風邪をひいた後に「体重が増えてしまった」「太ったような気がする」といった経験をされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
風邪による体重増加は、活動量の低下や代謝の変化、薬剤の影響、水分貯留などによって生じる可能性があるとされています。
風邪で太る現象は一時的なものである場合が多いとされていますが、体重増加の程度や持続期間には個人差があります。適切な食事管理と軽い運動の再開により改善が期待できる場合がありますが、急激な体重増加が続く場合や他の症状を伴う場合には、専門的な判断が重要とされています。
風邪で太るのはなぜ?体重増加の主な原因とメカニズム
風邪で太る主な原因は、活動量の低下による消費カロリーの減少と代謝の変化、薬剤による影響、水分貯留などが考えられるとされています。
活動量低下による影響について、風邪により安静にしている期間中は、日常の身体活動が大幅に制限されます。通勤、家事、運動などの活動によるカロリー消費が減少する一方で、食事による摂取カロリーが維持されるか、場合によっては増加することで、エネルギーバランスが崩れて体重増加につながる可能性があります。筋肉量の一時的な減少も基礎代謝率を低下させ、太りやすい状態を作る要因とされています。
代謝の変化と内分泌への影響では、風邪による身体的ストレスがコルチゾールなどのストレスホルモンの分泌を増加させる場合があります。コルチゾールは食欲を増進させ、特に糖質や脂質への欲求を高める作用があるとされています。また、発熱後の回復期には代謝率が一時的に低下し、普段と同じ食事量でも体重が増加しやすくなる可能性があります。
薬剤による副作用も重要な要因です。風邪薬に含まれる抗ヒスタミン薬は食欲を増進させる副作用がある場合があります。また、症状が重い場合に処方されるステロイド系薬剤は、食欲増進や水分・ナトリウムの貯留により体重増加を引き起こす可能性があるとされています。解熱鎮痛剤の一部も水分貯留に影響する場合があります。
水分貯留によるむくみでは、炎症反応により血管透過性が亢進し、組織間に水分が貯留することで体重が増加する場合があります。これは実際の脂肪増加ではなく、一時的な現象であることが多いとされています。
風邪で太る原因は複合的で個人差があるため、症状の現れ方も人によって異なります。
続いて、風邪による体重増加の具体的な特徴について見ていきましょう。
風邪による体重増加の特徴と一時的な変化の見分け方
風邪による体重増加は、比較的短期間での変化として現れ、むくみや食生活の変化に伴う一時的な増加が特徴とされています。
体重増加のパターンとして、風邪の発症から回復期にかけて1〜3kg程度の体重増加が見られることが一般的です。増加は段階的ではなく、比較的短期間(数日から1週間程度)で生じることが多く、朝と夕方で体重に差が生じやすくなる傾向があります。顔や手足のむくみを伴う場合が多く、指輪がきつくなったり、靴が履きにくくなったりする症状を感じる方もいらっしゃいます。
一時的な変化の特徴では、風邪の回復と共に徐々に体重が元に戻る傾向があります。特に水分貯留による体重増加は、正常な活動の再開や薬剤の中止により比較的早期に改善することが多いとされています。食事量が正常に戻り、活動量が回復すると、通常1〜2週間程度で体重も回復前の状態に近づくことが期待されます。
病的な体重増加との見分け方として、風邪による一時的な体重増加では、全身の健康状態は比較的良好で、食欲や活動意欲も回復と共に改善する傾向があります。一方、基礎疾患による体重増加では、呼吸困難、動悸、持続する浮腫、食欲不振などの症状を伴うことが多いとされています。体重増加が1ヶ月以上続く場合や、他の全身症状を伴う場合には、他の原因の可能性も考慮する必要があります。
風邪による体重増加の特徴を理解することで適切な対応が可能になります。
次に、これらの症状に対する適切な対処法について説明いたします。
風邪で太った時の対処法と体重管理のポイント
風邪で太った場合の対処法として、段階的な活動の再開と適切な食事管理、水分バランスの調整が基本的なアプローチとして重要とされています。
活動量の段階的回復について、風邪の回復期には急激な運動ではなく、軽いウォーキングやストレッチから始めることが推奨されます。体力の回復に応じて徐々に活動強度を上げることで、筋肉量の回復と基礎代謝の向上が期待できます。家事や日常生活動作も無理のない範囲で再開し、消費カロリーを徐々に増やすことが効果的とされています。ただし、体調が完全に回復していない段階での過度な運動は避けることが大切です。
食事管理の重要性では、風邪の回復期には食欲が戻ることが多いため、バランスの取れた食事を心がけることが重要です。高カロリー・高糖質の食品を控え、野菜や良質なタンパク質を中心とした食事に戻すことが推奨されます。水分摂取も適切に行い、むくみの改善を促進することが大切です。ただし、極端な食事制限は回復を妨げる可能性があるため避けるべきとされています。
薬剤の影響への対応では、風邪薬の服用を中止できる段階になったら、医師や薬剤師と相談の上で適切に中止することが重要です。薬剤による食欲増進やむくみは、服用中止により改善することが多いとされています。ただし、自己判断での急な中止は避け、症状の改善を確認しながら段階的に減量することが推奨されます。
生活リズムの正常化も重要で、風邪により乱れた睡眠リズムや食事時間を元に戻すことで、ホルモンバランスの改善や代謝の正常化が期待できます。ストレス管理も重要で、適度なリラクゼーションにより、ストレスホルモンの過剰分泌を抑制することができるとされています。
風邪による体重増加への対処法は個人の回復状況により異なるため、適切なアプローチについてはご相談ください。
続いて、風邪以外で急激に太る場合の可能性について見ていきましょう。
風邪以外で急激に太る場合の可能性
急激な体重増加は風邪以外の様々な原因でも生じる可能性があり、適切な判断のためには他の要因も考慮することが重要とされています。
内分泌疾患による体重増加として、甲状腺機能低下症、クッシング症候群、糖尿病などが考えられます。甲状腺機能低下症では代謝率の低下により体重増加が生じ、寒がり、便秘、皮膚の乾燥、疲労感などの症状を伴うことが多いとされています。クッシング症候群では中心性肥満、顔面の丸み、皮膚線条などの特徴的な症状があります。糖尿病では血糖コントロールの不良により体重変動が生じる場合があります。
心疾患や腎疾患による浮腫では、心不全や腎機能低下により体内に水分が貯留し、急激な体重増加を来すことがあります。これらの場合、息切れ、動悸、尿量の減少、下肢の浮腫などの症状を伴うことが特徴とされています。肝疾患でも腹水や浮腫により体重が増加する場合があり、腹部の膨満感や黄疸などの症状を伴うことがあります。
薬剤による副作用では、ステロイド、抗精神薬、抗てんかん薬、インスリンなど多くの薬剤が体重増加の副作用を持つ可能性があります。これらの薬剤は食欲増進や代謝への影響、水分貯留などの機序により体重増加を引き起こすとされています。新しく薬を開始した時期と体重増加のタイミングが一致する場合には、薬剤性の可能性を考慮する必要があります。
その他の原因として、精神的疾患(うつ病、摂食障害など)、妊娠、更年期によるホルモン変化、生活習慣の急激な変化なども急激な体重増加の原因となる可能性があります。また、腫瘍による腹水や組織の増大も体重増加を引き起こす場合があるとされています。
急激な体重増加の原因は多岐にわたるため、風邪以外の要因が疑われる場合や症状が長期間続く場合には専門的な判断が重要です。
最後に、医療機関を受診すべきタイミングについて説明いたします。
体重増加で医療機関を受診すべきタイミング
体重増加で医療機関への相談を検討すべきタイミングとして、増加の程度や速度、他の症状の有無などを総合的に判断することが重要とされています。
早急な受診を検討すべき症状として、1週間で3kg以上の急激な体重増加がある場合や、呼吸困難、胸痛、動悸などの心血管症状を伴う場合があります。また、尿量の著明な減少、下肢の強いむくみ、腹部の急激な膨満などの症状がある場合には、心不全や腎疾患の可能性があるため早めの相談が推奨されます。意識障害や著明な全身倦怠感を伴う場合にも注意が必要とされています。
継続的な観察が必要なケースでは、風邪の完全な回復後も1ヶ月以上体重増加が続く場合や、生活習慣を改善しても体重が減らない場合があります。また、体重増加と共に食欲の異常な増進、異常な疲労感、月経異常、皮膚の変化などの症状がある場合には、内分泌疾患の可能性も考慮して相談が推奨されます。
特に注意が必要な方として、既に心疾患、腎疾患、糖尿病、甲状腺疾患などの慢性疾患をお持ちの方では、基礎疾患の悪化による体重増加の可能性があるため早めの相談が重要です。また、複数の薬を服用されている方では、薬剤の相互作用や副作用による体重増加も考慮する必要があります。高齢者では心機能や腎機能の低下により体重増加のリスクが高いため、注意深い観察が必要とされています。
体重増加についての判断や対処法には個人差があり、適切な対応についてはご相談ください。早期の適切な対応により、原因の特定や症状の改善、基礎疾患の早期発見が期待できる場合があります。
※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療に代わるものではありません。症状や治療に関するご相談は、医療機関にご相談ください。
監修医師

略歴
2014年10月 | 神戸大学博士課程入学 |
2019年3月 | 博士課程卒業医師免許取得 |
2019年4月 | 赤穂市民病院 |
2021年4月 | 亀田総合病院 |
2022年1月 | 新宿アイランド内科クリニック院長 |
2023年2月 | いずみホームケアクリニック |