発熱があっても病院に行かないで自宅で様子を見る選択をされることもあるでしょう。
軽度の熱で他に重い症状がない場合、すぐに受診する必要がないこともあります。
しかし、自宅療養を選んだ場合でも、適切な対処法を知っておくことが大切です。
間違った対処をすると症状が悪化したり、受診のタイミングを逃したりする可能性があります。
発熱で病院に行かない場合の自宅でのケア方法と、どのような時に受診に切り替えるべきかを理解しておくことが重要です。
発熱で病院に行かない判断をする前に確認することは?
発熱で病院に行かない判断をする前に、緊急性のある症状がないか、自宅療養が可能な状態かを確認することが重要です。
緊急性のある症状がないか
まず、以下のような緊急性のある症状がないかを確認する必要があります。
呼吸困難(息が苦しい、呼吸が速い、唇が紫色)、意識障害(呼びかけに反応しない、もうろうとしている)、けいれん、激しい頭痛と嘔吐、項部硬直(首が硬くて前に曲げられない)、胸痛、水分が全く取れない、尿が半日以上出ないなどです。
これらの症状がある場合は、自宅療養ではなく、速やかに医療機関を受診する必要があります。夜間や休日であっても、救急外来を受診することが推奨されます。
自宅療養が可能な状態か
自宅療養が可能な状態かどうかを確認することも重要です。以下の条件を満たしているかチェックします。
水分が十分に取れている、少量でも食事が取れる、会話ができる、ある程度動ける、尿が出ている、体温が測定できる環境があるなどです。
これらの条件が満たされていれば、自宅で様子を見ることが可能です。ただし、症状が悪化した場合は、すぐに医療機関に連絡する準備をしておくことが大切です。
年齢や基礎疾患の考慮
年齢や基礎疾患の有無も、自宅療養が可能かどうかの判断に影響します。
生後3ヶ月未満の乳児が38度以上の発熱をした場合は、自宅療養ではなく、速やかに医療機関を受診することが強く推奨されます。高齢者や、糖尿病、心疾患、呼吸器疾患などの基礎疾患がある方も、発熱により悪化するリスクがあるため、早めの受診が推奨されます。
健康な成人であれば、軽度の発熱で他に重い症状がなければ、自宅で様子を見ることも選択肢です。
判断に迷う場合の相談
自宅療養が可能かどうか判断に迷う場合は、医療機関に電話で相談することが推奨されます。症状を伝えることで、受診の必要性や自宅でのケア方法について助言を受けることができます。
救急安心センター事業(#7119)や、小児救急電話相談(#8000)などの電話相談窓口も利用できます。これらの窓口では、医師や看護師が症状を聞き取り、適切なアドバイスをしてくれます。
このように、発熱で病院に行かない判断をする前に、緊急症状がないか、自宅療養が可能な状態か、年齢や基礎疾患を考慮することが重要とされています。
続いて、病院に行かない場合の自宅での対処法について見ていきましょう。
病院に行かない場合の自宅での対処法
発熱で病院に行かない場合は、安静と休養、十分な水分補給、適切な解熱剤の使用などの基本的な対処を行うことが重要です。
安静と休養の重要性
発熱時に最も重要なのは、身体を休めることです。発熱は、身体が病原体と闘っているサインであり、十分な休養を取ることで免疫機能が効率的に働きます。
仕事や学校は休み、できるだけ横になって安静にすることが推奨されます。無理に活動すると、症状が長引いたり悪化したりする可能性があります。
睡眠を十分に取ることも重要です。身体が回復するためには、質の良い睡眠が必要です。寝室の環境を整え、静かで暗い部屋で休むことが推奨されます。
十分な水分補給
発熱時には、発汗や呼吸により通常より多くの水分が失われます。脱水を防ぐために、こまめな水分補給が非常に重要です。
水、麦茶、経口補水液、スポーツドリンクなど、飲みやすいものを少量ずつ頻繁に摂取します。一度に大量に飲むよりも、少量をこまめに飲む方が吸収されやすいとされています。
目安としては、1時間にコップ1杯(200ml)程度を飲むことが推奨されます。尿の色が薄い黄色であれば、水分が十分に取れている証拠です。
適切な解熱剤の使用
解熱剤は、発熱による不快感を和らげ、体力の消耗を防ぐために使用されます。一般的に、38.5度以上の発熱があり、辛い症状がある場合に使用が検討されます。
市販の解熱鎮痛剤としては、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ロキソプロフェンなどがあります。使用方法や使用間隔については、添付文書をよく読んで守ることが重要です。
解熱剤は一時的に熱を下げるだけで、病気を治すものではありません。使用しても症状が続く場合や悪化する場合は、医療機関の受診が必要です。
体温の記録
体温を定期的に測定し、記録しておくことが推奨されます。朝、昼、夕、就寝前など、1日4回程度測定します。
体温の経過を記録することで、症状が改善しているか悪化しているかを把握できます。また、医療機関を受診する際にも、体温の推移を伝えることで診断の助けになります。
体温だけでなく、いつから発熱したか、最高体温は何度だったか、他にどのような症状があるかなどもメモしておくとよいでしょう。
室内環境の調整
室温を適切に保つことも重要です。暑すぎず寒すぎず、快適と感じる温度に調整します。一般的には、室温20〜22度程度が推奨されます。
湿度も40〜60%程度に保つことで、のどや鼻の粘膜の乾燥を防ぐことができます。加湿器を使用したり、濡れたタオルを干したりする方法があります。
衣服は、汗をかいたらこまめに着替えることが大切です。汗で濡れた衣服を着続けると、身体が冷えて不快感が増します。
このように、病院に行かない場合は、安静と休養、十分な水分補給、適切な解熱剤の使用、体温の記録などの基本的な対処を行うことが重要とされています。
次に、発熱時の水分補給と栄養摂取の方法について説明いたします。
発熱時の水分補給と栄養摂取の方法
発熱時には適切な水分補給が最重要であり、食欲がある場合は消化の良いものを摂取することが推奨されます。
おすすめの飲み物
発熱時におすすめの飲み物としては、以下のようなものがあります。
水、麦茶は基本的な水分補給に適しています。経口補水液は、電解質(ナトリウム、カリウムなど)も補給できるため、発汗が多い場合や脱水が心配な時に適しています。
スポーツドリンクも電解質を含みますが、糖分が多いため、薄めて飲むことも一つの方法です。お茶(緑茶、紅茶など)は、カフェインが含まれているため飲みすぎに注意が必要ですが、適量であれば問題ありません。
水分補給の頻度と量
水分補給は、喉が渇く前にこまめに摂取することが重要です。1時間ごとにコップ1杯(200ml)程度を目安にします。
一度に大量に飲むと、吐き気を催すことがあります。少量ずつ頻繁に飲むことが推奨されます。特に、嘔吐がある場合は、一口ずつゆっくりと飲むことが大切です。
水分が十分に取れているかの目安は、尿の色と量です。尿の色が薄い黄色で、4〜6時間ごとに排尿があれば、水分が十分に取れていると判断できます。
食欲がない時の食事
発熱時は食欲が低下することが多いですが、無理に食べる必要はありません。水分補給を優先し、食べられるものを少量ずつ摂取します。
消化の良い食べ物としては、おかゆ、うどん、バナナ、りんごのすりおろし、ヨーグルト、ゼリー、プリンなどがあります。これらは胃腸に負担をかけず、エネルギー補給ができます。
スープや味噌汁なども、水分と塩分を同時に補給できるため適しています。ただし、熱すぎるものは避け、少し冷ましてから摂取することが推奨されます。
避けるべき飲食物
発熱時に避けるべき飲食物もあります。
アルコールは脱水を悪化させ、薬との相互作用もあるため避けるべきです。カフェインの多い飲料(コーヒー、エナジードリンクなど)も、利尿作用があるため、大量摂取は避けることが推奨されます。
脂っこい食事、辛い食べ物、消化に時間がかかる食べ物(揚げ物、脂身の多い肉など)は、胃腸に負担をかけるため避けた方がよいでしょう。
脱水のサイン
以下のような症状がある場合は、脱水が進んでいる可能性があります。
尿が半日以上出ない、尿の色が濃い(濃い黄色やオレンジ色)、口の中が乾いている、皮膚がカサカサしている、涙が出ない、目が落ち窪んでいる、皮膚をつまんで離しても元に戻りにくい(皮膚ツルゴールの低下)などです。
これらの症状がある場合は、脱水が進んでおり、自宅での水分補給だけでは不十分な可能性があります。医療機関を受診して、点滴による水分補給が必要になることがあります。
このように、発熱時には経口補水液やスポーツドリンクなどでこまめに水分補給を行い、食欲がある場合は消化の良いものを摂取することが重要とされています。
続いて、自宅療養中の症状観察とセルフケアについて見ていきましょう。
自宅療養中の症状観察とセルフケア
自宅療養中は、体温測定や症状の観察を定期的に行い、身体を適切に冷やしながら、感染予防にも注意することが重要です。
体温測定のタイミング
体温は、1日4回程度測定することが推奨されます。朝起きた時、昼食前、夕方、就寝前などの決まった時間に測定すると、体温の推移が分かりやすくなります。
解熱剤を使用した場合は、使用前と使用後の体温を記録しておくことで、解熱剤の効果を確認できます。
体温を記録する際は、日時、体温、他の症状、解熱剤の使用有無などをメモしておくと、医療機関を受診する際に役立ちます。
観察すべき症状
体温以外にも、以下のような症状を観察し、記録しておくことが推奨されます。
咳の有無と程度、痰の色と量、のどの痛み、鼻水や鼻づまり、頭痛、関節痛や筋肉痛、倦怠感の程度、食欲の有無、水分摂取量、尿の量と色、便の状態などです。
これらの症状が悪化している場合や、新たな症状が出現した場合は、医療機関への受診を検討する必要があります。
身体の冷やし方
発熱時に身体を冷やすことは、不快感を軽減する効果があります。ただし、冷やし方にはポイントがあります。
太い血管が通っている部位を冷やすと効果的です。額、首の両側、脇の下、鼠径部(足の付け根)などに、冷やしたタオルや氷嚢を当てます。
ただし、寒気がして震えている時は、身体が体温を上げようとしている段階です。この時は無理に冷やさず、むしろ温かくして、震えが止まるまで待つことが推奨されます。震えが止まり、熱が上がりきった後に冷やすと効果的です。
氷を直接皮膚に当てることは避け、必ずタオルやガーゼで包んで使用します。冷やしすぎると逆効果になることもあるため、適度に冷やすことが大切です。
入浴の可否
発熱時の入浴については、全身状態によって判断します。38度以上の高熱がある場合や、体力が消耗している場合は、入浴は避けた方がよいでしょう。
微熱程度で比較的元気がある場合は、シャワーで軽く汗を流す程度なら問題ありません。ただし、長時間の入浴は体力を消耗させるため避けることが推奨されます。
入浴後は身体が冷えないよう、すぐに水分を拭き取り、衣服を着ることが大切です。また、入浴後は水分補給を忘れずに行います。
家族への感染予防
発熱の原因が感染症の場合、家族への感染を防ぐことも重要です。
可能であれば、患者は別の部屋で過ごし、家族との接触を最小限にします。食事も別々に取ることが推奨されます。
マスクを着用する、こまめに手洗いをする、タオルや食器を共用しないなどの対策も有効です。部屋の換気をこまめに行い、ドアノブや電気のスイッチなど、手がよく触れる場所は消毒することが推奨されます。
このように、自宅療養中は体温や症状を定期的に観察し、適切に身体を冷やしながら、家族への感染予防にも注意することが重要とされています。
次に、病院に行かない選択が危険な場合について説明いたします。
病院に行かない選択が危険な場合
以下のような症状や状況では、病院に行かない選択が危険であり、速やかに受診することが必要です。
こんな症状が出たらすぐ受診
自宅療養中に以下のような症状が出た場合は、時間を問わず速やかに医療機関を受診する、または救急車を呼ぶことが推奨されます。
呼吸困難(息が苦しい、呼吸が速い、会話ができない、唇が紫色)、意識障害(呼びかけに反応しない、もうろうとしている、意味不明なことを言う)、けいれんが5分以上続く、激しい頭痛と嘔吐、項部硬直(首が硬くて前に曲げられない)、胸痛、激しい腹痛などです。
これらは重篤な疾患(髄膜炎、脳炎、肺炎、敗血症など)の可能性を示唆しており、緊急の対応が必要です。
症状が悪化した時のサイン
自宅療養を開始してから症状が悪化している場合も、医療機関への受診が必要です。
発熱が始まってから時間が経つにつれて、体温がさらに上昇している、解熱剤を使用しても全く下がらない、または短時間で再上昇する、咳がひどくなり眠れない、痰の色が黄色や緑色になった、全身の倦怠感が強くなったなどです。
症状が悪化している場合は、細菌感染の合併や、より重篤な疾患の可能性があります。
水分が取れなくなった場合
自宅療養中に水分が取れなくなった場合は、脱水のリスクが高く、医療機関への受診が必要です。
嘔吐が続いて水分が飲めない、強い倦怠感で水を飲む気力がない、尿が半日以上出ない、口の中がカラカラに乾いているなどの症状がある場合は、すでに脱水が進んでいる可能性があります。
脱水が進むと、意識障害や臓器障害を起こす可能性があり、点滴による水分補給が必要になります。
意識状態の変化
発熱に伴い、意識状態に変化が見られた場合は、非常に危険な状態です。
呼びかけに反応が鈍い、ぼんやりしている、意味不明なことを言う、場所や時間が分からなくなる、普段と明らかに様子が違うなどの症状がある場合は、速やかに救急車を呼ぶことが推奨されます。
小児では、異常行動(急に走り出す、飛び降りようとするなど)が見られた場合も、インフルエンザ脳症などの可能性があり、緊急受診が必要です。
高熱が続く場合
38度以上の発熱が3日以上続く場合は、医療機関への受診が推奨されます。通常の風邪であれば2〜3日で解熱し始めることが多いため、それ以上続く場合は他の原因を考慮する必要があります。
肺炎、尿路感染症、副鼻腔炎などの細菌感染症では、抗生物質による治療が必要です。適切な治療を受けないと、症状が悪化したり合併症を起こしたりする可能性があります。
このように、呼吸困難や意識障害、水分が取れない、高熱が続くなどの場合は、病院に行かない選択が危険であり、速やかに受診することが必要とされています。
最後に、自宅療養から病院受診に切り替えるタイミングについて説明いたします。
自宅療養から病院受診に切り替えるタイミング
自宅療養中でも、症状が改善しない場合や悪化した場合は、病院受診に切り替える判断が重要です。
3日以上発熱が続く場合
自宅療養を開始してから3日経っても、38度以上の発熱が続く場合は、医療機関への受診が推奨されます。
3日以上発熱が続く場合は、単なる風邪ではなく、細菌感染症や他の疾患の可能性があります。肺炎、尿路感染症、副鼻腔炎などでは、抗生物質による治療が必要です。
また、インフルエンザの場合でも、細菌感染を合併している可能性があります。早めに受診して適切な診断を受けることが大切です。
解熱剤が効かない場合
解熱剤を適切に使用しているにもかかわらず、全く熱が下がらない、または一時的に下がってもすぐに再上昇する場合は、医療機関への受診が推奨されます。
解熱剤が効かない場合は、より重篤な感染症や、炎症性疾患の可能性があります。医師の診察を受けて、適切な治療を受ける必要があります。
新たな症状が出現した場合
自宅療養中に、発熱以外の新たな症状が出現した場合も、受診を検討するタイミングです。
激しい咳が出るようになった、痰に血が混じる、呼吸が苦しくなった、激しい頭痛が出た、激しい腹痛や下痢が始まった、血尿や血便が出た、皮膚に発疹が出たなどの症状が新たに出現した場合です。
これらの症状は、合併症の発症や、別の疾患の可能性を示唆しています。
全身状態が悪化した場合
発熱の程度は変わらなくても、全身状態が悪化している場合は、受診が必要です。
ぐったりして動けなくなった、食事も水分も全く取れなくなった、会話をするのも辛い、立ち上がるとめまいがする、意識がはっきりしない時があるなどの症状です。
これらは、脱水の進行や、全身状態の悪化を示しており、点滴や入院治療が必要になる可能性があります。
判断に迷った時の相談窓口
自宅療養を続けるべきか、受診すべきか判断に迷った場合は、以下の相談窓口を利用することができます。
かかりつけ医に電話で相談する、救急安心センター事業(#7119)に相談する、小児の場合は小児救急電話相談(#8000)に相談するなどの方法があります。
これらの窓口では、症状を伝えることで、受診の必要性や緊急性について助言を受けることができます。判断に迷う場合は、遠慮せずに相談することが大切です。
自己判断で自宅療養を続けて症状が悪化するよりも、早めに相談して適切な対応を取る方が、結果的に早く回復できることが多いとされています。
このように、3日以上発熱が続く、解熱剤が効かない、新たな症状が出現した、全身状態が悪化したなどの場合は、自宅療養から病院受診に切り替えるタイミングとされています。
※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療に代わるものではありません。症状や治療に関するご相談は、医療機関にご相談ください。
監修医師

略歴
| 2014年10月 | 神戸大学博士課程入学 |
| 2019年3月 | 博士課程卒業医師免許取得 |
| 2019年4月 | 赤穂市民病院 |
| 2021年4月 | 亀田総合病院 |
| 2022年1月 | 新宿アイランド内科クリニック院長 |
| 2023年2月 | いずみホームケアクリニック |



