風邪でベロ痛いのはなぜ?舌の痛みの原因と治し方について

風邪

風邪をひいた際に「ベロがピリピリ痛い」「舌がヒリヒリして食事がつらい」といった経験をされた方は多いのではないでしょうか。

風邪でベロ痛い症状は、ウイルス感染による舌への直接的影響や免疫反応に伴う炎症、口腔内環境の変化などによって生じる可能性があるとされています。

風邪でベロ痛い症状は一般的に数日から1週間程度で改善することが多いとされていますが、痛みの程度や持続期間には個人差があります。

適切な口腔ケアと食事調整により症状の軽減が期待できる場合がありますが、強い痛みが続く場合や口腔内の異常な変化を伴う場合には、専門的な判断が重要とされています。

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風邪でベロ痛い症状が起こる原因とメカニズム

風邪による舌の痛みは、ウイルス感染の直接的影響、免疫システムによる炎症反応、口腔内環境の変化、薬剤や生活習慣の影響などが複合的に作用して引き起こされるとされています。

ウイルス感染による舌への直接的影響について、風邪の原因となるウイルス(ライノウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルスなど)の一部は、呼吸器だけでなく口腔粘膜にも感染することが知られています。特にコクサッキーウイルスなどは手足口病の原因としても知られ、舌や口腔内に水疱や潰瘍を形成し、強い痛みを引き起こす可能性があります。また、ウイルス感染により舌の表面の味蕾や粘膜が炎症を起こし、痛みや違和感が生じるとされています。

免疫反応による炎症の発生では、風邪ウイルスと闘うために活性化された免疫システムが、サイトカインと呼ばれる炎症性物質を放出します。これらのサイトカインが舌の血管や神経に作用し、血管透過性の亢進や痛覚の過敏化を引き起こすことで、舌の腫れや痛みが生じる可能性があります。特にインターロイキン-1やTNF-αなどは、粘膜の炎症反応を促進する作用があるとされています。

口腔内環境の変化も重要な要因です。風邪による発熱や鼻づまりにより口呼吸が増加すると、口腔内が乾燥し、唾液の分泌が減少します。唾液には細菌の増殖を抑制し、口腔内を清潔に保つ働きがあるため、唾液分泌の低下により口腔内細菌叢のバランスが乱れ、舌に炎症や痛みが生じる可能性があります。また、味覚の変化により普段より刺激の強い食べ物を摂取してしまい、舌を傷つける場合もあるとされています。

薬剤や生活習慣による影響では、風邪薬に含まれる抗ヒスタミン薬や抗生物質が口腔内の乾燥を促進し、舌の痛みを悪化させる場合があります。また、発熱により食欲が低下し、ビタミンB群や亜鉛などの不足が生じると、舌炎や口内炎を引き起こしやすくなる可能性があります。熱いものや冷たいものを無理に摂取することで、舌に物理的な刺激を与えることも痛みの原因となるとされています。

このように、ウイルス感染、免疫反応、口腔環境の変化、薬剤・生活習慣の影響が相互に作用して舌の痛みが発生します。

続いて、舌の痛みの具体的な特徴について見ていきましょう。

風邪でベロ痛い症状の特徴と他の症状との関連

風邪に伴う舌の痛みには、ピリピリとした刺激痛や灼熱感といった特徴があり、食事や飲み物の摂取時に特に症状が強くなる傾向があるとされています。

舌の痛みの現れ方の特徴として、舌の先端や側面、表面全体にピリピリ、ヒリヒリとした痛みが現れることが多く、触れると痛みが増強する傾向があります。特に酸味の強い食べ物、辛い食べ物、熱い飲み物などを摂取した際に痛みが顕著になることが特徴的です。舌の表面が赤くなったり、小さな水疱や白い斑点が現れたりする場合もあります。また、味覚の変化を伴うことがあり、いつもより味を感じにくくなったり、金属のような異味を感じたりする場合があるとされています。

他の風邪症状との関連では、発熱の程度と舌の痛みの強さが相関することが多いとされています。高熱時には口腔内の乾燥が進み、舌の痛みも増強する傾向があります。鼻づまりによる口呼吸は口腔内乾燥を悪化させ、舌の痛みを持続させる要因となります。咽頭痛と同時に現れることも多く、のどと舌の両方に痛みを感じることで、食事摂取がより困難になる場合があります。全身の倦怠感や食欲不振と相まって、栄養摂取の低下を招く可能性もあるとされています。

症状の経過については、通常は風邪の初期から中期にかけて現れ、他の急性症状と並行して改善する傾向があります。一般的には3〜7日程度で軽快することが多いとされていますが、口腔内の乾燥が続いたり、栄養状態が悪かったりすると、回復が遅れる場合があります。また、舌の表面に傷ができた場合には、完全な治癒まで1〜2週間程度を要することもあります。高齢者や免疫力の低下した方では、症状の回復により長い期間を要する可能性があるとされています。

このようなピリピリとした刺激痛や灼熱感を特徴とし、食事摂取時に悪化する舌の痛みの症状パターンを理解することが重要です。

次に、これらの症状に対する適切な対処法について説明いたします。

風邪でベロ痛い時の対処法と治し方

風邪による舌の痛みに対しては、口腔内の清潔保持と保湿、刺激物の回避、栄養補給の工夫が効果的な治療アプローチとされています。

口腔ケアと清潔保持について、舌の痛みを軽減するためには口腔内を清潔に保つことが最も重要です。ぬるま湯でのうがいを頻回に行い、口腔内の細菌や食べかすを除去することが推奨されます。歯磨きの際は柔らかい歯ブラシを使用し、舌を傷つけないよう優しく行うことが大切です。市販の口腔用保湿剤や人工唾液を使用することで、口腔内の乾燥を防ぎ、舌の痛みを軽減できる場合があります。また、加湿器を使用して室内の湿度を50-60%程度に保つことも効果的とされています。

食事内容の調整方法では、舌への刺激を最小限に抑えた食事を心がけることが重要です。おかゆ、うどん、ゼリー、プリンなどの柔らかく滑らかな食品を選び、熱すぎず冷たすぎない温度で摂取することが推奨されます。酸味の強い果物、辛い食べ物、塩分の多い食品、炭酸飲料などは舌の痛みを悪化させる可能性があるため一時的に避けることが大切です。栄養価の高い流動食や栄養補助食品を活用し、十分な栄養摂取を心がけることも重要とされています。

痛みを和らげる日常的な工夫では、氷片を舐めたり、冷たい水でうがいをしたりすることで、一時的に痛みを軽減できる場合があります。ハチミツは抗炎症作用があるとされており、小さじ1杯程度を舌に乗せてゆっくり溶かすことで症状の緩和が期待できます。ただし、1歳未満の乳児には与えてはいけません。市販の口内炎用軟膏や口腔用スプレーも、適切に使用することで痛みの軽減に役立つ場合があります。

水分補給も重要で、常温または少し冷たい水、お茶、スープなどをこまめに摂取することで口腔内の乾燥を防ぎます。アルコールやカフェインを含む飲み物は脱水を促進する可能性があるため、控えることが推奨されます。

このような口腔内の清潔保持と保湿、刺激物の回避、栄養補給の工夫による治療方法の詳細については、個人の状況を考慮してご相談ください。

続いて、風邪以外で舌の痛みが続く場合の可能性について見ていきましょう。

風邪以外でベロ痛い症状が続く場合の可能性

舌の痛みを引き起こす要因は風邪以外にも口腔内の感染症、自己免疫疾患、栄養欠乏症、悪性腫瘍など多岐にわたるため、総合的な視点からの原因検討が必要とされています。

口腔内の他の疾患について、口内炎、舌炎、カンジダ症(口腔カンジダ症)、ヘルペス性口内炎などが考えられます。アフタ性口内炎では舌に白い潰瘍ができ、強い痛みを伴います。口腔カンジダ症では舌に白い苔状の付着物が現れ、拭き取ると赤くただれた状態が露出します。ヘルペス性口内炎では水疱が多発し、破れると激しい痛みを生じるとされています。また、舌癌の初期症状として持続的な痛みや硬結が現れる場合もあり、特に喫煙歴のある方では注意が必要です。

全身疾患による舌の症状として、貧血(特に鉄欠乏性貧血、悪性貧血)、糖尿病、甲状腺疾患、シェーグレン症候群などが原因となる場合があります。鉄欠乏性貧血では舌が滑らかになり痛みを伴う萎縮性舌炎を来すことがあります。ビタミンB12や葉酸欠乏では舌が真っ赤になる Hunter舌炎が特徴的です。シェーグレン症候群では唾液分泌の著しい低下により口腔内乾燥症が生じ、舌の痛みや味覚異常を引き起こします。

その他の原因として、薬剤の副作用(ACE阻害薬、抗がん剤、抗生物質など)、金属アレルギー(歯科材料による接触性皮膚炎)、舌痛症(明らかな病変がないにも関わらず舌に痛みを感じる疾患)、心理的ストレスなども舌の痛みの原因となる可能性があります。また、入れ歯や詰め物の不適合による物理的刺激、歯ぎしりによる舌の外傷なども考慮すべき要因です。更年期の女性では、ホルモンバランスの変化により口腔内乾燥や舌の痛みが生じることもあるとされています。

このように口腔内の感染症、自己免疫疾患、栄養欠乏症、悪性腫瘍など多岐にわたる原因が考えられるため、風邪以外の可能性についても総合的な評価が重要です。

最後に、医療機関を受診すべきタイミングについて説明いたします。

ベロ痛い症状で医療機関を受診すべきタイミング

医療機関での相談が必要な舌の痛みかどうかは、症状の重症度、継続期間、随伴症状、口腔内の変化を多角的に検討して判断することが大切とされています。

早急な受診を検討すべき症状として、舌の著しい腫れにより呼吸困難や嚥下困難を来す場合、高熱を伴う激しい舌の痛み、舌に深い潰瘍や出血を伴う病変がある場合があります。また、舌の一部が硬くなったり、しこりを触れたりする場合、舌の色が異常に変化した場合(紫色、黒色など)も早急な対応が必要とされています。口腔内に白い膜状の付着物が広範囲に現れ、拭き取れない場合や、舌の感覚が完全に失われた場合も専門的な評価が緊急に必要です。

継続的な観察が必要なケースでは、風邪症状が完全に回復したにもかかわらず舌の痛みが2週間以上続く場合や、徐々に痛みが強くなっている場合があります。食事摂取に著しい支障をきたすほどの痛みが続く場合、味覚の完全な消失が1週間以上持続する場合、舌の表面の変化(白斑、紅斑、萎縮など)を伴う痛みなども専門的な評価が推奨されます。また、体重減少を伴う慢性的な舌の痛み、他の口腔内症状(歯肉出血、口腔乾燥など)を併発する場合にも相談が必要です。

特に注意が必要な方として、糖尿病や免疫不全状態の方では感染症のリスクが高いため、軽度の症状でも早めの相談が推奨されます。高齢者では口腔がんのリスクが高まるため、持続的な舌の痛みには特に注意が必要です。喫煙歴や飲酒歴のある方、入れ歯を使用している方では、慢性的な刺激による病変の可能性があるため定期的な口腔内チェックが重要とされています。また、複数の薬剤を服用中の方では薬剤性の口腔内症状の可能性があるため、症状と服薬歴の関連について確認が必要です。

このような症状の重症度、継続期間、随伴症状、口腔内の変化の多角的検討に基づく適切な対応については、ご相談ください。早期の適切な対応により、原因の特定や症状の改善、重篤な疾患の早期発見が期待できる場合があります。


※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療に代わるものではありません。症状や治療に関するご相談は、医療機関にご相談ください。

監修医師

理事長・院長
今村 英利
Imamura Eli

略歴

2014年10月神戸大学博士課程入学
2019年3月博士課程卒業医師免許取得
2019年4月赤穂市民病院
2021年4月亀田総合病院
2022年1月新宿アイランド内科クリニック院長
2023年2月いずみホームケアクリニック