個別の評価が重要です。施術の適否や安全性については、専門的な医学的判断が不可欠とされています。
アトピーがある場合の医療脱毛の可否と判断基準
アトピー性皮膚炎がある場合、症状が安定し施術部位に炎症がなければ医療脱毛が可能な場合もありますが、医師の診断に基づく慎重な判断が必要です。
医療脱毛の基本的なメカニズムについて、医療脱毛はレーザーや光を照射し、毛根のメラニン色素に反応させて毛母細胞を破壊する治療法です。施術時には皮膚に熱エネルギーが加わるため、一時的に皮膚への刺激や軽度の炎症反応が生じます。通常の健康な皮膚であれば数日で回復しますが、アトピー性皮膚炎のようにバリア機能が低下した皮膚では、この刺激が症状悪化の引き金となる可能性があります。レーザーの種類や出力、冷却方法などによっても皮膚への影響は異なるとされています。
アトピー性皮膚炎と脱毛の関係では、アトピー性皮膚炎そのものが医療脱毛の絶対的な禁忌というわけではありません。しかし、皮膚のバリア機能が低下している、炎症や湿疹がある、掻き壊しによる傷がある、乾燥が著しいなどの状態では、レーザーや光による刺激で症状が悪化するリスクが高まります。また、アトピー性皮膚炎の治療で使用しているステロイド外用薬やタクロリムス軟膏などの免疫抑制薬は、皮膚の状態を変化させ、施術への反応に影響を与える可能性があるとされています。
施術可能な状態と不可能な状態について、一般的に医療脱毛が可能とされる状態は、施術部位に炎症や湿疹がなく皮膚が安定している、赤みやかゆみなどの症状が最小限である、掻き壊しによる傷や色素沈着が施術部位にない、少なくとも2〜3ヶ月以上症状が安定しているなどです。一方、施術が困難または不可能とされる状態は、施術部位に活動性の炎症や湿疹がある、掻き壊しによる傷や出血がある、ステロイド外用薬を施術部位に連日使用している、最近症状が悪化した、二次感染を起こしているなどの場合です。
医師の診断が必要な理由では、アトピー性皮膚炎の状態は個人差が大きく、同じ人でも時期によって変動します。そのため、医療脱毛を受ける前には、皮膚科医による診察を受け、現在の皮膚の状態、使用している薬剤、症状の安定性などを総合的に評価してもらうことが重要です。また、脱毛を実施する医療機関の医師にもアトピー性皮膚炎があることを必ず伝え、施術の適否について相談する必要があります。施術部位によっても判断が異なるため、個別の評価が不可欠とされています。
このように、症状が安定していれば施術可能な場合もありますが、個別の医学的評価が必須です。
続いて、医療脱毛を受ける際の具体的なリスクについて見ていきましょう。
アトピー患者が医療脱毛を受ける際のリスク
アトピー性皮膚炎を持つ方が医療脱毛を受ける場合、症状悪化、炎症反応の増強、色素沈着、感染リスクなど複数のリスクが存在します。
皮膚への刺激と炎症リスクについて、レーザーや光による熱刺激は、健康な皮膚でも一時的な赤みや軽度の炎症を引き起こします。アトピー性皮膚炎の方では、バリア機能が低下しているため、この刺激に対する反応が過剰になる可能性があります。施術後に赤みやかゆみが通常より強く現れる、腫れが生じる、ヒリヒリとした痛みが長く続くなどの症状が出やすいとされています。また、施術時の冷却ジェルや麻酔クリームなどの使用により、接触性皮膚炎を起こすリスクも考慮する必要があります。
症状悪化の可能性では、施術による刺激がきっかけとなり、一時的に安定していたアトピー性皮膚炎の症状が悪化する可能性があります。施術部位だけでなく、全身的に症状が悪化するケースも報告されています。特に、ケブネル現象(物理的刺激を受けた部位に皮膚症状が出現する現象)により、レーザーを照射した部位に沿って湿疹が現れることがあります。一度悪化すると、元の状態に戻るまでに時間を要する場合もあるとされています。
施術後のトラブルについて、医療脱毛後には通常、一時的な赤みや毛嚢炎などが生じることがありますが、アトピー性皮膚炎の方ではこれらのトラブルが長引いたり重症化したりするリスクがあります。また、施術後の乾燥が強くなり、かゆみが増強することがあります。色素沈着や色素脱失などの色調変化も、健康な皮膚と比較して生じやすい可能性があります。掻き壊しにより傷ができると、瘢痕が残るリスクも高まるとされています。
二次感染のリスクでは、アトピー性皮膚炎の方は皮膚のバリア機能が低下しているため、細菌やウイルスに対する抵抗力が弱くなっています。医療脱毛後の皮膚は一時的にさらにバリア機能が低下するため、黄色ブドウ球菌などによる細菌感染、ヘルペスウイルスによる感染症などのリスクが高まります。特に施術後に掻いてしまうと、そこから感染を起こす可能性があります。二次感染を起こすと、治療が必要になるだけでなく、瘢痕が残る可能性もあるため注意が必要とされています。
このように、症状悪化や炎症反応、感染など複数のリスクが存在します。
次に、これらのリスクを踏まえた注意点について説明いたします。
アトピーで医療脱毛を検討する際の注意点
医療脱毛を検討する際は、症状が安定した時期の選択、事前の医師への相談、適切なスキンケアの実施が重要です。
症状が安定している時期の選択について、医療脱毛を受けるのであれば、症状が最も安定している時期を選ぶことが重要です。少なくとも2〜3ヶ月以上症状が落ち着いており、施術部位に炎症や湿疹がない状態であることが望ましいとされています。季節による変動がある方は、比較的症状が安定しやすい季節を選ぶことも考慮すべきです。体調不良時、ストレスが多い時期、季節の変わり目など、症状が悪化しやすいタイミングは避けることが推奨されます。
事前の医師への相談では、医療脱毛を受ける前に、必ずかかりつけの皮膚科医に相談し、現在の皮膚の状態で施術を受けても問題ないか確認することが重要です。また、脱毛を実施する医療機関には、アトピー性皮膚炎があること、現在使用している薬剤、過去の症状の経過などを詳しく伝える必要があります。施術前にテスト照射を受け、皮膚の反応を確認することも安全性を高める方法の一つです。万が一症状が悪化した場合の対応についても事前に確認しておくことが推奨されます。
施術前後のスキンケアについて、施術前には十分な保湿を行い、皮膚のバリア機能を可能な限り良好な状態に保つことが大切です。施術当日は、施術部位への外用薬の使用について医師の指示に従います。施術後は、冷却や保湿を徹底し、皮膚への刺激を最小限にすることが重要です。施術後数日間は入浴時の温度を低めに設定し、施術部位を強くこすらないようにします。かゆみが強くなった場合でも掻かないように注意し、必要に応じて冷却や保湿で対応します。症状が悪化した場合は速やかに医療機関を受診することが推奨されます。
使用薬剤との関係では、ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏などの免疫抑制薬を使用している場合、施術前後の使用について医師に相談する必要があります。一般的に、施術部位への外用薬の使用は、施術前後数日間は控えるか調整することが多いとされています。また、光線過敏症を引き起こす可能性のある内服薬を使用している場合には、脱毛レーザーの照射により皮膚トラブルのリスクが高まる可能性があるため、必ず医師に申告することが重要です。
このように、安定期の選択、事前相談、適切なケアが医療脱毛を受ける際の重要なポイントです。
続いて、医療脱毛以外の選択肢についても見ていきましょう。
アトピー患者における脱毛の代替案と自己処理の注意
アトピー性皮膚炎がある場合、医療脱毛以外の除毛方法にもそれぞれリスクがあり、最も安全な方法の選択と適切な実施が重要です。
カミソリや毛抜きのリスクについて、カミソリでの除毛は皮膚表面を削り取るため、バリア機能をさらに低下させ、症状を悪化させるリスクが高い方法です。特に乾燥した皮膚や炎症がある部位への使用は避けるべきです。毛抜きでの除毛は、毛穴に強い刺激を与え、毛嚢炎や埋没毛の原因となります。また、抜いた部位を掻いてしまうと、さらに症状が悪化する可能性があります。これらの方法は、アトピー性皮膚炎の方には推奨されないとされています。
電気シェーバーの使用では、比較的皮膚への負担が少ない除毛方法として、電気シェーバーの使用が考えられます。刃が直接皮膚に触れないタイプのものを選び、清潔に保つことが重要です。使用前後には必ず保湿を行い、皮膚への刺激を最小限にします。ただし、炎症や湿疹がある部位への使用は避け、症状が安定している時期のみに使用することが推奨されます。使用後に赤みやかゆみが増す場合は、使用を中止する必要があります。
脱毛クリームの注意点について、脱毛クリームは化学薬品でタンパク質を溶かすことで除毛する方法ですが、アトピー性皮膚炎の方には刺激が強すぎるため、基本的に使用は推奨されません。バリア機能が低下した皮膚では、化学薬品による刺激で炎症やかぶれが生じやすく、症状の悪化につながる可能性が高いとされています。どうしても使用する場合は、必ずパッチテストを行い、症状が安定している部位のみに限定し、使用後は十分に洗い流して保湿することが重要です。
医療脱毛以外の選択肢では、アトピー性皮膚炎の症状が重い場合や不安定な場合には、無理に脱毛や除毛を行わず、ムダ毛をそのままにしておくことも一つの選択肢です。また、症状が安定するまで待つ、治療を優先し症状のコントロールを図ってから脱毛を検討するという段階的なアプローチも有効です。どうしても気になる場合は、衣類や小物で目立たなくするなどの工夫も考えられます。美容面よりも皮膚の健康を優先することが、長期的には最善の選択となる場合が多いとされています。
このように、各除毛方法にリスクがあり、皮膚の状態を優先した選択が重要です。
最後に、相談すべきタイミングについて説明いたします。
医療脱毛やアトピーの症状で相談すべきタイミング
医療機関への相談が必要かどうかは、施術後の症状変化、アトピー症状の悪化、感染の兆候などを総合的に判断することが大切です。
早急な相談を検討すべき症状として、医療脱毛後に広範囲の強い炎症や腫れが生じた場合、発熱を伴う皮膚症状、黄色いかさぶたや膿を伴う皮膚病変(感染の疑い)、水疱が多発した場合(ヘルペス感染の疑い)があります。また、施術後に全身的にアトピー症状が悪化した、強いかゆみで睡眠が全くとれない、掻き壊しによる出血が止まらないなどの場合には、速やかな対応が必要とされています。脱毛施術を受けた医療機関とかかりつけの皮膚科の両方に相談することが推奨されます。
継続的な観察が必要なケースでは、医療脱毛を検討しているがアトピー性皮膚炎の状態で受けられるか不安がある場合や、施術後に軽度の症状悪化が続いている場合があります。除毛方法について適切なアドバイスが欲しい、脱毛と並行してアトピー治療を最適化したい、過去に脱毛でトラブルがあり再度検討している場合などには、事前の十分な相談が有効です。施術を受ける前に、現在の皮膚の状態を評価してもらい、適切なタイミングや方法についてアドバイスを受けることが推奨されます。
特に注意が必要な方として、ステロイド外用薬や免疫抑制薬を長期間使用している方では、皮膚の状態が変化しているため、施術前後の管理について特に注意深い相談が必要です。過去にケブネル現象(刺激部位に症状が出現)を経験したことがある方では、脱毛によって同様の反応が起こるリスクが高いため慎重な判断が求められます。複数のアレルギー疾患を持つ方、二次感染を繰り返している方では、総合的なリスク評価が重要です。また、美容目的での施術に対する期待が高い場合には、リスクと効果のバランスについて十分に理解した上で判断することが大切とされています。
このような症状変化や感染の兆候の総合的評価に基づく適切な対応については、ご相談ください。早期の適切な対応により、トラブルの最小化、症状のコントロール、安全な美容医療の選択が期待できる場合があります。
※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療に代わるものではありません。症状や治療に関するご相談は、医療機関にご相談ください。
監修医師

略歴
2014年10月 | 神戸大学博士課程入学 |
2019年3月 | 博士課程卒業医師免許取得 |
2019年4月 | 赤穂市民病院 |
2021年4月 | 亀田総合病院 |
2022年1月 | 新宿アイランド内科クリニック院長 |
2023年2月 | いずみホームケアクリニック |