アトピーと円形脱毛症の関係は?合併する理由と対処法について

アトピー

アトピー性皮膚炎をお持ちの方で、円形脱毛症を発症したり、両者の関連について気になったりされる方がいらっしゃるかもしれません。

これらは一見異なる疾患に思えますが、両者には免疫システムの異常という共通点があり、関連性が指摘されているとされています。

実際に、アトピー性皮膚炎を持つ方は、そうでない方と比較して円形脱毛症を発症するリスクが高い可能性があるという報告もあります。

両疾患の関係を理解し、適切な対処法を知ることで、早期発見や症状の管理に役立てることができる可能性があります。

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アトピー性皮膚炎と円形脱毛症の関係は?

アトピー性皮膚炎と円形脱毛症には関連性があるとされ、両疾患とも免疫システムの異常が関与しており、アトピー性皮膚炎を持つ方は円形脱毛症を合併する頻度が高い傾向があると報告されています。

免疫システムの異常と両疾患の関係

アトピー性皮膚炎と円形脱毛症は、どちらも免疫システムの働きに異常が生じることで発症すると考えられています。免疫システムは本来、外部から侵入する病原体から身体を守る役割を持っていますが、何らかの原因によりその機能に乱れが生じると、自分自身の組織を攻撃してしまう場合があります。

アトピー性皮膚炎では、本来無害な物質に対して免疫システムが過剰に反応し、アレルギー反応を引き起こします。IgE抗体の産生が亢進し、皮膚に炎症が生じることで、かゆみや湿疹などの症状が現れるとされています。また、皮膚のバリア機能の低下も症状の発現に関与していると考えられています。

円形脱毛症では、自己免疫反応により毛包が攻撃されることが発症の主な原因と考えられています。本来であれば自分の組織を攻撃しないはずのリンパ球が、何らかの理由で毛包を異物として認識し、攻撃することで脱毛が起こるとされています。この自己免疫反応のメカニズムについては、まだ完全には解明されていませんが、遺伝的要因や環境要因が関与している可能性が示唆されています。

両疾患に共通するのは、免疫システムの調節機能に異常が生じているという点です。アトピー性皮膚炎ではアレルギー性の免疫反応が、円形脱毛症では自己免疫反応が主体となりますが、どちらも免疫の過剰な活性化や誤った方向への活性化が問題となっているとされています。

また、両疾患ともストレスや環境要因が症状の発現や悪化に影響を与える可能性があることも共通点の一つです。心理的なストレスは免疫システムのバランスを乱す要因となり得るため、症状の管理においてストレス管理が重要とされています。

アトピー性皮膚炎患者における円形脱毛症の発症率

複数の研究により、アトピー性皮膚炎を持つ方は、そうでない方と比較して円形脱毛症を発症する頻度が高いことが報告されています。具体的な数値は研究によって異なりますが、一般的にアトピー性皮膚炎患者における円形脱毛症の合併率は、一般人口における発症率よりも高い傾向があるとされています。

特に、重症のアトピー性皮膚炎を持つ方や、発症年齢が早い方では、円形脱毛症を合併するリスクがより高い可能性が指摘されています。また、アトピー性皮膚炎以外にも、気管支喘息やアレルギー性鼻炎などのアレルギー疾患を持つ方でも、円形脱毛症の発症リスクが高まる傾向があるという報告もあります。

逆に、円形脱毛症を発症した方の中にも、アトピー性皮膚炎やその他のアレルギー疾患を持つ方の割合が高いことが知られています。このことから、アレルギー素因や免疫系の特性が、両疾患の発症に共通して関与している可能性が考えられています。

ただし、アトピー性皮膚炎を持つ全ての方が円形脱毛症を発症するわけではなく、また円形脱毛症を発症した全ての方がアトピー性皮膚炎を持つわけでもありません。両疾患の関連性は統計的な傾向として認められているものの、個人差が大きいことも理解しておく必要があります。

アトピー性皮膚炎と円形脱毛症は免疫システムの異常という共通基盤を持ち、アトピー性皮膚炎を持つ方は円形脱毛症を合併する可能性が高い傾向があるものの、必ずしも全ての方が発症するわけではなく個人差があります。

両疾患の関連性を理解するために、次に円形脱毛症の特徴と発症のメカニズムについて詳しく見ていきましょう。

円形脱毛症の特徴と発症のメカニズムについて

円形脱毛症は、頭部に境界明瞭な円形または楕円形の脱毛斑が突然出現する疾患で、自己免疫反応により毛包が攻撃されることで発症すると考えられており、年齢や性別に関わらず発症する可能性があります。

円形脱毛症の主な症状と進行パターン

円形脱毛症の最も特徴的な症状は、境界がはっきりした円形または楕円形の脱毛斑です。脱毛部分の皮膚は通常滑らかで、炎症や痛みなどの症状を伴わないことが多いとされています。脱毛は突然始まることが多く、本人や周囲の人が気づいて初めて発見されることもあります。

脱毛斑の大きさは、数ミリ程度の小さなものから10センチを超える大きなものまで様々です。脱毛斑の縁では、「感嘆符毛」と呼ばれる根元が細くなった短い毛が見られることがあり、これは円形脱毛症に特徴的な所見とされています。

円形脱毛症にはいくつかのタイプがあります。単発型は最も一般的で、1か所から数か所の脱毛斑が見られるタイプです。多くの場合、数ヶ月から1年程度で自然に改善するとされています。

多発型は、複数の脱毛斑が同時または次々に出現するタイプです。単発型より治療に時間がかかる傾向があり、再発を繰り返す場合もあるとされています。

全頭型は、頭部全体の毛が抜けてしまうタイプで、治療が困難な場合が多いとされています。さらに進行すると、汎発型と呼ばれる、頭髪だけでなく眉毛、まつ毛、体毛なども抜けてしまう状態になることがあります。

症状の経過は個人差が大きく、自然に改善する場合もあれば、長期間持続したり再発を繰り返したりする場合もあります。一般的に、発症年齢が若い場合や、脱毛範囲が広い場合、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患を合併している場合には、治療が長期化したり難治性となったりする傾向があるとされています。

発症に関与する要因

円形脱毛症の発症には、複数の要因が関与していると考えられています。最も重要なのは自己免疫反応ですが、それを引き起こす背景には様々な要素があるとされています。

遺伝的要因は、円形脱毛症の発症リスクに影響を与える可能性があります。家族内で円形脱毛症を発症している方がいる場合、その家系では発症リスクが高まる傾向があるという報告があります。また、特定の免疫関連遺伝子との関連も指摘されています。

ストレスは、円形脱毛症の発症や悪化に関与する重要な要因の一つとされています。精神的なストレスや肉体的なストレスが、免疫システムのバランスを乱し、自己免疫反応を誘発する可能性があると考えられています。ただし、全ての円形脱毛症がストレスによって引き起こされるわけではなく、明確なストレス要因がない場合でも発症することがあります。

感染症やウイルス感染が、円形脱毛症の発症のきっかけとなる可能性も示唆されています。感染により免疫システムが活性化され、その過程で毛包への攻撃が始まる可能性が考えられています。

アレルギー疾患との関連も指摘されています。前述のように、アトピー性皮膚炎や気管支喘息などのアレルギー疾患を持つ方では、円形脱毛症の発症リスクが高い傾向があります。これは、アレルギー体質の方では免疫システムが過敏になっており、自己免疫反応も起こしやすい状態にある可能性を示唆しています。

ホルモンバランスの変化や、甲状腺疾患などの内分泌疾患も、円形脱毛症の発症に関与する場合があるとされています。特に甲状腺機能異常症と円形脱毛症の合併は比較的多く見られることが知られています。

円形脱毛症は自己免疫反応により毛包が攻撃されることで発症し、遺伝的要因・ストレス・感染症・アレルギー疾患など複数の要因が関与する可能性があり、症状の程度や経過には個人差が大きいとされています。

円形脱毛症の特徴を理解した上で、次にアトピー性皮膚炎を持つ方のリスクと注意点について見ていきましょう。

アトピー性皮膚炎を持つ方の円形脱毛症リスクと注意点

アトピー性皮膚炎を持つ方は円形脱毛症を発症するリスクが高い可能性があるため、頭皮の変化に注意を払い、脱毛斑を見つけた場合には早期にご相談いただくことが推奨されます。

アトピー性皮膚炎患者が注意すべき症状

アトピー性皮膚炎を持つ方が円形脱毛症を早期に発見するためには、日常的に頭皮の状態を観察することが重要です。特に、以下のような変化に気づいた場合には注意が必要とされています。

境界がはっきりした円形または楕円形の脱毛斑が見られる場合は、円形脱毛症の可能性があります。脱毛部分の皮膚が滑らかで、炎症や赤み、痛みなどを伴わないことが特徴です。アトピー性皮膚炎による頭皮の炎症や掻破による脱毛とは異なり、円形脱毛症では皮膚の状態は比較的正常に保たれていることが多いとされています。

枕に抜け毛が多く付着する、シャンプー時の抜け毛が急に増えるなどの変化も、円形脱毛症の初期サインである可能性があります。ただし、季節的な抜け毛の増加や、ストレスによる一時的な抜け毛との鑑別が必要な場合もあります。

脱毛斑の周囲に「感嘆符毛」と呼ばれる特徴的な短い毛が見られることがあります。これは根元が細く、先端に向かって太くなっている毛で、円形脱毛症に特徴的な所見とされています。

複数の脱毛斑が同時に出現したり、脱毛斑が拡大したりする場合には、より注意深い観察と早期の相談が推奨されます。特に、眉毛やまつ毛にも脱毛が見られる場合には、症状が広範囲に及んでいる可能性があります。

アトピー性皮膚炎による頭皮の症状と円形脱毛症を区別するポイントとして、アトピー性皮膚炎では通常、かゆみや炎症を伴い、掻破による傷や滲出液が見られることがあります。一方、円形脱毛症では脱毛部分の皮膚は滑らかで、かゆみや痛みなどの自覚症状がないことが多いとされています。

ただし、アトピー性皮膚炎と円形脱毛症を合併している場合には、頭皮に炎症と脱毛斑の両方が見られることもあります。このような場合には、専門的な診察により両疾患の状態を評価し、それぞれに適した治療を行うことが重要です。

リスクを高める可能性のある要因として、アトピー性皮膚炎の症状が重症である場合や、長期間にわたって症状が続いている場合、他のアレルギー疾患も合併している場合などが挙げられます。また、家族に円形脱毛症の方がいる場合には、遺伝的要因も加わり、リスクがさらに高まる可能性があるとされています。

強いストレスを感じている時期や、生活環境の大きな変化があった時期なども、円形脱毛症を発症しやすいタイミングとなる可能性があります。このような時期には、特に頭皮の状態に注意を払うことが推奨されます。

アトピー性皮膚炎を持つ方は円形脱毛症の発症リスクが高いため、境界明瞭な脱毛斑や抜け毛の増加などの変化に気づいた場合には早期にご相談いただくことで、適切な対応が可能になります。

脱毛斑を発見した場合の対処法について、次に詳しく説明いたします。

円形脱毛症が疑われる場合の対処法と受診のタイミング

円形脱毛症が疑われる症状がある場合には、自己判断せず早期にご相談いただくことで、適切な診断と治療を受けることができ、症状の改善や進行の抑制につながる可能性があります。

セルフチェックのポイントとして、鏡で頭皮全体を観察し、円形や楕円形の脱毛斑がないか確認することが推奨されます。頭頂部や後頭部など、自分では見えにくい部分は、家族に見てもらうことも有効です。脱毛斑を見つけた場合には、その大きさや数、位置を記録しておくと、医療機関での診察時に経過を伝えやすくなります。

早期受診が推奨される症状として、境界がはっきりした脱毛斑を見つけた場合があります。たとえ小さな脱毛斑であっても、早期に相談することで適切な対応が可能になる場合があります。複数の脱毛斑がある場合や、脱毛斑が急速に拡大している場合には、特に早めの受診が推奨されます。

眉毛やまつ毛、体毛にも脱毛が見られる場合は、症状が広範囲に及んでいる可能性があるため、早急な相談が必要とされています。このような場合には、より専門的な治療が必要になることがあります。

アトピー性皮膚炎を既に治療中の方は、定期受診の際に頭皮の状態についても相談されることをお勧めします。脱毛斑が見られる場合には、アトピー性皮膚炎の治療と並行して円形脱毛症の治療を行う必要がある場合もあります。

円形脱毛症の一般的な治療アプローチ

円形脱毛症の治療は、脱毛の範囲や程度、患者さんの年齢や全身状態などを考慮して選択されます。軽症の単発型では、自然に改善することも多いため、経過観察を選択する場合もあります。

ステロイド外用薬は、円形脱毛症の治療において広く使用される方法の一つです。脱毛斑に直接塗布することで、局所の免疫反応を抑制し、発毛を促す効果が期待できるとされています。副作用が比較的少なく、軽症から中等症の円形脱毛症に対して有効な場合が多いとされています。

より重症の場合や、外用療法で効果が不十分な場合には、ステロイドの局所注射が選択されることがあります。脱毛斑に直接薬剤を注射することで、より強い効果が期待できるとされています。

内服薬としては、抗アレルギー薬や、場合によってはステロイド内服薬が使用されることがあります。ただし、ステロイドの長期内服は副作用のリスクがあるため、慎重な判断が必要とされています。

その他の治療法として、紫外線療法、局所免疫療法、冷却療法などが選択される場合もあります。これらの治療法は、症状の程度や患者さんの状態により適応が判断されます。

アトピー性皮膚炎を合併している場合には、両疾患に対する治療を並行して行う必要があります。アトピー性皮膚炎のコントロールが不良であると、円形脱毛症の治療効果にも影響を与える可能性があるため、総合的な管理が重要とされています。

治療効果には個人差があり、数ヶ月から1年以上かかる場合もあります。また、治療により改善した後も、再発する可能性があるため、継続的な経過観察が推奨される場合があります。

円形脱毛症が疑われる場合には早期にご相談いただくことで適切な診断と治療が可能になり、治療法は症状の程度に応じて選択され、アトピー性皮膚炎を合併している場合には両疾患の総合的な管理が重要とされています。

最後に、両疾患を持つ場合の生活上のポイントについて説明いたします。

アトピー性皮膚炎と円形脱毛症の両方がある場合の生活上の注意点

アトピー性皮膚炎と円形脱毛症を合併している場合には、両疾患に配慮した日常生活の工夫が症状の管理に役立つ可能性があり、頭皮のケア・ストレス管理・生活習慣の調整などを総合的に行うことが重要とされています。

頭皮のスキンケアについて、アトピー性皮膚炎がある場合には頭皮も乾燥しやすく、炎症を起こしやすい状態になっている可能性があります。刺激の少ないシャンプーを選び、優しく洗うことが推奨されます。爪を立てて強く洗うことは、頭皮を傷つけ症状を悪化させる可能性があるため避けるべきとされています。

シャンプー後は十分にすすぎ、洗い残しがないようにすることが重要です。シャンプーやリンスの成分が頭皮に残ると、刺激となる可能性があります。洗髪後は、タオルで優しく水分を拭き取り、ドライヤーを使用する場合には、頭皮から離して温風を当てるなど、熱による刺激を最小限にすることが推奨されます。

頭皮の保湿も重要な要素です。アトピー性皮膚炎の方は皮膚のバリア機能が低下しているため、頭皮も乾燥しやすい状態にあります。医師の指導のもと、適切な保湿剤を使用することで、頭皮の状態を改善できる可能性があります。

円形脱毛症の脱毛斑がある部分は、紫外線の影響を受けやすくなっています。外出時には帽子をかぶるなどして、紫外線から頭皮を保護することが推奨されます。ただし、帽子による蒸れや摩擦が刺激となる場合もあるため、通気性の良い素材を選び、長時間の着用は避けることが望ましいとされています。

ストレス管理の重要性について、ストレスは両疾患の悪化要因となる可能性があるため、適切なストレス管理が重要です。十分な睡眠を取り、規則正しい生活リズムを保つことが基本とされています。趣味や運動など、自分なりのリラックス方法を見つけることも有効です。

脱毛による心理的ストレスも見逃せません。円形脱毛症により外見が変化することで、不安や悩みを抱える方も少なくありません。一人で悩まず、家族や友人、必要に応じて専門家に相談することで、心理的な負担を軽減できる可能性があります。

日常生活での工夫として、バランスの取れた食事を心がけることが推奨されます。特定の栄養素が不足すると、皮膚や毛髪の健康に影響を与える可能性があるため、タンパク質、ビタミン、ミネラルなどを適切に摂取することが重要とされています。

喫煙や過度の飲酒は、血液循環を悪化させ、症状に悪影響を与える可能性があるため、控えることが推奨されます。適度な運動は血液循環を改善し、ストレス解消にも役立つとされていますが、過度の運動は身体への負担となる場合もあるため、自分に合った運動量を見つけることが大切です。

継続的なケアの必要性として、アトピー性皮膚炎も円形脱毛症も、症状が改善した後も再発する可能性がある疾患です。症状が落ち着いている時期でも、予防的なスキンケアや生活習慣の維持を続けることが、長期的な症状の安定につながる可能性があるとされています。

定期的な経過観察も重要です。症状の変化に早期に気づき、適切な対応を取ることで、悪化を防ぐことができます。気になる症状や変化があれば、遠慮なくご相談いただくことが推奨されます。

治療や生活上の工夫について不安や疑問がある場合には、ご相談いただくことで、個々の状態に応じたアドバイスを受けることができます。両疾患を持つ方の生活の質を保つためには、医療機関との継続的な連携と、日常生活での適切なケアの両方が重要とされています。


※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療に代わるものではありません。症状や治療に関するご相談は、医療機関にご相談ください。

監修医師

理事長・院長
今村 英利
Imamura Eli

略歴

2014年10月神戸大学博士課程入学
2019年3月博士課程卒業医師免許取得
2019年4月赤穂市民病院
2021年4月亀田総合病院
2022年1月新宿アイランド内科クリニック院長
2023年2月いずみホームケアクリニック