発熱がある時にどこを受診すればよいか迷われたことはないでしょうか。
新型コロナウイルス感染症の流行以降、医療機関に「発熱外来」という言葉を見かけるようになりました。
普通の外来とは何が違うのか、どのような症状の時に受診すればよいのか、疑問に思われることもあるでしょう。
発熱外来とは何か、どのように利用すればよいかについて知っておくことが大切です。
適切な医療機関の選択と受診方法を理解することで、スムーズな診療を受けることができます。
発熱外来とは何?
発熱外来とは、発熱や呼吸器症状のある患者を診察するための専用の外来であり、新型コロナウイルス感染症の流行を契機に多くの医療機関で設置されました。
発熱外来の定義
発熱外来は、発熱や咳、のどの痛みなどの呼吸器症状がある患者を対象とした外来診療の体制です。一般の外来患者とは別の動線や時間帯で診察を行い、感染症の拡大を防ぐことを目的としています。
明確な定義があるわけではなく、医療機関によって呼び方や運用方法は様々です。「発熱外来」「発熱者外来」「発熱専用外来」「感染症外来」など、異なる名称が使われることもあります。
基本的には予約制で、事前に電話連絡をしてから受診する体制が取られていることが一般的です。
設置された背景
発熱外来が広く設置されるようになったのは、2020年の新型コロナウイルス感染症の流行がきっかけです。感染拡大を防ぐため、発熱や呼吸器症状のある患者と、そうでない患者を分けて診療する必要が生じました。
新型コロナウイルス感染症の初期には、「帰国者・接触者外来」という名称で、特定の条件を満たす方のみが受診できる体制でした。その後、検査体制の拡充に伴い、より広く発熱患者を受け入れる「発熱外来」が各地の医療機関で設置されるようになりました。
厚生労働省も、発熱患者を診療できる医療機関の公表を促進し、地域の医療提供体制の整備を進めてきました。
発熱外来の目的と役割
発熱外来の主な目的は、感染症の疑いがある患者と、そうでない患者の接触を避けることです。待合室や診察室を分けることで、院内での感染拡大を防ぎます。
また、発熱患者に対して適切な診察、検査、治療を提供する役割も担っています。新型コロナウイルス感染症やインフルエンザなどの検査を行い、診断に基づいた治療や療養指導を行います。
地域の医療体制を維持するためにも重要です。多くの医療機関が発熱患者を受け入れることで、特定の病院への患者集中を防ぎ、医療崩壊を予防する役割があります。
現在の位置づけ
新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行した後も、多くの医療機関では発熱外来の体制を継続しています。インフルエンザなど他の感染症への対応も含め、感染対策の一環として維持されています。
ただし、医療機関によって対応は異なります。発熱外来を継続している医療機関もあれば、通常の外来で発熱患者も受け入れている医療機関もあります。
受診を検討する際は、各医療機関の方針を事前に確認することが重要です。
このように、発熱外来とは発熱や呼吸器症状のある患者を診察するための専用の外来であり、感染症の拡大を防ぎながら適切な医療を提供する役割を担っています。
続いて、発熱外来と一般外来の違いについて見ていきましょう。
発熱外来と一般外来の違い
発熱外来と一般外来の主な違いは、診療体制、予約制、感染対策、診察場所の分離などがあり、発熱患者を安全に診療するための工夫がされています。
診療体制の違い
一般外来では、様々な症状や疾患の患者が混在して受診しますが、発熱外来では発熱や呼吸器症状のある患者に特化しています。
診療スタッフも、発熱外来では感染防護具(ガウン、N95マスク、フェイスシールドなど)を着用して診療にあたります。一般外来よりも厳重な感染対策を行っています。
診察にかける時間も、一般外来と異なることがあります。問診、診察、検査、説明などに時間をかけるため、一人あたりの診療時間が長くなる傾向があります。
予約制が基本
発熱外来は、基本的に予約制です。飛び込みでの受診は受け付けていない医療機関が多いとされています。
事前に電話で連絡し、症状、発熱の程度、いつから症状があるか、渡航歴、濃厚接触の有無などを伝えた上で、受診の予約を取ります。
予約制にすることで、患者数をコントロールし、待合室での密集を避けることができます。また、診療に必要な準備(検査キットの用意、診察室の準備など)を事前に整えることができます。
感染対策の違い
発熱外来では、一般外来よりも厳重な感染対策が行われています。
診察室や待合室の換気を強化し、診察後には消毒を徹底します。患者が触れた場所や使用した機器は、毎回消毒されます。
医療スタッフは、標準予防策に加えて、飛沫予防策や接触予防策を行います。N95マスクやフェイスシールド、ガウン、手袋などの個人防護具を適切に使用します。
診察場所や動線の分離
発熱外来では、一般外来の患者と動線を分けることが基本です。入口から別にしている医療機関もあります。
待合室も別に設けられていることが多く、個室や屋外、駐車場の車内などで待機するよう指示されることもあります。
診察室も専用のものを使用したり、診察時間を分けたりすることで、一般外来の患者との接触を避けています。
診療時間の設定
発熱外来の診療時間は、一般外来とは別に設定されていることが多いとされています。
午前と午後の診療時間の間や、通常の診療時間の前後に、発熱外来の時間を設けている医療機関があります。また、特定の曜日のみ発熱外来を実施している医療機関もあります。
診療時間が限られているため、受診したい時にすぐに受診できないこともあります。事前の確認と予約が重要です。
このように、発熱外来と一般外来では、予約制、感染対策、動線の分離など、発熱患者を安全に診療するための様々な違いがあります。
次に、発熱外来を受診する基準と対象となる症状について説明いたします。
発熱外来を受診する基準と対象となる症状
発熱外来を受診する基準は、一般的に37.5度以上の発熱や呼吸器症状があること、新型コロナウイルス感染症やインフルエンザが疑われる症状がある場合とされています。
発熱の基準
多くの医療機関では、37.5度以上の発熱を発熱外来受診の基準としています。ただし、この基準は医療機関によって異なることがあります。
平熱が低い方で、普段より明らかに体温が高い場合も、発熱外来の対象となることがあります。体温の数値だけでなく、全身状態も考慮されます。
発熱がなくても、呼吸器症状がある場合は発熱外来の対象となることが多いとされています。
呼吸器症状がある場合
咳、のどの痛み、鼻水、鼻づまりなどの呼吸器症状がある場合も、発熱外来の受診対象です。これらの症状は、新型コロナウイルス感染症やインフルエンザ、その他の呼吸器感染症で見られます。
呼吸困難や息切れなど、重い呼吸器症状がある場合は、より緊急性が高く、速やかな受診が必要です。
新型コロナやインフルエンザが疑われる症状
新型コロナウイルス感染症やインフルエンザに特徴的な症状がある場合も、発熱外来の受診が推奨されます。
新型コロナウイルス感染症では、発熱、咳、倦怠感、味覚・嗅覚障害などが特徴的です。インフルエンザでは、38度以上の高熱、全身の関節痛・筋肉痛、強い倦怠感が特徴的です。
ただし、症状だけで確定診断はできないため、検査が必要になります。
濃厚接触者の場合
新型コロナウイルス感染症の陽性者と濃厚接触があった場合、症状がなくても検査を希望する場合は、発熱外来で相談することができます。
ただし、5類感染症移行後は、濃厚接触者の特定や行動制限は行われなくなっています。症状がある場合に受診することが基本です。
職場や学校から検査を求められている場合なども、発熱外来で相談できることがあります。
受診を迷う場合の判断
微熱程度で他に症状がない場合、発熱外来を受診すべきか迷うこともあるでしょう。
基礎疾患がある方、高齢者、妊婦などは、軽い症状でも早めに相談することが推奨されます。健康な成人で軽い症状の場合は、自宅で様子を見ることも選択肢です。
判断に迷う場合は、まず電話で医療機関に相談することが推奨されます。症状を伝えることで、受診の必要性や緊急性について助言を受けることができます。
このように、発熱外来を受診する基準は37.5度以上の発熱や呼吸器症状があること、新型コロナウイルス感染症やインフルエンザが疑われる場合とされています。
続いて、発熱外来の受診方法と流れについて見ていきましょう。
発熱外来の受診方法と流れ
発熱外来を受診する際は、必ず事前に電話連絡をして予約を取り、指示に従って受診することが基本的な流れです。
事前電話連絡が必須
発熱外来を受診する際は、必ず事前に電話で連絡することが重要です。いきなり医療機関を訪れることは避けるべきです。
電話では、氏名、年齢、症状(発熱の有無と程度、いつから症状があるか、他の症状)、基礎疾患の有無、内服薬、渡航歴、濃厚接触の有無などを聞かれます。
これらの情報をもとに、医療機関側が受診の可否、受診のタイミング、必要な準備などを判断します。
予約の取り方
電話連絡後、受診可能と判断されれば、予約日時が指定されます。希望の日時に予約が取れないこともあるため、余裕を持って連絡することが推奨されます。
予約時には、来院時の注意事項(どの入口から入るか、待機場所、マスクの着用など)も説明されます。これらの指示をメモしておくことが大切です。
医療機関によっては、オンラインでの予約システムを導入しているところもあります。ホームページなどで確認できます。
受診時の準備物
受診時には、以下のものを持参することが推奨されます。
健康保険証、医療証(子ども医療証など)、お薬手帳または内服薬のリスト、診察券(かかりつけ医の場合)、マスク、ハンカチやティッシュなどです。
体温を測定しておくことも推奨されます。いつから発熱があるか、最高体温は何度だったかなど、経過をメモしておくと診察がスムーズです。
診察の流れ
医療機関に到着したら、指定された入口から入り、指示された場所で待機します。一般の待合室ではなく、個室や屋外、車内などで待つよう指示されることがあります。
診察の順番が来たら、専用の診察室に案内されます。問診、診察(視診、聴診、咽頭の観察など)が行われます。
医師が必要と判断すれば、検査が行われます。診察後には、診断結果、治療方針、自宅での療養方法、注意点などの説明があります。
検査について
発熱外来では、新型コロナウイルス感染症の抗原検査やPCR検査、インフルエンザの検査などが行われることがあります。
抗原検査は、鼻の奥や喉から検体を採取し、15〜30分程度で結果が分かる迅速検査です。PCR検査は、より精度が高いですが、結果が出るまでに数時間から1日程度かかります。
インフルエンザの検査も、鼻の奥から検体を採取する迅速検査で、10〜15分程度で結果が分かります。
検査を行うかどうか、どの検査を行うかは、症状や状況に応じて医師が判断します。
このように、発熱外来を受診する際は、必ず事前に電話連絡をして予約を取り、指示された準備をして、指定された方法で受診することが基本的な流れです。
次に、発熱外来を受診する際の注意点について説明いたします。
発熱外来を受診する際の注意点
発熱外来を受診する際は、必ず事前連絡をすること、マスクを着用すること、公共交通機関の利用を避けることなど、いくつかの注意点があります。
必ず事前連絡すること
発熱外来を受診する際の最も重要な注意点は、必ず事前に電話で連絡することです。連絡なしに直接医療機関を訪れることは避けるべきです。
事前連絡をせずに来院すると、受診を断られることがあります。また、他の患者や医療スタッフへの感染リスクを高めることにもなります。
かかりつけ医がある場合は、まずかかりつけ医に連絡することが推奨されます。かかりつけ医で発熱外来を実施していない場合は、他の医療機関を紹介してもらえることがあります。
直接来院してはいけない理由
事前連絡なしに直接来院することが避けるべき理由は、複数あります。
一般外来の患者への感染リスクがあること、医療機関が発熱患者の受け入れ準備ができていないこと、予約制のため診察できないこと、他の医療機関を案内される可能性があることなどです。
緊急の場合を除き、必ず事前に連絡してから受診することが重要です。
受診時のマスク着用
受診時は、必ずマスクを着用することが推奨されます。不織布マスクが推奨されますが、ない場合は他のマスクでも構いません。
マスクを着用することで、咳やくしゃみによる飛沫の拡散を防ぎ、他の人への感染リスクを減らすことができます。
マスクを持っていない場合は、医療機関で提供されることもありますが、可能であれば持参することが望ましいです。
公共交通機関の利用について
発熱外来を受診する際は、可能な限り公共交通機関の利用を避けることが推奨されます。
自家用車、タクシー、家族の送迎などを利用することが望ましいとされています。公共交通機関を利用すると、他の乗客への感染リスクがあります。
やむを得ず公共交通機関を利用する場合は、マスクを着用し、他の人との距離を保ち、会話を避けることが重要です。
待機場所や待ち時間
発熱外来では、一般の待合室ではなく、別の場所で待機するよう指示されることがあります。
個室、屋外のベンチ、駐車場の車内などで待つよう指示される場合があります。指示された場所で待機し、勝手に院内を移動しないことが重要です。
待ち時間が長くなることもあります。防寒具や飲み物などを準備しておくとよいでしょう。携帯電話を持参し、連絡が取れるようにしておくことも大切です。
付き添いについて
発熱外来を受診する際、付き添いは最小限にすることが推奨されます。
小児や高齢者など、付き添いが必要な場合を除き、患者本人のみで受診することが望ましいとされています。付き添いの人数を減らすことで、待合室の密集を避けることができます。
付き添いが必要な場合も、1人に限定されることが多いです。医療機関の方針に従うことが大切です。
このように、発熱外来を受診する際は、必ず事前連絡をすること、マスクを着用すること、公共交通機関の利用を避けることなど、感染拡大を防ぐための注意点を守ることが重要です。
最後に、発熱外来以外の選択肢と相談窓口について説明いたします。
発熱外来以外の選択肢と相談窓口
発熱外来以外にも、かかりつけ医への相談、電話相談窓口の活用、オンライン診療など、様々な選択肢があります。
かかりつけ医への相談
発熱や呼吸器症状がある場合、まずかかりつけ医に電話で相談することが推奨されます。
かかりつけ医は、患者の病歴や内服薬を把握しているため、適切な助言や判断ができます。かかりつけ医で発熱外来を実施している場合は、そのまま受診することもできます。
かかりつけ医で発熱外来を実施していない場合でも、他の適切な医療機関を紹介してもらえることがあります。
休日・夜間診療所
平日の診療時間外や休日に症状が出た場合は、休日・夜間診療所を利用することも選択肢です。
多くの自治体では、休日や夜間に診療を行う診療所を設けています。ただし、これらの診療所も予約制や電話連絡が必要な場合があるため、事前に確認が必要です。
緊急性が低い場合は、翌診療日まで待って、かかりつけ医や発熱外来を受診する方が適切なこともあります。
電話相談窓口の活用
受診すべきか判断に迷う場合、電話相談窓口を利用することができます。
多くの自治体では、発熱などの症状がある際の相談窓口を設けています。症状を伝えることで、受診の必要性や適切な医療機関について助言を受けることができます。
小児の場合は、小児救急電話相談(#8000)を利用できます。休日や夜間に子どもの症状について相談したい時に、小児科医や看護師からアドバイスを受けることができます。
オンライン診療
軽い症状の場合や、再診の場合は、オンライン診療を利用できることがあります。
新型コロナウイルス感染症の流行以降、オンライン診療を導入する医療機関が増えています。自宅にいながら、ビデオ通話などで診察を受けることができます。
ただし、初診の場合や、詳しい診察や検査が必要な場合は、対面診療が必要です。オンライン診療が可能かどうかは、医療機関に確認する必要があります。
救急受診が必要な場合
以下のような症状がある場合は、発熱外来ではなく、救急外来を受診する、または救急車を呼ぶことが推奨されます。
呼吸困難(息が苦しい、唇が紫色になる)、意識障害(呼びかけに反応しない、もうろうとしている)、けいれんが続く、胸痛、激しい頭痛と嘔吐、水分が全く取れず尿が出ないなどです。
これらの症状は緊急性が高く、速やかな対応が必要です。救急車を呼ぶ際は、発熱や呼吸器症状があることを伝えることが重要です。
自宅療養の判断
軽い症状で、医療機関の受診が難しい場合や、検査の結果陽性でも症状が軽い場合は、自宅で療養することも選択肢です。
十分な休養と水分補給、適切な解熱鎮痛剤の使用、症状の観察などを行いながら、自宅で様子を見ることができます。
ただし、症状が悪化した場合や、高熱が続く場合、呼吸困難などの症状が出た場合は、速やかに医療機関に連絡することが重要です。
このように、発熱外来以外にもかかりつけ医への相談、電話相談窓口の活用、オンライン診療、緊急時の救急受診など、状況に応じた様々な選択肢があります。
※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療に代わるものではありません。症状や治療に関するご相談は、医療機関にご相談ください。
監修医師

略歴
| 2014年10月 | 神戸大学博士課程入学 |
| 2019年3月 | 博士課程卒業医師免許取得 |
| 2019年4月 | 赤穂市民病院 |
| 2021年4月 | 亀田総合病院 |
| 2022年1月 | 新宿アイランド内科クリニック院長 |
| 2023年2月 | いずみホームケアクリニック |




