アトピーは後天的に発症する?大人になってからの症状への対処法について

アトピー

大人になってから突然アトピー性皮膚炎のような症状が現れ、戸惑いを感じている方もいらっしゃるかもしれません。

一般的に乳幼児期に発症する疾患として知られていますが、実際には大人になってから後天的に発症するケースも存在するとされています。

大人になってからの発症には、環境要因や生活習慣の変化、免疫システムの変化など複数の要因が関与している可能性があると考えられています。

成人期に発症したアトピー性皮膚炎は小児期のものとは異なる特徴を持つ場合もあり、適切な対応のためには後天的発症のメカニズムや特徴を理解することが重要とされています。

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アトピー性皮膚炎は後天的に発症するの?

アトピー性皮膚炎は後天的に発症する可能性があり、大人になってから初めて症状が現れるケースは決して珍しくないとされています。

従来、アトピー性皮膚炎は主に乳幼児期に発症し、成長と共に改善していく疾患と考えられてきました。しかし近年の研究により、20歳以降に初めて発症する成人型アトピー性皮膚炎の存在が明らかになっています。実際に、成人のアトピー性皮膚炎患者のうち、約20〜30%程度が成人期に入ってから初めて発症したケースであるという報告もあります。

後天的に発症するアトピーと先天的なアトピーの違いについて、遺伝的要因の関与の程度が異なる場合があるとされています。小児期に発症するアトピー性皮膚炎では、家族歴や他のアレルギー疾患との関連が強く見られる傾向があります。一方、成人期に初めて発症するケースでは、環境要因や生活習慣の変化が主な引き金となる可能性が高いと考えられています。ただし、遺伝的素因を持っていても、それまで症状として現れていなかったものが、何らかのきっかけで顕在化する場合もあるとされています。

成人発症のアトピー性皮膚炎の背景には、現代社会特有の環境変化も関与している可能性があります。大気汚染物質の増加、住環境の変化、ストレスの増大、食生活の変化などが複合的に作用し、それまで問題なかった方でも皮膚のバリア機能が低下することがあるとされています。また、職業上の接触物質や化学物質への暴露が長期間続くことで、徐々に皮膚の状態が変化し、アトピー性皮膚炎様の症状が出現する場合もあります。

このように、大人になってから初めてアトピー性皮膚炎を発症することは十分に起こり得る現象であり、決して特殊なケースではないと考えられています。

続いて、後天的にアトピーが発症する具体的な原因とメカニズムについて詳しく見ていきましょう。

後天的にアトピーが発症する主な原因とメカニズム

後天的なアトピー性皮膚炎の発症には、皮膚バリア機能の低下、環境要因の変化、免疫システムの変化など複数の要因が相互に関連して作用していると考えられています。

皮膚バリア機能の低下

皮膚のバリア機能は、外部からの刺激物質やアレルゲンの侵入を防ぎ、体内の水分を保持する重要な役割を担っています。加齢や生活習慣の変化により、このバリア機能が低下すると、皮膚が乾燥しやすくなり、外部刺激に対して敏感になる傾向があります。特に、セラミドやフィラグリンといった皮膚の保湿成分が減少することで、皮膚表面の角層構造が乱れ、炎症を起こしやすい状態になるとされています。

過度な洗浄や不適切なスキンケア、エアコンによる空気の乾燥なども、バリア機能の低下を招く要因となる可能性があります。また、ストレスによる自律神経の乱れが皮膚の代謝に影響を与え、バリア機能を弱める場合もあるとされています。

環境要因の影響

住環境の変化は、後天的なアトピー発症の重要な要因の一つとして考えられています。転居により気候や湿度が大きく変わった場合、それまで問題なかった方でも皮膚トラブルが生じることがあります。また、新築やリフォームによる住居環境の変化で、建材から放出される化学物質や、新しい家具からの揮発性有機化合物(VOC)への暴露が増加し、皮膚の炎症反応を引き起こす可能性があるとされています。

大気汚染物質、特にPM2.5や排気ガスに含まれる微粒子が皮膚に付着することで、炎症反応が促進されることも指摘されています。都市部での生活や、交通量の多い地域に住むことが、アトピー性皮膚炎のリスクを高める可能性があるという研究報告もあります。

職業性の要因も見逃せません。医療従事者の頻繁な手洗いや消毒、美容師の薬剤使用、調理師の水仕事など、職業上の皮膚への負担が長期間蓄積することで、後天的にアトピー性皮膚炎を発症するケースもあるとされています。

免疫システムとストレスの影響

成人期における免疫システムの変化も、後天的なアトピー発症に関与する可能性があります。慢性的なストレス状態では、コルチゾールなどのストレスホルモンの分泌が変動し、免疫バランスが崩れることがあります。特に、Th1/Th2バランスと呼ばれる免疫応答のバランスが変化し、アレルギー反応を起こしやすい状態になることが知られています。

睡眠不足や過労、精神的ストレスが続くことで、体内の炎症性サイトカインの産生が増加し、皮膚の炎症反応が持続しやすくなる可能性があるとされています。また、腸内環境の変化も免疫システムに影響を与え、間接的にアトピー性皮膚炎の発症に関わる場合があるという報告もあります。

ホルモンバランスの変化も重要な要因です。妊娠・出産、更年期などのライフイベントにより、ホルモンバランスが大きく変動することで、皮膚の状態が変化し、アトピー性皮膚炎が顕在化するケースもあるとされています。

このように、後天的なアトピー性皮膚炎の背景には、バリア機能の低下、環境の変化、免疫バランスの乱れといった複数の要因が絡み合っていると考えられています。

次に、後天的に発症したアトピー性皮膚炎の具体的な特徴について説明いたします。

大人になってから発症したアトピーの特徴と症状の現れ方

成人期に後天的に発症したアトピー性皮膚炎は、小児期発症のものとは異なる特徴を持つことが多く、症状の出現部位や経過にも違いが見られるとされています。

小児期のアトピー性皮膚炎との主な違いとして、症状の出現部位が異なる傾向があります。小児では顔面や頭部、手足の関節部分に症状が現れやすいのに対し、成人発症のケースでは、顔面(特に目の周りや口の周り)、首、上半身、手指などに症状が集中しやすいとされています。また、成人では皮膚の乾燥がより顕著で、全体的にくすんだ色調を呈することが多い傾向があります。

症状が出やすい部位と特徴

成人の後天性アトピー性皮膚炎では、顔面、特に上まぶたや目の周囲に赤みや乾燥が生じることが特徴的です。この部位の皮膚は薄くデリケートであるため、症状が現れやすく、かゆみも強く感じられる傾向があります。また、首の前面や側面にも症状が出やすく、衣服との摩擦や汗の影響を受けやすい部位であることが関係していると考えられています。

手指や手の甲に症状が現れるケースも多く、特に職業性の要因が関与している場合には、この部位から症状が始まることがあります。洗剤や化学物質、頻繁な手洗いなどの影響を受けやすいためとされています。

上半身、特に背中や胸部に症状が広がるケースでは、衣類の素材や洗剤への反応が関与している可能性があります。また、下肢よりも上半身に症状が集中する傾向があることも、成人型の特徴の一つとされています。

症状の経過パターン

後天的に発症したアトピー性皮膚炎は、症状の経過にも特徴があります。初期には軽度の乾燥やかゆみとして始まり、徐々に症状が強くなっていくケースが多いとされています。季節の変わり目や環境の変化時に症状が悪化しやすく、特に秋から冬にかけての乾燥する時期に症状が顕著になる傾向があります。

慢性化すると、皮膚の肥厚(厚くなること)や色素沈着が生じる場合があります。かゆみによる掻破行動が繰り返されることで、皮膚のバリア機能がさらに低下し、症状の悪化と改善を繰り返す悪循環に陥る可能性があるとされています。

ストレスや睡眠不足、疲労などの影響を受けやすく、心身の状態により症状の程度が変動することも成人型の特徴です。仕事の繁忙期や重要なイベントの前後に症状が悪化しやすいという方も少なくありません。

このように、成人期に後天的に発症したアトピー性皮膚炎は、小児期のものとは症状の出現部位や経過において異なる特徴を示すことが多いとされています。

続いて、後天性アトピーと間違いやすい他の皮膚疾患について見ていきましょう。

後天性アトピーと間違いやすい他の皮膚疾患

成人期に発症する皮膚の炎症性疾患は複数あり、後天的なアトピー性皮膚炎と症状が似ているため、正確な診断が重要とされています。

接触性皮膚炎との違い

接触性皮膚炎は、特定の物質に接触することで生じる皮膚の炎症反応です。アトピー性皮膚炎と異なり、原因物質との接触部位に限局して症状が現れることが特徴です。金属アレルギー、化粧品、香料、ゴム製品、植物など、原因となる物質は多岐にわたります。

接触性皮膚炎では、原因物質を避けることで症状が改善する傾向があり、パッチテストにより原因物質を特定できる場合があります。一方、アトピー性皮膚炎は特定の接触物質に限定されず、より広範囲に症状が現れることが多いとされています。ただし、アトピー性皮膚炎のある方は皮膚のバリア機能が低下しているため、接触性皮膚炎を併発しやすい傾向があります。

その他の類似疾患

脂漏性皮膚炎は、顔面や頭皮、胸部など皮脂分泌の多い部位に生じる炎症性疾患です。赤みや鱗屑(皮膚のはがれ)を伴い、アトピー性皮膚炎と混同されることがあります。しかし、脂漏性皮膚炎は皮脂の多い部位に限定され、かゆみはアトピー性皮膚炎ほど強くないことが多いとされています。また、マラセチアという真菌の関与が指摘されており、抗真菌薬が有効な場合があります。

汗疱(かんぽう)は、手のひらや足の裏に小さな水疱が多発する疾患です。強いかゆみを伴い、手指に症状が出る点でアトピー性皮膚炎と似ていますが、水疱の存在が特徴的です。季節性があり、春から夏にかけて悪化する傾向があるとされています。

貨幣状湿疹は、円形から楕円形の境界明瞭な湿疹病変が特徴的で、特に下腿に好発します。かゆみが強く、掻破により悪化しやすい点はアトピー性皮膚炎と共通していますが、病変の形状や分布に特徴があります。

皮膚リンパ腫などの悪性疾患も、初期には湿疹様の症状を呈することがあり、注意が必要です。治療に反応しにくい皮膚症状や、徐々に拡大する病変がある場合には、専門的な評価が推奨されます。

以上のように、成人期に発症する皮膚疾患は多様であり、後天的なアトピー性皮膚炎と類似した症状を示すものが複数あるため、鑑別診断が重要とされています。

次に、後天的に発症したアトピー性皮膚炎への具体的な対処法について説明いたします。

後天的に発症したアトピーへの対処法と日常生活での工夫

成人期に後天的に発症したアトピー性皮膚炎への対処には、適切なスキンケア、生活環境の調整、必要に応じた治療の三つの柱が重要とされています。

スキンケアの基本

後天性アトピー性皮膚炎のスキンケアで最も重要なのは、保湿によるバリア機能の維持です。入浴後5分以内に保湿剤を塗布することで、皮膚の水分を閉じ込め、乾燥を防ぐことができます。保湿剤は、セラミドやヘパリン類似物質を含むものが推奨される場合が多く、1日に複数回、特に乾燥を感じたときにこまめに塗布することが効果的とされています。

入浴時の注意点として、熱すぎるお湯は皮膚の脂質を奪い、バリア機能を低下させる可能性があるため、ぬるめの温度(38〜40度程度)が適切とされています。また、ナイロンタオルなどでの強い摩擦は避け、手のひらや柔らかいタオルで優しく洗うことが推奨されます。石鹸やボディソープは、低刺激性で保湿成分を含むものを選び、使用量は最小限にすることが大切です。

洗顔では、朝は水かぬるま湯のみで洗い、夜のみ洗顔料を使用するなど、過度な洗浄を避ける工夫も有効とされています。化粧品は、アルコールや香料などの刺激物質を含まない、敏感肌用のものを選ぶことが推奨されます。

環境整備と生活習慣の改善

室内環境の調整は、症状の悪化を防ぐために重要です。適度な湿度(50〜60%程度)を保つことで、皮膚の乾燥を防ぐことができます。加湿器の使用や、洗濯物の室内干しなども効果的な場合があります。ただし、過度な湿度はダニやカビの増殖を招く可能性があるため、適切なバランスを保つことが大切です。

ダニやハウスダストへの対策として、寝具をこまめに洗濯し、天日干しや布団乾燥機を使用することが推奨されます。防ダニカバーの使用も有効な場合があります。また、室内の掃除をこまめに行い、カーペットなどほこりが溜まりやすいものは避けるか、頻繁に掃除することが重要です。

衣類の選択も症状に影響します。直接肌に触れる衣類は、綿など肌に優しい素材を選び、チクチクする素材や化学繊維は避けることが推奨されます。新しい衣類は、洗濯してから着用することで、繊維に残った化学物質を除去できる場合があります。洗濯洗剤は、無香料・無着色の低刺激性のものを選び、柔軟剤の使用は控えめにするか避けることが望ましいとされています。

ストレス管理も重要な要素です。十分な睡眠、適度な運動、リラクゼーション法の実践などにより、心身のバランスを保つことが症状の安定につながる可能性があります。ヨガや瞑想、深呼吸などのリラクゼーション技法が有効な場合もあるとされています。

食生活については、バランスの取れた食事を心がけることが基本です。特定の食品とアトピー性皮膚炎の関連は個人差が大きいため、自己判断での過度な食事制限は避け、必要に応じて専門家にご相談ください。ただし、アルコールや辛い食べ物は、血管を拡張させてかゆみを増強させる可能性があるため、症状が強い時期には控えめにすることが推奨される場合があります。

治療の選択肢

症状の程度に応じて、外用薬による治療が検討される場合があります。ステロイド外用薬は炎症を抑える効果がありますが、使用方法や強さの選択、使用期間などについては適切な指導のもとで行うことが重要です。症状が改善した後も、保湿剤による継続的なケアが再発予防に効果的とされています。

タクロリムス軟膏などの非ステロイド性の抗炎症外用薬も選択肢の一つです。特に顔面など皮膚の薄い部位に適している場合があります。

かゆみが強い場合には、抗ヒスタミン薬の内服が検討されることがあります。特に夜間のかゆみにより睡眠が妨げられる場合には、睡眠の質を改善することで症状の悪化を防ぐ効果も期待できます。

重症例では、免疫抑制薬や生物学的製剤などの全身療法が検討される場合もありますが、これらの治療法の選択については専門的な判断が必要です。

以上のように、成人期に後天的に発症したアトピー性皮膚炎の管理においては、スキンケアの実践、生活環境の整備、適切な治療という三つの要素が基本となります。

最後に、医療機関を受診すべきタイミングについて説明いたします。

大人のアトピーで医療機関を受診すべきタイミング

成人期に初めて出現した皮膚症状については、適切な診断と治療のため、早めに医療機関へ相談することが推奨されます。

早めの相談が推奨されるケース

初めて湿疹様の症状が現れた場合や、市販の保湿剤を使用しても改善が見られない場合には、自己判断での対処を続けるよりも、専門的な評価を受けることが重要とされています。特に以下のような状況では、早めの受診が推奨されます。

かゆみが強く、日常生活や睡眠に支障をきたしている場合には、適切な治療により症状の改善が期待できる可能性があります。掻破により皮膚に傷ができたり、浸出液が出たりしている場合には、二次感染のリスクもあるため、早めの対応が必要です。

症状が広範囲に及んでいる場合や、徐々に拡大している場合にも、早期の介入により症状の進行を抑えられる可能性があります。また、市販薬を2週間以上使用しても改善が見られない場合や、一時的に改善してもすぐに再発を繰り返す場合には、より適切な治療法の検討が必要とされています。

顔面、特に目の周りに症状が出ている場合には、視力への影響や、症状の悪化により色素沈着などの後遺症が残る可能性もあるため、早めの相談が推奨されます。

職業上の要因が疑われる場合、例えば特定の作業後に症状が悪化する、休日には症状が軽減するなどのパターンがある場合には、職業性皮膚炎の可能性も考慮した評価が必要です。

診断と治療のプロセス

医療機関では、詳細な問診により症状の経過、生活環境、職業、既往歴、家族歴などを確認します。皮膚の状態を視診し、必要に応じて血液検査やアレルギー検査、パッチテストなどを行う場合があります。これらの検査により、アトピー性皮膚炎の診断だけでなく、他の皮膚疾患との鑑別や、悪化因子の特定が可能になる場合があります。

診断が確定した後は、症状の程度や生活環境に応じた治療計画が立てられます。外用薬の種類や使用方法、スキンケアの具体的な指導、生活習慣の改善点などについて、個別に説明が行われます。

治療開始後も、定期的な経過観察により症状の変化を確認し、治療法の調整が行われます。症状が改善した後も、再発予防のための継続的なケアが重要とされています。

継続的な管理の重要性

成人の後天性アトピー性皮膚炎は、慢性的な経過をたどることがあり、長期的な管理が必要な場合があります。症状が改善しても、スキンケアを怠ったり、悪化因子に再び暴露されたりすることで、再発する可能性があるとされています。

定期的な受診により、症状の変化を確認し、季節や生活環境の変化に応じた予防的な対応が可能になります。また、新しい治療法の情報提供を受けられることも、継続的な管理のメリットです。

症状が安定している時期でも、3〜6ヶ月に一度程度の定期的な確認が推奨される場合があります。症状の悪化を感じた時には、悪化が進行する前に早めに相談することで、軽度の治療で対応できる可能性が高まります。

成人期に新たに出現した皮膚の症状については、適切な診断を受け、適切な治療を開始するために、早期の医療機関への相談が望ましいとされています。


※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療に代わるものではありません。症状や治療に関するご相談は、医療機関にご相談ください。

監修医師

理事長・院長
今村 英利
Imamura Eli

略歴

2014年10月神戸大学博士課程入学
2019年3月博士課程卒業医師免許取得
2019年4月赤穂市民病院
2021年4月亀田総合病院
2022年1月新宿アイランド内科クリニック院長
2023年2月いずみホームケアクリニック