風邪で目やにが出るのはなぜ?症状と特徴・適切な対処法について

風邪

風邪をひいた際に「いつもより目やにが多い」「目やにで目が開けにくい」といった症状を経験された方もいらっしゃるのではないでしょうか。

風邪による目やにの増加は、鼻涙管の炎症や涙の排出機能低下、ウイルス感染の眼部への波及などによって生じる可能性があるとされています。

風邪で目やにが出る症状は比較的よく見られるものですが、症状の程度や性状には個人差があります。

適切な清拭と感染予防により症状の軽減が期待できる場合がありますが、不適切な処理により細菌の二次感染や症状の悪化を招く可能性もあります。

また、結膜炎などの合併症への進行や、視力に影響する重篤な眼疾患との鑑別が重要な場合もあるため、専門的な判断が重要とされています。

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風邪で目やにが出る原因は?

風邪で目やにが出る主な原因は、鼻涙管の機能低下と炎症の波及、ウイルス感染による直接的影響、それに伴う涙の成分変化が考えられるとされています。

鼻涙管機能不全によるメカニズムについて、鼻涙管は涙を鼻腔に排出する重要な通路で、風邪による鼻腔や上咽頭の炎症により、この排出経路が狭くなったり閉塞したりする場合があります。正常な涙の排出が困難になると、眼表面に涙が停滞し、細菌の繁殖しやすい環境が形成されます。また、停滞した涙に含まれる老廃物やタンパク質が濃縮され、粘稠な分泌物として目やにの形成につながるとされています。

ウイルス感染の直接的影響では、風邪ウイルスが上気道から涙道を通じて、または手指を介して眼表面に感染が波及する場合があります。アデノウイルスなど特定のウイルスは結膜炎を引き起こしやすく、結膜の炎症により分泌物の産生が増加し、目やにが多くなることがあるとされています。ウイルス性結膜炎では、初期は透明で水様の分泌物から始まり、炎症の進行と共に粘稠な分泌物に変化する場合があります。

涙の成分変化による影響として、風邪による全身の炎症反応により、涙の成分バランスが変化する場合があります。炎症性物質の増加や、抗菌作用のあるラクトフェリンなどの濃度変化により、涙の粘稠度が高まり目やにとして感じられることがあるとされています。また、発熱による脱水状態では、涙の水分量が減少し、相対的にタンパク質濃度が高くなることも目やに増加の要因となります。

細菌の二次感染では、風邪により免疫機能が低下している状態で、眼表面の常在菌のバランスが崩れ、病原性細菌が増殖しやすくなる場合があります。特に手指で目を擦ることにより、鼻や口から細菌が眼部に運ばれ、細菌性結膜炎を併発する可能性があります。細菌感染では、膿性で黄色や緑色を帯びた目やにが特徴的とされています。

睡眠中の涙液分泌減少も関連要因の一つです。風邪により睡眠の質が低下したり、口呼吸により眼表面が乾燥したりすることで、涙液による自然な洗浄作用が低下します。この状態では細菌や異物が眼表面に蓄積しやすくなり、朝起床時の目やに増加につながるとされています。

風邪による目やにの原因は複合的で個人差があるため、症状の現れ方も人によって異なります。

続いて、風邪による目やにの具体的な症状について見ていきましょう。

風邪による目やにの症状と特徴

風邪による目やには、透明から黄色っぽい分泌物として現れ、朝起床時に最も多く、日中は比較的軽微になることが特徴とされています。

目やにの性状と変化について、初期には透明で粘稠性の低い分泌物から始まることが多いとされています。風邪の進行や細菌の二次感染により、徐々に白色や黄色を帯びた粘稠な分泌物に変化する場合があります。純粋にウイルス性の場合は比較的透明で水様の分泌物が多いですが、細菌感染を併発すると膿性で色の濃い分泌物になる傾向があります。血液が混じることは稀ですが、激しく目を擦った場合などに軽度の血液混入がある場合もあります。

出現パターンの特徴として、朝起床時に最も多くの目やにが認められることが一般的です。これは睡眠中の涙液分泌減少と、瞬きによる自然な清拭作用の低下により、分泌物が蓄積されるためとされています。日中は涙液分泌と瞬きにより自然に清拭されるため、目やにの量は減少することが多いですが、疲労時や夕方に再び増加する場合があります。

随伴症状との関連では、軽度の眼の充血や異物感を伴うことがあります。目のかゆみや軽い痛みを感じる場合もありますが、激しい痛みや視力低下を伴うことは稀とされています。まぶたの軽度の腫れや、起床時にまぶたが目やにで固着することもありますが、通常は温かいタオルで軽く拭くことで改善します。

両眼性か片眼性かの違いでは、風邪による目やには両眼に現れることが多いとされています。ただし、手指を介した感染や、寝る時の体位により片眼から始まることもあります。片眼のみに限局している場合は、他の原因(細菌性結膜炎、外傷、異物など)の可能性も考慮する必要があります。

他の風邪症状との時間的関連として、通常は鼻づまりや鼻水などの鼻症状と同時期に現れることが多いとされています。鼻涙管の機能低下が関与する場合は、鼻症状の改善と共に目やにも軽減する傾向があります。ただし、ウイルス性結膜炎を併発した場合は、他の風邪症状が改善した後も数日間続く場合があります。

日常生活への影響では、起床時の目やににより一時的に視界がぼやけたり、目が開けにくくなったりすることがあります。しかし、適切に清拭することで視力に問題はなく、日中の活動に大きな支障をきたすことは通常ありません。ただし、コンタクトレンズ使用者では装用時の不快感や、レンズの汚れが早くなるなどの影響がある場合があります。

風邪による目やにの症状を理解することで適切な対応が可能になります。

次に、これらの症状に対する適切な対処法について説明いたします。

風邪で目やにが出る時の対処法と注意点

風邪で目やにが出る時の対処法は、清潔で安全な清拭方法と感染拡大の防止、眼部の適切なケアが重要なポイントとされています。

正しい清拭方法について、清潔な温かい濡れタオルやガーゼを使用して、目頭から目尻に向かって優しく拭き取ることが基本とされています。一度使用したタオルの部分は再使用せず、常に清潔な部分を使用することで感染拡大を防ぐことができます。強く擦ることは避け、目やにが固着している場合は、温かい濡れタオルを数分間当てて柔らかくしてから、そっと拭き取ることが推奨されます。

使い捨て清拭材料の活用では、ティッシュペーパーや清潔なガーゼ、綿棒などを使用することで、より衛生的な処理が可能になります。これらの材料は一回の使用で廃棄し、決して再使用しないことが重要です。市販の眼用清拭シートも有効ですが、アルコール成分が含まれていない、眼部専用のものを選択することが推奨されます。

手指衛生の徹底として、目やにの処理前後には必ず石けんでの手洗いまたは手指消毒を行うことが重要です。これにより、手指を介した細菌の感染や、他の部位への感染拡大を防ぐことができるとされています。また、無意識に目を擦る行為を避け、必要な場合は清潔な手指で行うことが大切です。

温湿布による症状軽減では、清潔な温かいタオルを閉じた目の上に5〜10分程度置くことで、血行促進と分泌物の軟化効果が期待されます。温度は体温より少し温かい程度(40〜42度程度)に調整し、熱すぎる温度は避けることが重要です。温湿布後は、軽く清拭することで、より効果的に分泌物を除去できます。

コンタクトレンズ使用時の注意点では、目やにが多い期間中はコンタクトレンズの使用を控え、眼鏡での過ごすことが推奨されます。どうしても使用が必要な場合は、使い捨てタイプを選択し、装用時間を短縮することが大切とされています。レンズケースやケア用品も清潔に保ち、症状改善後は新しいものに交換することが推奨されます。

避けるべき危険な行為として、目を強く擦ることは症状を悪化させるだけでなく、角膜を傷つける危険性があります。また、市販の目薬を自己判断で使用することも、症状によっては適切でない場合があるため注意が必要です。他人のタオルや洗面用具の共用も感染拡大の原因となるため避けるべきとされています。

感染拡大防止の重要性では、家族や同居者への感染を防ぐため、タオルや洗面用具の共用を避けることが重要です。特にウイルス性結膜炎の場合は感染力が強いため、手洗いの徹底と、使用した物品の適切な消毒が推奨されます。職場や学校では、症状が強い間は可能な限り外出を控えることも社会的責任の一つとされています。

症状観察のポイントとして、目やにの量や色調の変化、充血の程度、痛みの有無、視力への影響などを注意深く観察することが重要です。症状が悪化したり、新たな症状が現れたりした場合は、早めに専門的な相談を検討することが推奨されます。

風邪による目やにの対処法は適切に行うことで症状の軽減と感染拡大防止が期待されるため、正しい知識に基づいた対応についてはご相談ください。

続いて、風邪以外で目やにが出る場合について見ていきましょう。

風邪以外で目やにが出る場合の可能性

目やには風邪以外の様々な原因でも生じる可能性があり、特に感染性の高い結膜炎や、視力に影響する重篤な眼疾患との鑑別が重要とされています。

細菌性結膜炎による目やにでは、膿性で黄色から緑色を帯びた粘稠な分泌物が大量に出ることが特徴的です。黄色ブドウ球菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌などが原因となることが多く、抗生物質による治療が必要とされています。朝起床時にまぶたが完全に固着するほどの大量の膿性分泌物があり、強い充血と異物感を伴うことが一般的です。放置すると角膜にも感染が波及し、視力低下のリスクがあるため早期の治療が重要とされています。

ウイルス性結膜炎では、アデノウイルスによる流行性角結膜炎(はやり目)が最も重要な疾患です。初期は透明で水様の分泌物から始まり、徐々に粘稠な分泌物に変化します。強い感染力を持ち、家族や職場での集団感染を引き起こしやすいため、適切な感染対策が必要です。症状は2〜3週間続くことがあり、角膜に混濁を残す場合もあるため、専門的な管理が重要とされています。

アレルギー性結膜炎による症状では、透明で粘稠な分泌物と強いかゆみが特徴的です。花粉症、ハウスダスト、動物の毛などが原因となり、季節性や環境要因との関連が明確な場合が多いとされています。両眼性で、くしゃみや鼻水などのアレルギー症状を同時に伴うことが一般的です。抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬による治療が効果的ですが、原因物質の除去も重要な対策です。

ドライアイ(乾性角結膜炎)では、涙液の量的・質的異常により、代償性に粘稠な分泌物が増加することがあります。現代社会ではVDT作業やコンタクトレンズ使用により増加傾向にあり、目の疲れ、異物感、充血などの症状を伴います。人工涙液の点眼や環境改善により症状の軽減が期待されますが、重症例では専門的な治療が必要とされています。

涙道閉塞による症状では、鼻涙管や涙小管の狭窄・閉塞により涙の排出が障害され、慢性的な流涙と目やにが生じます。先天性と後天性があり、後天性では外傷、感染、腫瘍などが原因となります。涙嚢炎を併発すると膿性の分泌物が増加し、涙嚢部の腫脹や圧痛を伴う場合があるとされています。

その他の重要な疾患として、角膜炎では角膜の混濁と激しい痛み、視力低下を伴い、緑膿菌やヘルペスウイルスなどが原因となる場合があります。眼瞼炎では睫毛の根部の炎症により、睫毛に付着する鱗屑状の分泌物が特徴的です。また、稀ですが眼部腫瘍や全身疾患(関節リウマチ、シェーグレン症候群など)の一症状として目やにが増加する場合もあります。

新生児や乳児では、先天性鼻涙管閉塞や新生児膿漏眼(淋菌性・クラミジア性結膜炎)なども重要な鑑別疾患となります。これらは視力発達に重要な影響を与える可能性があるため、早期の専門的評価と治療が必要とされています。

目やにの原因は多岐にわたり、中には感染力の強いものや視力に影響するものも含まれるため、適切な医学的評価が重要です。

最後に、医療機関を受診すべきタイミングについて説明いたします。

目やにで医療機関を受診すべきタイミング

目やにで医療機関への相談を検討すべきタイミングとして、症状の重症度や感染性の可能性、視力への影響などを総合的に判断することが重要とされています。

早急な受診を検討すべき症状として、大量の膿性分泌物が持続する場合や、強い眼痛を伴う場合があります。特に、朝起床時にまぶたが完全に固着するほどの膿性目やにや、黄色から緑色を帯びた分泌物が大量に出る場合には、細菌性結膜炎の可能性が高く、早期の抗生物質治療が必要とされています。また、視力の低下や視界のかすみを伴う場合には、角膜への感染波及の可能性があるため緊急性が高いとされています。

強い充血と激しい痛みを伴う場合や、光をまぶしく感じる(羞明)症状がある場合には、角膜炎や虹彩炎などの重篤な眼疾患の可能性があるため、直ちに眼科専門医の診察を受けることが重要です。また、頭痛や発熱を伴う場合には、全身感染の一部として眼症状が現れている可能性もあります。

感染拡大防止の観点から受診が必要なケースでは、家族や職場で同様の症状を呈する人が複数いる場合や、症状が強く感染性結膜炎が疑われる場合があります。特に流行性角結膜炎(はやり目)は学校保健安全法により出席停止の対象疾患となるため、確定診断と適切な感染対策のために早期受診が推奨されます。

継続的な観察が必要なケースとして、適切なセルフケアを行っても1週間以上目やにが改善しない場合があります。風邪の他の症状が完全に回復したにもかかわらず、目やにだけが持続する場合には、細菌の二次感染や他の眼疾患の可能性を考慮する必要があります。また、一度改善した症状が再び悪化する場合にも専門的な評価が推奨されます。

コンタクトレンズ使用者での特別な注意として、コンタクトレンズ装用中や装用後に目やにが増加した場合には、レンズ関連感染症の可能性があるため早めの受診が重要です。特に使い捨てレンズの使用期限を守らない場合や、ケア用品の不適切な管理により、重篤な角膜感染症を引き起こすリスクがあるとされています。

小児や高齢者での特別な配慮として、小児では症状の訴えが不明確な場合があるため、機嫌の悪化、食欲不振、眼を頻繁に擦る行動などの変化にも注意が必要です。新生児や乳児の目やには、先天性疾患や重篤な感染症の可能性もあるため、軽微でも早期の専門的評価が推奨されます。高齢者では免疫力の低下により感染が重篤化しやすいため、軽度の症状でも早めの相談が重要とされています。

職業上の配慮が必要な場合として、教育関係者、医療従事者、食品関係者など、感染拡大のリスクが高い職業に従事している方では、軽度の症状でも早期の確定診断と適切な就業制限の判断が必要になる場合があります。

受診前の準備として、症状の経過(発症時期、分泌物の性状変化、随伴症状の有無)、最近の旅行歴や感染者との接触歴、使用中の薬剤や化粧品、コンタクトレンズの使用状況などを整理しておくことで、より迅速で正確な診断につながる可能性があります。また、感染性の可能性がある場合は、受診時にマスクを着用し、手指衛生を徹底することが社会的責任として重要とされています。

目やにの症状は多様な原因により生じる可能性があり、中には感染力の強いものや視力に影響するものも含まれるため、適切な医学的判断についてはご相談ください。早期の適切な対応により、症状の改善と感染拡大の防止、視力の保護が期待できる場合があります。


※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療に代わるものではありません。症状や治療に関するご相談は、医療機関にご相談ください。

監修医師

理事長・院長
今村 英利
Imamura Eli

略歴

2014年10月神戸大学博士課程入学
2019年3月博士課程卒業医師免許取得
2019年4月赤穂市民病院
2021年4月亀田総合病院
2022年1月新宿アイランド内科クリニック院長
2023年2月いずみホームケアクリニック