アトピーは亜鉛不足と関係がある?皮膚の疾患への影響と適切な摂取

アトピー

「アトピーに亜鉛が良いと聞いたけど本当?」といった疑問をお持ちの方は少なくありません。

アトピーと亜鉛の関係については様々な研究が行われており、栄養状態が皮膚の健康に影響を与える可能性が指摘されています。

ミネラルの一種であるこの栄養素は、皮膚の修復や免疫機能に関わる重要な役割を果たすとされています。

不足すると様々な症状が現れることがあり、十分な摂取が推奨されています。

栄養状態と皮膚症状の関連については個人差が大きく、適切な評価と管理が必要です。

個々の栄養状態や摂取方法については、専門的な判断が重要とされています。

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アトピーと亜鉛の関係とは?亜鉛不足が与える影響

アトピー性皮膚炎と亜鉛の関係については、亜鉛が皮膚バリア機能の維持、免疫調節、創傷治癒に重要な役割を果たし、一部のアトピー患者では血中亜鉛濃度が低下している可能性が報告されていますが、因果関係については更なる研究が必要とされています。

亜鉛の役割と免疫機能について、亜鉛は体内で300種類以上の酵素の働きに関与する必須ミネラルです。特に免疫細胞の機能維持に重要で、T細胞やB細胞などの免疫細胞の分化や増殖に関与しています。亜鉛が不足すると免疫機能が低下し、感染症にかかりやすくなることが知られています。アトピー性皮膚炎では免疫バランスの乱れが症状に関与しているため、亜鉛の免疫調節作用が注目されているとされています。

皮膚バリア機能への影響では、亜鉛は皮膚細胞の新陳代謝や角質層の形成に必要な栄養素です。亜鉛が不足すると、皮膚のターンオーバーが乱れ、バリア機能が低下する可能性があります。また、亜鉛はコラーゲンの合成にも関与しており、皮膚の構造維持や創傷治癒に重要な役割を果たします。アトピー性皮膚炎では元々皮膚バリア機能が低下しているため、亜鉛不足がさらに症状を悪化させる可能性が考えられるとされています。

アトピー性皮膚炎患者における亜鉛濃度について、一部の研究では、アトピー性皮膚炎患者の血中亜鉛濃度が健康な人と比較して低い傾向があることが報告されています。特に重症例や慢性化している症例では、亜鉛不足が認められることがあります。ただし、すべてのアトピー患者で亜鉛不足があるわけではなく、亜鉛不足とアトピー症状の因果関係については明確に確立されていません。亜鉛不足が原因なのか、アトピー性皮膚炎による食事制限や代謝異常の結果なのかは、個別の評価が必要とされています。

亜鉛不足の症状では、皮膚症状(乾燥、湿疹、創傷治癒の遅延)、免疫機能低下(感染症にかかりやすい)、味覚障害、食欲不振、成長障害(小児)、脱毛などが現れることがあります。これらの症状の一部はアトピー性皮膚炎の症状と重なるため、亜鉛不足がある場合には症状の悪化要因となる可能性が考えられます。

このように、亜鉛は皮膚機能や免疫調節に重要であり、一部のアトピー患者で不足が見られる可能性がありますが、直接的な因果関係は確立されていません。

続いて、亜鉛不足が症状に与える具体的な影響について見ていきましょう。

亜鉛不足がアトピー症状に及ぼす影響

亜鉛不足は、皮膚の修復機能低下、炎症反応の増強、かゆみの悪化、感染リスクの上昇など複数の経路を通じてアトピー性皮膚炎の症状に悪影響を及ぼす可能性があるとされていますが、その程度は個人差が大きいとされています。

皮膚の修復機能の低下について、亜鉛は細胞分裂やタンパク質合成に必要な栄養素であり、皮膚の新陳代謝に重要な役割を果たします。亜鉛が不足すると、皮膚細胞のターンオーバーが遅くなり、掻き傷の治りが遅くなる可能性があります。アトピー性皮膚炎では頻繁に掻き壊しが生じるため、皮膚の修復機能が低下すると症状が慢性化しやすくなります。また、亜鉛不足により皮膚のバリア機能を担うタイトジャンクションの形成が障害され、外部刺激に対する防御力が低下する可能性もあるとされています。

炎症反応への影響では、亜鉛には抗炎症作用があることが知られており、サイトカインの産生を調節する働きがあります。亜鉛が不足すると、炎症性サイトカインの産生が増加し、抗炎症性サイトカインの産生が減少することで、炎症反応が増強される可能性があります。アトピー性皮膚炎は慢性的な炎症性疾患であるため、亜鉛不足により炎症のコントロールが困難になる可能性が考えられます。

かゆみとの関連性について、亜鉛不足が直接的にかゆみを引き起こすメカニズムは明確ではありませんが、皮膚の乾燥や炎症の増強を通じて間接的にかゆみを悪化させる可能性があります。また、亜鉛は神経伝達物質の合成にも関与しており、亜鉛不足が神経系の機能に影響を与え、かゆみの感受性を変化させる可能性も指摘されています。ただし、これらは理論的な可能性であり、臨床的な証拠は限定的です。

二次感染のリスクでは、亜鉛不足により免疫機能が低下すると、細菌やウイルスに対する抵抗力が弱まります。アトピー性皮膚炎では掻き壊しにより皮膚バリアが破綻しているため、黄色ブドウ球菌などの細菌感染(とびひ)やヘルペスウイルス感染(カポジ水痘様発疹症)などの二次感染を起こしやすい状態です。亜鉛不足がある場合、これらの感染リスクがさらに高まる可能性があるとされています。

このように、亜鉛不足は皮膚修復の遅延、炎症増強、感染リスク上昇など多様な経路でアトピー症状に影響する可能性があります。

次に、亜鉛の適切な摂取方法について説明いたします。

亜鉛の適切な摂取方法と注意点

亜鉛の補給は食事からの摂取を基本とし、推奨摂取量の範囲内で多様な食品から摂取することが重要であり、サプリメントの使用は医師や管理栄養士と相談の上、必要性と適切な用量を判断することが推奨されています。

推奨摂取量と年齢別の目安について、日本人の食事摂取基準(2020年版)では、成人男性で1日11mg、成人女性で1日8mgの亜鉛摂取が推奨されています。小児では年齢によって異なり、1〜2歳で3mg、3〜5歳で4mg、6〜7歳で5mg、8〜9歳で6mg、10〜11歳で7mg、12〜14歳で10mg(男性)・8mg(女性)とされています。妊娠中・授乳中の女性では、通常より多い量(10〜12mg)が推奨されます。ただし、これは健康な人の目安であり、アトピー性皮膚炎患者に特別に多量が必要というわけではありません。

亜鉛を多く含む食品では、牡蠣が最も亜鉛含有量が多い食品として知られています(100gあたり約13〜14mg)。その他、牛肉(赤身)、豚レバー、鶏レバー、卵、チーズ、納豆、木綿豆腐、アーモンド、カシューナッツ、ごま、のりなどにも亜鉛が含まれています。バランスの取れた食事を心がけることで、通常は必要量を摂取できるとされています。ただし、極端な食事制限や偏食がある場合には、亜鉛不足のリスクが高まる可能性があります。

サプリメント使用時の注意点では、食事から十分な亜鉛が摂取できていれば、サプリメントは必要ありません。サプリメントの使用を検討する場合には、まず医療機関で血中亜鉛濃度を測定し、実際に不足しているかを確認することが重要です。自己判断でのサプリメント使用は、過剰摂取のリスクがあります。また、亜鉛サプリメントは他のミネラル(銅や鉄)の吸収を妨げる可能性があるため、長期間の使用は慎重に判断する必要があります。

過剰摂取のリスクについて、亜鉛の耐容上限量は成人で1日40〜45mgとされており、これを超える摂取は健康障害のリスクがあります。過剰摂取の症状として、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛などの消化器症状、銅欠乏による貧血、免疫機能低下、HDLコレステロール低下などが報告されています。特に高用量のサプリメントを長期間使用した場合に、これらのリスクが高まるとされています。食事から過剰摂取になることは稀ですが、サプリメントの使用には注意が必要です。

このように、亜鉛は食事からの適切な摂取を基本とし、サプリメント使用は専門家との相談の上で慎重に判断することが重要です。

続いて、アトピー改善のための総合的な栄養管理について見ていきましょう。

アトピー改善のための栄養管理

アトピー性皮膚炎の症状管理には、亜鉛だけでなくビタミン類、必須脂肪酸、タンパク質など多様な栄養素のバランスが重要であり、食事療法だけで症状が改善するわけではなく、医学的治療とスキンケアを組み合わせた総合的なアプローチが必要とされています。

バランスの取れた食事の重要性について、アトピー性皮膚炎の管理において、特定の栄養素だけに注目するのではなく、全体としてバランスの取れた食事を摂ることが最も重要です。主食、主菜、副菜を組み合わせた多様な食品からの栄養摂取により、必要な栄養素を過不足なく摂取できます。極端な食事制限や特定の食品の排除は、栄養バランスを崩し、かえって症状を悪化させる可能性があるため注意が必要です。

亜鉛以外の重要な栄養素では、ビタミンA(皮膚の健康維持、粘膜の保護)、ビタミンC(コラーゲン合成、抗酸化作用)、ビタミンE(抗酸化作用、皮膚バリア機能の維持)、ビタミンD(免疫調節、炎症の抑制)、ビタミンB群(皮膚の代謝、エネルギー産生)、オメガ3脂肪酸(抗炎症作用)、タンパク質(皮膚組織の材料)などが重要です。これらの栄養素も皮膚の健康や免疫機能に関与しており、総合的に摂取することが推奨されます。

食事療法の限界と現実的な期待値について、栄養状態の改善はアトピー性皮膚炎の管理において補助的な役割を果たしますが、それだけで症状が劇的に改善することは期待できません。栄養療法の効果は緩やかで個人差が大きく、明確な効果を実感するまでに数週間から数ヶ月を要する場合があります。また、栄養状態が良好であっても、遺伝的素因や環境要因によって症状が持続することも多いとされています。栄養管理は、医学的治療やスキンケアを補完するものとして位置づけることが現実的です。

総合的なアプローチの必要性では、アトピー性皮膚炎の管理には、適切な外用薬の使用、保湿を中心としたスキンケア、悪化要因の回避、ストレス管理、規則正しい生活習慣、そして適切な栄養管理を組み合わせた総合的なアプローチが重要です。栄養管理だけに注目するのではなく、これらすべての要素をバランス良く実践することで、症状の安定化が期待できます。特定の栄養素やサプリメントに過度な期待を持つのではなく、基本的な治療とスキンケアを継続することが最も重要とされています。

このように、バランスの取れた栄養摂取と総合的な治療アプローチの組み合わせが、アトピー症状管理の基本となります。

最後に、医療機関を受診すべきタイミングについて説明いたします。

アトピーの症状で医療機関を受診すべきタイミング

医療機関での相談が必要なアトピー性皮膚炎の状態かどうかは、症状の重症度、栄養状態の評価の必要性、治療効果の不十分さ、生活への影響度を多角的に検討して判断することが大切とされています。

早急な受診を検討すべき症状として、広範囲の湿疹や強い炎症、発熱を伴う皮膚症状、二次感染の兆候(黄色いかさぶた、膿、急激な悪化)、全身状態の悪化(極度の倦怠感、食欲不振、体重減少)がある場合があります。また、亜鉛不足を疑う症状(味覚障害、創傷治癒の著しい遅延、脱毛、成長障害など)が複数現れている場合には、血液検査による栄養状態の評価が必要な可能性があります。アナフィラキシーなどの全身性のアレルギー症状を伴う場合には緊急性が高いとされています。

継続的な観察が必要なケースでは、適切な治療とスキンケアを継続しても症状が改善しない場合や、栄養バランスに不安がある場合(偏食、食事制限、食欲不振など)があります。サプリメントの使用を検討している場合には、自己判断ではなく医師や管理栄養士に相談することが推奨されます。また、複数のアレルギー症状を併発している、他の治療薬との相互作用が心配、食物アレルギーによる食事制限が必要などの場合には、専門的な栄養指導を受けることが効果的です。

特に注意が必要な方として、成長期の小児では栄養状態が成長発達に大きく影響するため、食事制限や偏食がある場合には早めに相談することが重要です。妊娠中・授乳中の方では、母体と胎児・乳児の両方の栄養を考慮する必要があるため、適切な栄養管理について専門的なアドバイスを受けることが推奨されます。高齢者では吸収能力が低下していることが多く、複数の疾患や薬剤の影響も考慮する必要があります。また、消化器疾患や代謝疾患を併発している方では、栄養素の吸収や代謝に問題がある可能性があるため、総合的な評価が必要とされています。

このような症状の重症度、栄養状態の評価の必要性、治療効果の不十分さ、生活への影響度の多角的検討に基づく適切な対応については、ご相談ください。早期の適切な対応により、症状のコントロール、栄養状態の改善、生活の質の向上が期待できる場合があります。


※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療に代わるものではありません。症状や治療に関するご相談は、医療機関にご相談ください。

監修医師

理事長・院長
今村 英利
Imamura Eli

略歴

2014年10月神戸大学博士課程入学
2019年3月博士課程卒業医師免許取得
2019年4月赤穂市民病院
2021年4月亀田総合病院
2022年1月新宿アイランド内科クリニック院長
2023年2月いずみホームケアクリニック