風邪でご飯食べないのは大丈夫?栄養不足と回復への影響について

風邪

風邪をひいた際に「ご飯が全然食べられない」「食欲がなくて何も口にしたくない」といった状態になった経験をされた方は多いのではないでしょうか。

風邪でご飯を食べない状態は、発熱や炎症反応による食欲中枢への影響、味覚・嗅覚の変化、消化機能の低下などによって生じる可能性があるとされています。

風邪でご飯を食べない期間が短期間であれば大きな問題とならない場合が多いとされていますが、栄養不足や脱水が続くと回復が遅れる可能性があります。

適切な水分・栄養補給により症状の改善が期待できる場合がありますが、長期間食事が摂れない場合や脱水症状を伴う場合には、専門的な判断が重要とされています。

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風邪でご飯食べないのは体に悪い?栄養不足が回復に与える影響

風邪でご飯食べない状態が続くことは、免疫機能の低下、回復エネルギーの不足、脱水や電解質バランスの乱れ、体力低下といった複数の問題を引き起こし、結果的に風邪の回復を遅らせる可能性があるとされています。

免疫機能への栄養の重要性について、身体がウイルスと闘うためには十分な栄養素が必要とされています。特にタンパク質は免疫細胞の材料となり、ビタミンCや亜鉛などは免疫機能を正常に保つために重要な役割を果たします。食事摂取が不足すると、これらの栄養素が不足し、免疫システムの働きが低下する可能性があります。その結果、ウイルスの排除が遅れ、風邪症状が長期化したり、二次感染のリスクが高まったりするとされています。

エネルギー不足による回復遅延では、発熱により基礎代謝が通常の10-13%増加するため、普段以上のエネルギーが必要になります。しかし、食事摂取が不足すると、身体は筋肉や脂肪組織からエネルギーを得ようとし、体力の消耗が加速します。これにより、回復に必要な体力が不足し、症状の改善が遅れる可能性があるとされています。

脱水や電解質バランスへの影響も深刻な問題です。発熱による発汗や呼吸数の増加により、通常より多くの水分が失われます。さらに、食事から摂取される水分や電解質(ナトリウム、カリウムなど)が不足すると、脱水症状が進行し、循環機能や腎機能に影響を与える可能性があります。体力低下と合併症のリスクでは、栄養不足により全身の体力が低下し、肺炎などの重篤な合併症を引き起こすリスクが高まるとされています。

このように、栄養不足、エネルギー不足、脱水、体力低下などが重なり合うことで、風邪からの回復が大幅に遅れる可能性があります。

続いて、食事が摂れない状態の具体的な特徴について見ていきましょう。

風邪でご飯食べない状態の特徴と注意すべきサイン

風邪による食事摂取困難には、段階的な食欲低下から完全な摂食不能まで幅広い程度があり、症状の重症度や個人の状態によって異なる特徴を示すとされています。

食事摂取困難の現れ方では、初期段階では「いつもより食欲がない」程度から始まり、進行すると「匂いを嗅ぐだけで気持ち悪い」「水分すら受け付けない」という状態まで様々です。特に高熱時には完全に食欲が失われることが多く、普段好きな食べ物に対しても嫌悪感を示すことがあります。また、口の中の味が変わったように感じたり、何を食べても美味しく感じられないという味覚の変化を伴う場合もあるとされています。

他の症状との関連では、発熱の程度と食欲低下の強さが相関することが多いとされています。38度以上の高熱では食欲が著しく低下し、解熱と共に徐々に食欲が戻る傾向があります。鼻づまりによる嗅覚の低下は食べ物の美味しさを感じにくくし、食欲をさらに減退させる可能性があります。咽頭痛がある場合には、固形物の摂取が困難になり、液体のみしか摂取できない状態になることもあります。

危険な状態の見極め方として、24時間以上水分すら摂取できない、立ちくらみやめまいが頻繁に起こる、尿量が著しく減少する、意識がもうろうとするなどの症状が現れた場合には、脱水症状が進行している可能性があります。また、体重の急激な減少(1週間で体重の5%以上)、皮膚の弾力性の低下、口の中が異常に乾燥するなども注意すべきサインとされています。

このような段階的な食欲低下から完全摂食不能まで様々な程度があり、適切な見極めが重要な状態を理解することが大切です。

次に、これらの症状に対する適切な対処法について説明いたします。

風邪でご飯食べない時の対処法と栄養補給のコツ

風邪により食事が摂れない状況では、少量でも高栄養価の食品選択、消化負担の軽減、段階的な食事再開が効果的な栄養管理の基本となるとされています。

少量でも効率的な栄養摂取方法について、完全に食欲がない場合でも、スプーン1杯から始められる高栄養価の食品を選ぶことが重要です。おかゆに卵を溶き入れたもの、バナナのすりつぶし、ヨーグルト、プリンなどは比較的受け入れやすく、栄養価も高いとされています。市販の栄養補助食品やゼリー状の栄養ドリンクも、少量で必要な栄養素を補給できるため有効です。また、数回に分けて少しずつ摂取することで、胃腸への負担を軽減できます。

消化に良い食品の選び方では、胃腸に負担をかけずに栄養を摂取できる食品を選ぶことが大切です。おかゆ、うどん、白身魚、豆腐、卵などのタンパク質源は消化しやすく、回復に必要な栄養素を含んでいます。果物ではリンゴのすりおろしやバナナ、みかんなどが消化に良く、ビタミンCも補給できます。一方で、脂っこい食事、刺激の強い食べ物、食物繊維の多い食品は一時的に避けることが推奨されます。

水分補給と電解質管理では、脱水を防ぐために定期的な水分摂取が最も重要です。経口補水液、薄めたスポーツドリンク、温かいお茶、スープなどを少量ずつ頻回に摂取することが効果的とされています。氷を舐める、アイスクリームを少量摂取するなど、冷たいものの方が受け入れやすい場合もあります。ただし、カフェインやアルコールは脱水を促進する可能性があるため避けることが大切です。

このような少量高栄養の食品選択、消化負担の軽減、段階的な食事再開による栄養管理方法の詳細については、個人の状況を考慮してご相談ください。

続いて、風邪以外で食事が摂れない場合の可能性について見ていきましょう。

風邪以外でご飯食べない状態が続く場合の可能性

食事摂取困難の要因は風邪以外にも重篤な感染症、消化器疾患、精神的要因、薬剤の副作用など多岐にわたるため、総合的な視点からの原因検討が必要とされています。

重篤な感染症や合併症について、風邪症状と思われていたものが実際には肺炎、髄膜炎、敗血症などの重篤な感染症である可能性があります。これらの疾患では食欲不振に加えて、呼吸困難、意識障害、重篤な脱水症状などが現れることが多いとされています。また、風邪をきっかけとして脱水症状、電解質異常、低血糖などの代謝異常を引き起こし、これらが食欲不振を悪化させる悪循環を形成する場合もあります。

消化器疾患や全身疾患による食事摂取困難として、急性胃腸炎、胃潰瘍、腸閉塞などの消化器疾患が考えられます。これらでは腹痛、嘔吐、下痢などの症状を伴うことが多く、風邪症状とは明確に区別される特徴があります。また、糖尿病の急性合併症、甲状腺疾患、腎疾患、肝疾患なども食欲不振の原因となる可能性があります。悪性腫瘍では持続的な食欲不振と体重減少を特徴とします。

その他の原因として、抗生物質や鎮痛剤などの薬剤による胃腸障害、うつ病や不安障害などの精神的要因、摂食障害、アルコール依存症なども食事摂取困難の原因となる場合があります。高齢者では複数の薬剤の副作用や認知機能の低下、嚥下機能の低下なども考慮すべき要因です。また、口腔内の疾患(口内炎、歯痛、義歯の不適合など)により物理的に食事摂取が困難になることもあるとされています。

このように重篤な感染症、消化器疾患、精神的要因、薬剤の副作用など多岐にわたる原因が考えられるため、風邪以外の可能性についても総合的な評価が重要です。

最後に、医療機関を受診すべきタイミングについて説明いたします。

ご飯食べない状態で医療機関を受診すべきタイミング

医療機関での相談が必要な食事摂取困難かどうかは、症状の重症度、継続期間、脱水の程度、全身状態の変化を多角的に検討して判断することが大切とされています。

緊急受診が必要な症状として、24時間以上水分すら摂取できない状態、意識がもうろうとする、呼吸困難、胸痛を伴う場合があります。また、脱水症状の兆候(尿量の著しい減少、皮膚の弾力性低下、口の中の異常な乾燥、立ちくらみ)が現れた場合や、血糖値の異常が疑われる症状(極度の脱力感、冷や汗、震え)を伴う場合には緊急性が高いとされています。乳幼児や高齢者では症状が急速に悪化する可能性があるため、より早期の対応が重要です。

継続的な観察が必要なケースでは、風邪症状が改善したにもかかわらず食欲不振が1週間以上続く場合や、徐々に食事摂取量が減少している場合があります。体重の継続的な減少(1週間で体重の3-5%以上)、腹痛や嘔吐などの消化器症状を伴う場合、血便や黒色便などの異常な便の性状も専門的な評価が推奨されます。また、発熱を伴わない食欲不振が長期間続く場合には、風邪以外の原因を考慮する必要があります。

特に注意が必要な方として、乳幼児では脱水症状が急速に進行するため、半日程度食事や水分が摂取できない場合でも相談が推奨されます。高齢者では認知機能の低下や嚥下機能の問題、複数の基礎疾患の影響を受けやすいため、軽度の症状でも注意深い観察が重要です。糖尿病、腎疾患、心疾患などの基礎疾患をお持ちの方では、食事摂取不足が基礎疾患の悪化を招く可能性があるため早めの相談が大切です。

このような症状の重症度、継続期間、脱水の程度、全身状態の変化の多角的検討に基づく適切な対応については、ご相談ください。早期の適切な対応により、脱水症状の改善、栄養状態の回復、基礎疾患の安定化が期待できる場合があります。


※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療に代わるものではありません。症状や治療に関するご相談は、医療機関にご相談ください。

監修医師

理事長・院長
今村 英利
Imamura Eli

略歴

2014年10月神戸大学博士課程入学
2019年3月博士課程卒業医師免許取得
2019年4月赤穂市民病院
2021年4月亀田総合病院
2022年1月新宿アイランド内科クリニック院長
2023年2月いずみホームケアクリニック