38度の発熱は病院に行くべき?対処法と受診の判断基準について

発熱

体温を測って38度だったとき、病院に行くべきか迷われることはないでしょうか。

この体温は微熱と高熱の境界的な位置にあり、判断が難しいと感じる方も多いかもしれません。

すぐに受診すべきなのか、自宅で様子を見ても良いのか、悩まれることもあるでしょう。

適切な判断をするためには、体温だけでなく他の症状や全身状態も考慮する必要があります。

38度の発熱への正しい対処法と受診の判断基準を理解しておくことが大切とされています。

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38度の発熱の位置づけと特徴

38度の発熱は微熱と高熱の境界とされることが多く、個人の平熱や他の症状によって判断が異なります。

微熱と高熱の境界

医学的には、37.5度以上を発熱、38度以上を発熱または高熱と定義することが一般的です。38度という体温は、ちょうどこの境界に位置しています。

一部の医療機関や文献では、37.5〜38度未満を微熱、38度以上を発熱と分類しています。このため、38度は「微熱の上限」または「高熱の始まり」として捉えられることが多いとされています。

ただし、この分類は絶対的なものではなく、個人の平熱や状況によって解釈が変わることがあります。

一般的な38度の発熱の原因

38度の発熱は、様々な原因で起こります。最も多いのは、風邪などのウイルス性感冒です。風邪の場合、37〜38度程度の発熱が数日間続くことがあります。

インフルエンザの初期や、新型コロナウイルス感染症でも、38度台の発熱から始まることがあります。ただし、これらの疾患では、通常さらに高熱(39度以上)に進行することが多いとされています。

扁桃炎、咽頭炎、中耳炎、尿路感染症などの細菌感染症でも、38度台の発熱が見られることがあります。

症状の程度

38度の発熱でも、感じ方は個人差が大きいとされています。比較的元気で、水分も取れて普通に生活できる方もいれば、強い倦怠感や頭痛で辛いと感じる方もいます。

発熱に伴う症状としては、頭痛、関節痛、筋肉痛、倦怠感、悪寒などがあります。これらの症状の程度は、発熱の原因や個人の体調によって異なります。

個人差の考慮

平熱には個人差があり、一般的に36.0〜37.0度の範囲とされていますが、平熱が35度台の方もいれば、37度近い方もいます。

平熱が低い方にとっては、38度は身体にとって大きな負担となることがあります。逆に、平熱が高めの方では、38度でもそれほど不快感を感じないこともあります。

自分の平熱を把握しておくことで、38度の発熱が自分にとってどの程度の意味を持つかを判断しやすくなります。

このように、38度の発熱は微熱と高熱の境界的な位置づけであり、原因は様々で、個人の平熱や症状の程度によって判断が異なるとされています。

続いて、38度の発熱で様子を見ても良い場合について見ていきましょう。

38度の発熱で様子を見ても良い場合

38度の発熱でも、他に重い症状がなく水分が取れており、発熱して間もない健康な成人であれば、自宅で様子を見ることも選択肢です。

他に重い症状がない

38度の発熱があっても、以下のような重い症状がなければ、緊急性は低いと考えられます。

呼吸困難、胸痛、激しい頭痛、意識障害、けいれん、激しい腹痛、血尿、血便などの症状がない場合です。

軽い咳、鼻水、のどの痛み程度の症状であれば、風邪などの軽い感染症の可能性が高く、自宅で様子を見ることも可能です。

水分が取れている

発熱があっても、水分が十分に取れていることが重要です。水、お茶、経口補水液、スポーツドリンクなどを、こまめに飲めている状態であれば、脱水のリスクは低いと考えられます。

尿も通常通り出ており、色も薄い黄色であれば、水分バランスが保たれていると判断できます。

食欲が完全になくても、少量でも食べられる、または水分だけでも十分に取れていれば、自宅療養が可能です。

発熱して1〜2日以内

発熱が始まってから1〜2日以内であれば、自宅で様子を見ることも選択肢です。風邪などの軽い感染症は、通常2〜3日で自然に改善し始めます。

ただし、症状が悪化している場合や、3日目になっても改善しない場合は、医療機関への受診を検討することが推奨されます。

発熱の経過を観察し、体温や症状を記録しておくことで、受診する際の診断の助けになります。

健康な成人の場合

基礎疾患がなく、免疫力が正常な健康な成人であれば、38度の発熱で緊急受診の必要性は低いことが多いとされています。

十分な水分補給と休養を取りながら、自宅で経過を観察することができます。市販の解熱鎮痛剤を使用することもできます。

ただし、以下のような状況では、健康な成人でも早めの受診が推奨されます。症状が急激に悪化する、高熱(39度以上)に上昇する、3日以上発熱が続く、新たな症状が出現するなどです。

また、仕事や学校は無理をせず休むことが、早期回復と感染拡大防止の両面で重要です。

このように、38度の発熱でも、他に重い症状がなく水分が取れており、発熱して間もない健康な成人であれば、自宅で様子を見ることも可能とされています。

次に、38度の発熱でも病院に行くべき場合について説明いたします。

38度の発熱でも病院に行くべき場合

38度の発熱でも、3日以上続く場合、他の症状を伴う場合、基礎疾患がある場合、乳幼児や高齢者の場合は医療機関を受診すべきです。

3日以上続く場合

38度台の発熱が3日以上続く場合は、医療機関への受診が推奨されます。通常の風邪であれば2〜3日で解熱し始めることが多いため、それ以上続く場合は他の原因を考慮する必要があります。

細菌感染症(肺炎、尿路感染症、副鼻腔炎など)では、抗生物質による治療が必要です。適切な治療を受けないと、症状が悪化したり合併症を起こしたりする可能性があります。

また、長期間の発熱は体力を消耗させるため、早めに原因を特定し、適切な治療を受けることが大切です。

他の症状を伴う場合

38度の発熱に加えて、以下のような症状がある場合は、医療機関への受診が推奨されます。

激しい咳や呼吸困難、胸痛、激しい頭痛と嘔吐、項部硬直(首が硬くて前に曲げられない)、激しい腹痛、血尿や頻尿などの尿路症状、皮膚の発疹、リンパ節の腫れなどです。

これらの症状は、肺炎、髄膜炎、尿路感染症、感染症の合併などの可能性を示唆しており、診断と治療が必要です。

基礎疾患がある場合

糖尿病、心疾患、呼吸器疾患、腎疾患、免疫不全などの基礎疾患がある方は、38度の発熱でも早めに医療機関に相談することが推奨されます。

これらの疾患がある方は、感染症が重症化しやすく、また基礎疾患が悪化するリスクもあります。微熱であっても、医師の診察を受けることが大切です。

ステロイドや免疫抑制剤を使用している方、抗がん剤治療中の方なども、免疫力が低下しているため、発熱があれば早めの受診が重要です。

乳幼児・高齢者の場合

乳幼児、特に生後3ヶ月未満の乳児が38度以上の発熱をした場合は、昼夜を問わず速やかに医療機関を受診することが強く推奨されます。

生後3ヶ月以降の乳幼児でも、38度の発熱があり、ぐったりしている、水分が取れない、機嫌が非常に悪い、けいれんを起こしたなどの場合は、すぐに受診が必要です。

高齢者は、感染症があっても高熱が出ないことがあり、38度の発熱でも重篤な状態である可能性があります。元気がない、食事が取れない、意識がはっきりしないなどの症状があれば、早めの受診が推奨されます。

また、妊婦も、発熱により胎児への影響が心配されるため、38度以上の発熱があれば、産婦人科に相談することが推奨されます。

このように、38度の発熱でも、3日以上続く場合、他の症状を伴う場合、基礎疾患がある場合、乳幼児や高齢者の場合は医療機関を受診すべきとされています。

続いて、38度の発熱への自宅での対処法について見ていきましょう。

38度の発熱への自宅での対処法

38度の発熱への自宅での対処法としては、十分な水分補給と休養を基本とし、必要に応じて解熱剤を使用しながら経過を観察することが重要です。

水分補給の方法

発熱時には、発汗により通常より多くの水分が失われます。脱水を防ぐために、こまめな水分補給が非常に重要です。

水、麦茶、経口補水液、スポーツドリンクなど、飲みやすいものを少量ずつ頻繁に摂取します。1時間にコップ1杯(200ml)程度を目安にします。

一度に大量に飲むよりも、少量をこまめに飲む方が吸収されやすいとされています。尿の色が薄い黄色であれば、水分が十分に取れている証拠です。

安静と休養

38度の発熱があるということは、身体が病原体と闘っている状態です。無理をせず、十分な休養を取ることが重要です。

仕事や学校は休み、できるだけ横になって安静にすることが推奨されます。睡眠を十分に取ることで、免疫機能が効率的に働き、早期の回復が期待できます。

無理に活動すると、症状が長引いたり悪化したりする可能性があります。また、感染症の場合は、他の人に感染を広げるリスクもあります。

解熱剤を使用するかの判断

38度の発熱で解熱剤を使用するかどうかは、症状の辛さによって判断します。一般的には、38.5度以上の発熱があり、辛い症状がある場合に使用が検討されます。

ただし、38度台前半でも、頭痛や関節痛が強く非常に辛い場合は、解熱剤を使用することで症状が和らぐことがあります。

市販の解熱鎮痛剤としては、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ロキソプロフェンなどがあります。使用方法や使用間隔については、添付文書をよく読んで守ることが重要です。

解熱剤は一時的に熱を下げるだけで、病気を治すものではありません。使用しても症状が続く場合や悪化する場合は、医療機関の受診が必要です。

体温の記録

体温を定期的に測定し、記録しておくことが推奨されます。朝、昼、夕、就寝前など、1日4回程度測定します。

体温の推移を記録することで、症状が改善しているか悪化しているかを把握できます。また、医療機関を受診する際にも、体温の経過を伝えることで診断の助けになります。

体温だけでなく、いつから発熱したか、最高体温は何度だったか、解熱剤の使用状況なども記録しておくとよいでしょう。

症状の観察ポイント

体温以外にも、以下のような症状を観察し、記録しておくことが推奨されます。

咳の有無と程度、痰の色と量、のどの痛み、鼻水や鼻づまり、頭痛、関節痛や筋肉痛、倦怠感の程度、食欲の有無、水分摂取量、尿の量と色などです。

症状が悪化している場合や、新たな症状が出現した場合は、医療機関への受診を検討する必要があります。特に、呼吸困難、胸痛、激しい頭痛、意識障害などの重い症状が出た場合は、速やかに受診が必要です。

このように、38度の発熱への自宅での対処法としては、十分な水分補給と休養を基本とし、必要に応じて解熱剤を使用しながら、体温と症状を観察することが重要とされています。

次に、38度から39度以上に上昇した場合の対応について説明いたします。

38度から39度以上に上昇した場合の対応

38度の発熱が39度以上に上昇した場合は、症状の悪化を示している可能性があり、より注意深い観察と適切な対応が必要です。

体温上昇のサイン

38度の発熱が39度以上に上昇する兆候として、以下のような症状があります。

悪寒や震えが強くなる、身体が熱くなってくる、頭痛や関節痛が強くなる、倦怠感が増す、顔が赤くなる、汗が大量に出るなどです。

体温が上昇している最中は、寒気を感じて震えることがあります。この時は無理に冷やさず、むしろ温かくして、震えが止まるまで待つことが推奨されます。

受診を検討するタイミング

38度から39度以上に上昇した場合、以下のような状況では医療機関への受診を検討することが推奨されます。

39度以上の高熱が出た場合、解熱剤を使用しても全く下がらない、または短時間で再上昇する場合、呼吸困難や胸痛などの重い症状を伴う場合、水分が取れなくなった場合などです。

インフルエンザの流行期であれば、早めに受診して検査を受けることで、抗インフルエンザ薬による治療が可能です。発症後48時間以内の投与が効果的とされています。

夜間の対応

夜間に38度から39度以上に上昇した場合、緊急性を判断することが重要です。

以下のような症状がある場合は、夜間でも救急外来を受診する、または救急車を呼ぶことが推奨されます。呼吸困難、意識障害、けいれん、激しい頭痛と嘔吐、水分が全く取れない、生後3ヶ月未満の乳児などです。

これらの緊急症状がなく、解熱剤が効いている、水分が取れている、比較的元気があるなどの場合は、自宅で様子を見て翌朝に受診することも選択肢です。

判断に迷う場合は、救急安心センター事業(#7119)や小児救急電話相談(#8000)などの電話相談窓口を利用することができます。

悪化を示す症状

38度から体温が上昇するだけでなく、以下のような症状が出た場合は、病状の悪化を示している可能性があり、速やかな受診が必要です。

咳がひどくなり痰の色が黄色や緑色になった、呼吸が苦しくなった、胸が痛い、激しい頭痛が出た、嘔吐が続く、尿が出なくなった、意識がはっきりしないなどです。

これらは、肺炎などの細菌感染の合併、髄膜炎、脱水の進行などの可能性を示唆しており、早急な対応が必要です。

このように、38度から39度以上に上昇した場合は、症状の悪化を示している可能性があり、受診のタイミングを適切に判断し、悪化を示す症状に注意することが重要とされています。

最後に、38度の発熱が続く場合に考えられる原因について説明いたします。

38度の発熱が続く場合に考えられる原因

38度の発熱が数日間続く場合、風邪やインフルエンザ、細菌感染、その他の感染症など、様々な原因が考えられます。

風邪やインフルエンザ

最も一般的な原因は、風邪(普通感冒)です。風邪では、37〜38度程度の発熱が2〜3日続くことがあります。鼻水、鼻づまり、のどの痛み、咳などの上気道症状を伴うことが特徴です。

インフルエンザでは、通常38度以上、多くの場合39度以上の高熱が出ますが、初期や軽症例では38度台の発熱にとどまることもあります。全身の関節痛や筋肉痛、強い倦怠感を伴うことが特徴です。

新型コロナウイルス感染症でも、38度台の発熱が数日間続くことがあります。咳、倦怠感、味覚・嗅覚障害などを伴うことがあります。

細菌感染

扁桃炎や咽頭炎では、38度以上の発熱とのどの強い痛みが特徴です。特に溶連菌による扁桃炎では、扁桃に白い膿が付着していることがあります。抗生物質による治療が必要です。

副鼻腔炎(蓄膿症)でも、38度台の発熱が続くことがあります。鼻水(特に黄色や緑色)、鼻づまり、顔面痛や頭痛を伴うことが特徴です。

尿路感染症、特に腎盂腎炎では、38度以上の発熱が見られます。排尿時痛、頻尿、腰や背中の痛みを伴うことが特徴です。女性に多い疾患ですが、男性でも起こります。

その他の感染症

中耳炎では、38度前後の発熱と耳の痛みが特徴です。小児に多い疾患ですが、成人でも起こります。

胃腸炎では、発熱に加えて嘔吐、下痢、腹痛などの消化器症状が現れます。ウイルス性胃腸炎と細菌性胃腸炎があります。

肺炎の初期や軽症例では、38度台の発熱にとどまることがあります。咳、痰、呼吸困難、胸痛などを伴う場合は、早めの受診が必要です。

精密検査が必要な場合

38度台の発熱が2週間以上続く場合は、より詳しい検査が必要になることがあります。

結核などの慢性感染症、自己免疫疾患(関節リウマチ、全身性エリテマトーデスなど)、悪性腫瘍(白血病、リンパ腫など)なども、長期間の発熱の原因となる可能性があります。

このような場合は、血液検査、画像検査(レントゲン、CT、MRIなど)、培養検査などが行われ、原因の特定が試みられます。

原因不明の発熱が続く場合は、「不明熱」として専門的な評価が必要になることがあります。かかりつけ医での初期評価の後、必要に応じて専門医療機関への紹介が行われます。

このように、38度の発熱が続く場合の原因は風邪やインフルエンザが最も多いですが、細菌感染やその他の感染症、長期間続く場合は精密検査が必要な疾患も考慮する必要があるとされています。


※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療に代わるものではありません。症状や治療に関するご相談は、医療機関にご相談ください。

監修医師

理事長・院長
今村 英利
Imamura Eli

略歴

2014年10月神戸大学博士課程入学
2019年3月博士課程卒業医師免許取得
2019年4月赤穂市民病院
2021年4月亀田総合病院
2022年1月新宿アイランド内科クリニック院長
2023年2月いずみホームケアクリニック