発熱の原因で風邪以外に考えられる病気は?症状別の見分け方と対処法

発熱

熱が出た時、多くの方はまず風邪を疑われるのではないでしょうか。

しかし、発熱の原因は風邪以外にも様々な病気が考えられます。

高熱が続く、いつもと違う症状がある、風邪薬を飲んでも改善しないなどの場合、別の疾患が隠れている可能性もあります。

原因によって適切な治療法が異なるため、風邪以外の可能性も知っておくことが大切です。

発熱を引き起こす疾患は多岐にわたり、正しい知識を持つことが適切な対処につながります。

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風邪以外で発熱する主な原因とは?

風邪以外で発熱する原因は、感染症、炎症性疾患、悪性腫瘍、薬剤性発熱など、様々なカテゴリーに分類されます。

感染症による発熱

発熱の最も一般的な原因は感染症です。風邪も感染症の一つですが、それ以外にも多くの感染症があります。

細菌やウイルス、真菌、寄生虫などの病原体が体内に侵入すると、免疫システムが活性化され、発熱が起こります。感染症による発熱は、病原体と闘うための身体の防御反応です。

インフルエンザ、肺炎、尿路感染症、胃腸炎、扁桃炎など、様々な感染症が発熱を引き起こします。感染部位や病原体の種類により、発熱の程度や他の症状が異なります。

炎症性疾患

感染症以外でも、身体の中で炎症が起こると発熱することがあります。自己免疫疾患では、免疫システムが誤って自分の身体を攻撃することで炎症が起こります。

関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患などの自己免疫疾患や膠原病では、慢性的な発熱が見られることがあります。

これらの疾患による発熱は、数週間から数ヶ月にわたって持続することが特徴です。

悪性腫瘍

がんなどの悪性腫瘍も、発熱の原因となることがあります。腫瘍が産生する物質や、腫瘍による炎症反応により、発熱が引き起こされます。

特に、白血病やリンパ腫などの血液のがんでは、発熱が初期症状として現れることが多いとされています。固形がんでも、進行すると発熱を伴うことがあります。

薬剤性発熱

薬剤の副作用として発熱が起こることもあります。抗生物質、抗てんかん薬、抗精神病薬、抗がん剤など、様々な薬剤が原因となる可能性があります。

薬剤性発熱は、薬を開始してから数日から数週間後に発症することが多く、原因となる薬を中止すると熱が下がることが特徴です。

その他の原因

熱中症、脱水、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)、副腎不全などでも発熱が起こることがあります。

また、心因性発熱と呼ばれる、ストレスや不安によって引き起こされる発熱もあります。身体的な原因が見つからない場合に考慮されることがあります。

このように、風邪以外で発熱する原因は感染症、炎症性疾患、悪性腫瘍、薬剤性発熱など、多岐にわたるカテゴリーに分類されます。

続いて、風邪以外の感染症による発熱について詳しく見ていきましょう。

風邪以外の感染症による発熱

風邪以外の感染症として、インフルエンザ、肺炎、尿路感染症、胃腸炎など、様々な疾患が発熱の原因となります。

インフルエンザ

インフルエンザは、インフルエンザウイルスによって引き起こされる感染症で、風邪とは異なります。38度以上の高熱が急激に出現し、全身の関節痛や筋肉痛、強い倦怠感が特徴的です。

風邪よりも症状が強く、急激に発症することが特徴です。抗インフルエンザ薬による治療が可能で、発症後48時間以内の投与が効果的です。

新型コロナウイルス感染症

新型コロナウイルス感染症も、発熱を引き起こす感染症の一つです。発熱、咳、倦怠感、味覚・嗅覚障害などが特徴的な症状です。

症状は個人差が大きく、無症状から重症まで様々です。高齢者や基礎疾患のある方では重症化のリスクが高いとされています。

肺炎

肺炎は、肺の組織に炎症が起こる疾患で、細菌、ウイルス、真菌などが原因となります。発熱に加えて、咳、痰、呼吸困難、胸痛などの症状を伴います。

風邪に続いて発症することもあれば、突然発症することもあります。高齢者では典型的な症状が出にくく、発熱や咳が目立たないこともあります。

重症化すると呼吸不全を起こす可能性があり、早期の診断と治療が重要です。

尿路感染症

膀胱炎や腎盂腎炎などの尿路感染症でも発熱が起こります。特に腎盂腎炎では、38度以上の高熱が出ることが多いとされています。

排尿時痛、頻尿、残尿感、血尿などの尿路症状を伴うことが特徴です。腰や背中の痛みがある場合は、腎盂腎炎の可能性が高まります。

女性に多い疾患ですが、男性でも起こります。抗生物質による治療が必要です。

胃腸炎

ウイルス性胃腸炎や細菌性胃腸炎では、発熱に加えて、嘔吐、下痢、腹痛などの消化器症状が現れます。

ノロウイルスやロタウイルスなどのウイルス性胃腸炎は冬場に多く、サルモネラやカンピロバクターなどの細菌性胃腸炎は食中毒として発症することがあります。

脱水に注意しながら、対症療法を行います。細菌性の場合は抗生物質が必要なこともあります。

扁桃炎・咽頭炎

扁桃炎や咽頭炎では、発熱とのどの痛みが主な症状です。特に溶連菌による扁桃炎では、38度以上の高熱が出ることが多いとされています。

扁桃に白い膿が付着していることが特徴的です。溶連菌感染症の場合、抗生物質による治療が必要で、治療しないとリウマチ熱や腎炎などの合併症を起こす可能性があります。

中耳炎

中耳炎、特に急性中耳炎では、発熱と耳の痛みが主な症状です。小児に多い疾患ですが、成人でも起こります。

風邪に続いて発症することが多く、鼻水や鼻づまりを伴うことがあります。抗生物質による治療が行われることがあります。

結核など慢性感染症

結核は、結核菌による慢性の感染症で、微熱が長期間続くことが特徴です。咳、痰、体重減少、寝汗などの症状を伴います。

長期間の治療が必要で、早期発見が重要です。日本では減少傾向にありますが、依然として注意が必要な感染症です。

このように、風邪以外の感染症としてインフルエンザ、肺炎、尿路感染症、胃腸炎など、様々な疾患が発熱を引き起こし、それぞれ特徴的な症状を伴います。

次に、炎症性疾患や自己免疫疾患による発熱について説明いたします。

炎症性疾患や自己免疫疾患による発熱

炎症性疾患や自己免疫疾患では、免疫システムの異常により慢性的な炎症が起こり、長期間にわたる発熱が特徴的です。

関節リウマチなど膠原病

関節リウマチは、関節に慢性的な炎症が起こる自己免疫疾患で、微熱を伴うことがあります。朝のこわばり、複数の関節の対称性の腫れと痛みが特徴的です。

関節症状以外にも、発熱、倦怠感、体重減少などの全身症状が見られることがあります。適切な治療により、症状のコントロールが可能です。

全身性エリテマトーデス

全身性エリテマトーデス(SLE)は、全身の様々な臓器に炎症が起こる自己免疫疾患です。発熱は高頻度で見られる症状で、微熱から高熱まで様々です。

顔面の蝶形紅斑(頬から鼻にかけての赤い発疹)、関節痛、口内炎、光線過敏症などの症状を伴うことがあります。若い女性に多い疾患です。

炎症性腸疾患

クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患では、腸に慢性的な炎症が起こります。発熱、腹痛、下痢、血便などが主な症状です。

症状の悪化(活動期)と改善(寛解期)を繰り返すことが特徴です。長期的な管理が必要な疾患で、適切な治療により症状のコントロールが可能です。

血管炎

血管炎は、血管に炎症が起こる疾患の総称で、様々なタイプがあります。発熱、倦怠感、体重減少などの全身症状を伴うことが多いとされています。

高安動脈炎、巨細胞性動脈炎、結節性多発動脈炎など、様々な種類があり、炎症が起こる血管の種類や大きさによって症状が異なります。

慢性的な発熱の特徴

これらの炎症性疾患や自己免疫疾患による発熱の特徴は、数週間から数ヶ月にわたって持続することです。37〜38度程度の微熱が続くことが多いとされています。

感染症のように急激に発症するのではなく、徐々に症状が現れることが多く、倦怠感や体重減少などの全身症状を伴うことも特徴です。

通常の解熱剤では十分に改善しないことが多く、基礎疾患に対する治療が必要です。ステロイドや免疫抑制剤などが使用されることがあります。

このように、炎症性疾患や自己免疫疾患では免疫システムの異常により慢性的な発熱が起こり、長期間持続することが特徴とされています。

続いて、悪性腫瘍や血液疾患による発熱について見ていきましょう。

悪性腫瘍や血液疾患による発熱

悪性腫瘍や血液疾患でも発熱が起こることがあり、特に原因不明の持続する発熱では考慮すべき疾患です。

がんに伴う発熱の特徴

悪性腫瘍、特に進行がんでは、腫瘍自体が産生する物質や、腫瘍による組織の壊死、炎症反応などにより発熱が起こります。

がんに伴う発熱は、37〜38度程度の微熱が持続することが多く、夕方から夜間にかけて上昇する傾向があります。解熱剤で一時的に下がっても、再び上昇することが特徴です。

発熱以外にも、体重減少、食欲不振、倦怠感、寝汗などの症状を伴うことが多いとされています。これらの症状が組み合わさって現れる場合は、注意が必要です。

白血病やリンパ腫

白血病やリンパ腫などの血液のがんでは、発熱が初期症状として現れることが多いとされています。

白血病では、貧血症状(動悸、息切れ、めまい)、出血傾向(あざができやすい、鼻血が出やすい)、感染しやすいなどの症状を伴うことがあります。

リンパ腫では、首やわきの下、鼠径部などのリンパ節が腫れることが特徴的です。痛みのないリンパ節の腫れに、発熱、体重減少、寝汗などの全身症状が加わる場合は、リンパ腫の可能性があります。

不明熱の原因として

原因不明の発熱(不明熱)の原因として、悪性腫瘍が一定の割合を占めています。不明熱とは、38度以上の発熱が3週間以上続き、様々な検査を行っても原因が特定できない状態を指します。

不明熱の原因としては、感染症、膠原病、悪性腫瘍の3つが主要なカテゴリーです。高齢者では、悪性腫瘍の割合が高くなる傾向があります。

注意すべき症状

以下のような症状を伴う発熱がある場合は、悪性腫瘍の可能性も考慮して、早めに医療機関を受診することが推奨されます。

原因不明の体重減少(数ヶ月で5kg以上など)、夜間の大量の寝汗、持続する倦怠感、食欲不振が続く、リンパ節の腫れ、貧血症状、出血傾向などです。

これらの症状が複数組み合わさって現れる場合は、特に注意が必要です。ただし、これらの症状があっても必ずしもがんとは限らず、他の疾患でも見られる症状です。

このように、悪性腫瘍や血液疾患でも発熱が起こることがあり、体重減少や倦怠感などの全身症状を伴う場合は注意が必要とされています。

次に、風邪との見分け方と症状の特徴について説明いたします。

風邪との見分け方と症状の特徴

風邪以外の発熱を見分けるには、発熱の持続期間、症状の組み合わせ、全身状態などを総合的に評価することが重要です。

発熱の持続期間の違い

普通の風邪による発熱は、通常2〜3日で解熱し始め、1週間程度で治まることが一般的です。発熱が3日以上続く場合は、風邪以外の原因を考慮する必要があります。

インフルエンザでは、3〜5日程度高熱が続くことがあります。肺炎や尿路感染症などの細菌感染では、抗生物質による治療がなければ発熱が持続します。

2週間以上の発熱が続く場合は、結核などの慢性感染症、膠原病、悪性腫瘍などの可能性も考慮する必要があります。

症状の組み合わせ

風邪では、鼻水、鼻づまり、のどの痛み、咳などの上気道症状が主体で、発熱は比較的軽度(37〜38度程度)であることが多いとされています。

一方、他の疾患では特徴的な症状の組み合わせが見られます。

発熱+強い関節痛・筋肉痛→インフルエンザ、発熱+排尿時痛・頻尿→尿路感染症、発熱+激しい嘔吐・下痢→胃腸炎、発熱+呼吸困難・胸痛→肺炎、発熱+強いのどの痛み→扁桃炎などです。

このように、発熱に加えてどのような症状があるかが、疾患を見分ける重要な手がかりとなります。

風邪の経過との違い

風邪は、通常徐々に症状が現れ、数日でピークに達し、その後徐々に改善していきます。この経過が典型的でない場合は、他の疾患の可能性があります。

症状が急激に悪化する場合、一度良くなったのに再び悪化する場合(二峰性の経過)、解熱剤で一時的に熱が下がってもすぐに再上昇する場合などは、注意が必要です。

風邪薬を数日間服用しても全く改善しない場合も、風邪以外の原因を考慮すべきです。

全身状態の評価ポイント

全身状態の評価も重要です。風邪では、発熱があっても水分が取れて、ある程度動ける状態であることが多いとされています。

以下のような全身状態の悪化が見られる場合は、より重篤な疾患の可能性があります。

水分が全く取れない、尿が出ない、ぐったりして動けない、意識がはっきりしない、呼吸が苦しい、激しい痛みがあるなどです。

また、急激な体重減少、持続する倦怠感、夜間の寝汗などは、慢性的な疾患の可能性を示唆します。

このように、風邪以外の発熱を見分けるには、発熱の持続期間、症状の組み合わせ、経過のパターン、全身状態などを総合的に評価することが重要とされています。

最後に、風邪以外の発熱で医療機関を受診すべきタイミングについて説明いたします。

風邪以外の発熱で医療機関を受診すべきタイミング

風邪以外の発熱が疑われる場合、高熱が続く、他の症状を伴う、繰り返す発熱などのサインがあれば、医療機関を受診することが重要です。

高熱が続く場合

38度以上の高熱が3日以上続く場合は、医療機関への受診が推奨されます。通常の風邪であれば、2〜3日で解熱し始めることが多いため、それ以上続く場合は他の原因を考慮する必要があります。

39度以上の高熱が出た場合も、早めの受診が推奨されます。特に、解熱剤を使用しても全く下がらない、すぐに再上昇するなどの場合は、重篤な感染症の可能性があります。

他の症状を伴う場合

発熱に加えて、以下のような症状がある場合は、早めに医療機関を受診することが推奨されます。

呼吸困難、胸痛、激しい頭痛、項部硬直(首が硬くて前に曲げられない)、意識障害、けいれん、激しい腹痛、血尿、血便、皮膚の発疹(特に点状出血)、リンパ節の腫れなどです。

これらの症状は、肺炎、髄膜炎、急性腹症、尿路感染症、敗血症などの重篤な疾患の可能性を示唆します。

繰り返す発熱

一度解熱した後、再び発熱を繰り返す場合も、医療機関への受診が推奨されます。発熱が周期的に繰り返される場合は、特定の感染症や血液疾患の可能性があります。

風邪が治りきらずに何度も発熱を繰り返す場合も、免疫機能の低下や慢性感染症の可能性があります。

原因不明の発熱

微熱が2週間以上続き、明らかな原因が分からない場合は、医療機関での精密検査が必要です。このような状態は「不明熱」と呼ばれ、様々な検査により原因を探る必要があります。

血液検査、画像検査(レントゲン、CT、MRIなど)、培養検査などが行われ、感染症、膠原病、悪性腫瘍などの鑑別が行われます。

精密検査が必要な状況

以下のような状況では、より詳しい検査が必要になることがあります。

原因不明の体重減少を伴う発熱、夜間の大量の寝汗を伴う発熱、持続する倦怠感と発熱、高齢者の発熱(非典型的な症状のことがある)、免疫抑制状態の方の発熱(糖尿病、ステロイド使用中など)、海外渡航歴がある方の発熱などです。

かかりつけ医での初期評価の後、必要に応じて専門医療機関への紹介が行われることがあります。原因が特定できない場合は、総合病院での入院精査が必要になることもあります。

早期の診断と治療により、多くの疾患は適切に管理することができます。発熱が続く、いつもと違うと感じる場合は、遠慮せずに医療機関を受診することが大切です。

このように、風邪以外の発熱が疑われる場合、高熱が続く、他の症状を伴う、繰り返す発熱などがあれば、医療機関を受診して適切な診断と治療を受けることが重要とされています。


※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療に代わるものではありません。症状や治療に関するご相談は、医療機関にご相談ください。

監修医師

理事長・院長
今村 英利
Imamura Eli

略歴

2014年10月神戸大学博士課程入学
2019年3月博士課程卒業医師免許取得
2019年4月赤穂市民病院
2021年4月亀田総合病院
2022年1月新宿アイランド内科クリニック院長
2023年2月いずみホームケアクリニック