風邪をひいた際に「のどの痛みがひどい」「扁桃炎かもしれない」と感じられた経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
風邪と扁桃炎は症状が似ている部分がありますが、原因や治療法には重要な違いがあるとされています。風邪と扁桃炎の違いを理解することは、適切な対処法の選択や受診の判断において重要な意味を持ちます。
風邪は主にウイルス感染によるものですが、扁桃炎は細菌感染による場合も多く、治療アプローチが異なる場合があります。
適切な判断により症状の軽減や合併症の予防が期待できる場合がありますが、症状の鑑別や治療法の選択には専門的な判断が重要とされています。
風邪と扁桃炎の違いとは?原因と症状の特徴
風邪と扁桃炎の主な違いは、感染の原因となる病原体と症状の現れ方、影響を受ける部位の範囲にあるとされています。
原因となる病原体の違いについて、風邪は主にライノウイルス、コロナウイルス、アデノウイルスなどのウイルスが原因となることが多いとされています。一方、扁桃炎はウイルス性の場合もありますが、溶血性レンサ球菌(溶連菌)などの細菌が原因となることも頻繁にあります。細菌性扁桃炎の場合、抗生物質による治療が必要になる場合があるため、原因の特定が重要とされています。
症状の現れ方の特徴では、風邪は鼻水、鼻づまり、くしゃみ、軽度ののどの痛み、咳などの上気道症状が中心となります。発熱は軽度から中等度(37〜38度程度)であることが多く、全身症状は比較的軽微とされています。扁桃炎では、強いのどの痛み、嚥下困難、高熱(38.5度以上)、全身の倦怠感、頭痛などがより顕著に現れる傾向があります。
影響を受ける部位では、風邪は鼻腔、咽頭、喉頭を含む上気道全体に影響しますが、扁桃炎は主に扁桃とその周辺組織に限局した炎症が特徴です。扁桃炎では扁桃の腫れや発赤、白い膿栓の付着、リンパ節の腫れなどの局所症状が明確に現れることが多いとされています。また、扁桃炎では口を開けにくくなったり、唾液を飲み込むのが困難になったりする症状も特徴的です。
風邪と扁桃炎の違いを理解することで適切な対応が可能になります。
続いて、風邪から扁桃炎に移行する場合について見ていきましょう。
風邪から扁桃炎に移行する場合の症状と経過
風邪から扁桃炎に移行する場合は、初期の軽度な症状から徐々に局所症状が強くなり、全身症状も悪化する経過をたどることが特徴とされています。
症状の変化パターンについて、最初は典型的な風邪症状(鼻水、軽いのどの痛み、軽度の発熱)から始まることが多いとされています。その後、2〜3日経過すると、のどの痛みが徐々に強くなり、特に物を飲み込む時の痛みが顕著になります。発熱も次第に高くなり、38度を超える場合が多くなります。この段階で扁桃の腫れや発赤が明確になることが一般的です。
移行のメカニズムでは、風邪ウイルスによる上気道の炎症により、局所の免疫機能が低下し、細菌の二次感染が起こりやすくなることが考えられています。特に疲労や睡眠不足、ストレスなどにより全身の免疫力が低下している場合には、このような移行が起こりやすいとされています。また、口呼吸の増加により口腔内が乾燥し、細菌の繁殖に適した環境になることも要因の一つです。
注意すべき症状の変化として、のどの痛みが急激に悪化し、水分を摂取することも困難になる場合があります。発熱が39度以上になったり、首のリンパ節が著明に腫れて痛みを伴ったりする場合には、細菌性扁桃炎への移行を疑う必要があります。また、扁桃に白い膿が付着したり、口臭が強くなったりする場合も重要なサインとされています。
経過の個人差では、免疫力の状態、年齢、基礎疾患の有無などにより移行の速度や重症度は大きく異なります。小児や高齢者では症状の変化が急速に進むことがあり、より注意深い観察が必要とされています。
風邪から扁桃炎への移行は早期の対応が重要です。
次に、適切な対処法について説明いたします。
風邪による扁桃炎の対処法と注意すべきポイント
風邪による扁桃炎の対処法では、適切な局所ケアと全身管理、症状の悪化を防ぐための注意点を理解することが重要とされています。
局所ケアの重要性について、のどの痛みや炎症を軽減するためのうがいが効果的とされています。温かい塩水(コップ1杯に塩小さじ半分程度)でのうがいは、炎症の軽減と細菌の除去に役立つ可能性があります。ただし、強すぎる塩分濃度や過度に熱い温度は炎症を悪化させる場合があるため、適温で行うことが大切です。市販のうがい薬も有効な場合がありますが、使用方法を適切に守ることが重要です。
全身管理では、十分な水分摂取が特に重要です。のどの痛みにより水分摂取が困難になりがちですが、脱水は症状を悪化させる可能性があります。冷たすぎたり熱すぎたりしない、温かい飲み物や常温の水を少量ずつ頻繁に摂取することが推奨されます。栄養の確保も重要で、固形物の摂取が困難な場合には、スープやゼリー、アイスクリームなどの摂取しやすい食品を選ぶことが有効とされています。
症状軽減のための工夫として、室内の湿度を適切に保つ(50〜60%程度)ことで、のどの乾燥を防ぎ症状の軽減が期待できます。また、首周りを温めることで血行を促進し、炎症の改善に役立つ場合があります。声を出すことは扁桃への刺激となるため、可能な限り安静にし、大きな声での会話は控えることが推奨されます。
注意すべきポイントでは、市販の解熱鎮痛剤の使用により一時的に症状が軽減されても、根本的な治療にはならないことを理解することが重要です。特に細菌性扁桃炎の場合には抗生物質による治療が必要になるため、症状の改善が見られない場合には早めの受診が必要とされています。また、アルコールや刺激の強い食品は炎症を悪化させる可能性があるため避けることが大切です。
風邪による扁桃炎の対処法は症状の程度により異なるため、適切なケアについてはご相談ください。
続いて、風邪以外の扁桃炎の原因について見ていきましょう。
風邪以外で扁桃炎を引き起こす原因と鑑別
扁桃炎は風邪以外にも様々な原因で生じる可能性があり、原因に応じて治療法が大きく異なるため、適切な鑑別が重要とされています。
細菌性扁桃炎の特徴として、最も頻度の高い原因菌である溶血性レンサ球菌(溶連菌)による扁桃炎では、急激な発症、高熱、強いのどの痛み、扁桃の著明な腫れと白い膿の付着が特徴的です。溶連菌感染では特徴的な発疹(猩紅熱様発疹)が現れる場合もあります。黄色ブドウ球菌やインフルエンザ菌なども扁桃炎の原因となる場合があり、これらの細菌性感染では抗生物質による治療が必要とされています。
ウイルス性扁桃炎では、EBウイルス(伝染性単核球症)による扁桃炎が特徴的で、高熱と扁桃の腫れに加えて、全身のリンパ節腫脹、肝脾腫、異型リンパ球の出現などの全身症状を伴うことがあります。アデノウイルス、ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルスなども扁桃炎の原因となる可能性があります。
その他の原因では、真菌(カンジダなど)による扁桃炎、アレルギー性扁桃炎、自己免疫疾患に伴う扁桃炎、悪性腫瘍による扁桃の腫大なども考慮する必要があります。また、慢性扁桃炎では反復性の症状が特徴で、扁桃摘出術の適応となる場合もあるとされています。免疫力低下状態(HIV感染、化学療法中など)では、通常とは異なる病原体による扁桃炎が生じる可能性もあります。
鑑別のポイントとして、症状の発症様式(急性か慢性か)、随伴症状の有無、年齢、基礎疾患の有無、抗生物質への反応などが重要な判断材料となります。溶連菌感染では迅速診断キットによる検査が可能で、EBウイルス感染では血液検査により診断が確定される場合があります。
扁桃炎の原因の鑑別は専門的な判断が必要で、適切な診断と治療のためには医療機関での評価が重要です。
最後に、受診すべきタイミングについて説明いたします。
扁桃炎で医療機関を受診すべきタイミングと治療
扁桃炎で医療機関への相談を検討すべきタイミングとして、症状の重症度や持続期間、合併症のリスクなどを総合的に判断することが重要とされています。
早急な受診を検討すべき症状として、高熱(38.5度以上)が2日以上続く場合や、水分摂取が困難なほど強いのどの痛みがある場合があります。呼吸困難や嚥下困難が著明な場合、首の腫れやこわばりを伴う場合には、重篤な合併症(扁桃周囲膿瘍、深頸部感染など)の可能性があるため緊急受診が必要とされています。また、意識障害や全身状態の悪化を伴う場合にも早急な対応が求められます。
継続的な観察が必要なケースでは、適切な対症療法を行っても3〜5日以上症状が改善しない場合や、一度改善した症状が再度悪化する場合があります。反復性扁桃炎(年に4回以上の扁桃炎を繰り返す)の場合には、慢性扁桃炎として専門的な評価が必要になる可能性があります。また、扁桃に持続する腫れや硬結がある場合には、悪性疾患の除外も考慮される場合があります。
治療の選択について、細菌性扁桃炎と診断された場合には、原因菌に応じた抗生物質による治療が基本となります。溶連菌感染ではペニシリン系抗生物質が第一選択とされることが多く、適切な期間(通常10日間程度)の服用完遂が重要です。ウイルス性扁桃炎では抗生物質は効果がないため、対症療法(解熱鎮痛剤、うがい薬など)が中心となります。
合併症の予防では、適切な治療により扁桃周囲膿瘍、急性糸球体腎炎、リウマチ熱などの重篤な合併症を予防することが可能とされています。特に溶連菌感染では、適切な抗生物質治療により合併症のリスクを大幅に減少させることができます。
特に注意が必要な方として、免疫力が低下している方、慢性疾患をお持ちの方、小児や高齢者では、症状が軽微でも早めの受診が推奨される場合があります。また、妊娠中の方では使用できる薬剤に制限があるため、専門的な判断が特に重要とされています。
扁桃炎の診断と治療には専門的な知識と判断が必要であり、適切な対応についてはご相談ください。早期の正確な診断と治療により、症状の改善と合併症の予防が期待できる場合があります。
※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療に代わるものではありません。症状や治療に関するご相談は、医療機関にご相談ください。
監修医師

略歴
2014年10月 | 神戸大学博士課程入学 |
2019年3月 | 博士課程卒業医師免許取得 |
2019年4月 | 赤穂市民病院 |
2021年4月 | 亀田総合病院 |
2022年1月 | 新宿アイランド内科クリニック院長 |
2023年2月 | いずみホームケアクリニック |