風邪で味がしない原因とは?味覚異常の対処法と回復までの期間を解説

風邪

風邪をひいている時に「味がしない」と感じる経験をしたことがある方は多いのではないでしょうか。

食事の味を感じられないことで食欲が低下し、回復に必要な栄養摂取にも影響が出る場合があります。

風邪で味がしない症状は、主に鼻づまりによる嗅覚の低下や、炎症による味覚機能の一時的な障害が原因とされています。

多くの場合は風邪の回復とともに味覚も正常に戻るとされていますが、回復までの期間や程度には個人差があります。

適切な対処法により症状の軽減や早期回復が期待できる場合もありますが、長期化する場合は他の原因の可能性も考慮する必要があります。

風邪で味がしない症状について

風邪で味がしない症状は、風邪に伴う一般的な症状の一つとして多くの方が経験するとされています。

風邪による味覚異常の頻度と特徴では、風邪患者の30~80%程度で何らかの味覚や嗅覚の異常が報告されているとされています。症状の現れ方は様々で、完全に味を感じなくなる場合もあれば、味の感じ方が鈍くなる場合、特定の味だけが分からなくなる場合もあります。また、普段と異なる味に感じられる場合や、口の中に不快な味が残る場合もあります。

味覚と嗅覚の関係性は、味がしない症状を理解する上で重要な要素です。私たちが感じる「味」の多くは、実際には舌で感じる基本的な味覚(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)と、鼻で感じる嗅覚の組み合わせによって構成されています。風邪による鼻づまりで嗅覚が低下すると、食べ物の香りを感じにくくなり、結果として「味がしない」と感じることが多いとされています。

症状の現れ方の特徴として、風邪の初期から中期にかけて現れることが多く、発熱や鼻づまり、のどの痛みなどの他の症状と同時期に出現することが一般的です。症状の程度は風邪の重篤度や個人の体質によって大きく異なり、軽度の場合から日常生活に支障をきたすほどの重度の場合まで幅があります。

風邪で味がしない症状は一時的なものであることが多いですが、その背景にあるメカニズムを理解することが適切な対処につながります。

続いて、味がしなくなる具体的な原因について詳しく見ていきましょう。

風邪で味がしなくなる原因とメカニズム

風邪で味がしなくなる原因は複数の要因が関わっており、主に嗅覚への影響と味覚機能への直接的な影響に分けられます。

鼻づまりによる嗅覚への影響が最も一般的な原因とされています。風邪ウイルスの感染により鼻腔や副鼻腔の粘膜が炎症を起こし、腫脹や分泌物の増加により鼻づまりが生じます。この状態では、食べ物の香り成分が嗅覚受容体に到達しにくくなり、嗅覚機能が低下します。嗅覚は味覚の重要な構成要素であるため、嗅覚の低下により「味がしない」と感じることになります。

炎症による味蕾への影響も重要な要因です。風邪ウイルスの感染や炎症反応により、舌や口腔内の味蕾(味を感じる感覚器官)の機能が一時的に低下することがあります。また、口腔内の乾燥や唾液分泌の変化により、味物質が味蕾に適切に伝達されにくくなる場合もあります。

ウイルス感染による神経への影響については、一部のウイルスが嗅神経や味覚神経に直接的な影響を与える可能性があるとされています。この場合、神経の機能が一時的に障害されることで、嗅覚や味覚の異常が生じます。ただし、このメカニズムによる影響は比較的稀で、多くの場合は可逆的(回復可能)とされています。

全身状態の影響として、発熱や脱水、栄養不足、薬剤の副作用なども味覚異常に影響する可能性があります。風邪により食欲が低下し、十分な栄養や水分摂取ができない状態が続くと、味覚機能の回復が遅れる場合があります。また、風邪薬の中には味覚に影響を与える成分が含まれている場合もあります。

風邪で味がしなくなる原因は複合的で、個人によって主要な要因が異なる場合があります。これらのメカニズムを理解することで、症状の経過や対処法についてより適切な判断ができます。

次に、味覚異常の種類と経過について説明いたします。

風邪による味覚異常の種類と経過

風邪による味覚異常は、その現れ方や程度によっていくつかの種類に分類され、それぞれ異なる経過をたどるとされています。

完全に味がしない場合の特徴では、すべての味覚(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)を感じにくくなる状態を指します。この場合、食べ物を口に入れても味を認識することが困難で、食事への関心や食欲が著しく低下することが多いとされています。多くは鼻づまりによる嗅覚の完全な遮断が主要な原因で、鼻づまりの改善とともに回復することが期待できます。

特定の味だけ感じにくい場合では、甘味だけが分からない、塩味が感じにくいなど、特定の味覚のみに異常が現れることがあります。この場合は味蕾の部分的な機能低下や、特定の神経経路への影響が考えられます。また、同じ食べ物でも普段と異なる味に感じられる味覚錯誤という状態もあり、苦く感じる、金属的な味がするなどの症状が現れることがあります。

回復までの一般的な期間については、多くの場合は風邪の他の症状と同様に1~2週間程度で改善するとされています。鼻づまりが主要な原因の場合は、鼻腔の炎症が治まれば比較的速やかに回復することが多いです。一方、味蕾や神経への直接的な影響がある場合は、回復により長い期間を要することがあります。

経過の個人差として、年齢や基礎疾患の有無、免疫状態、栄養状態などが回復期間に影響する可能性があります。高齢者では回復が遅れる傾向があり、糖尿病や亜鉛欠乏などの基礎疾患がある場合も回復期間が延長する可能性があるとされています。

症状の変動パターンでは、一日の中でも症状の程度が変化することがあります。朝は味がしないが夕方には少し感じられるようになる、食事の種類によって感じ方が異なるなど、様々なパターンが報告されています。また、風邪の回復過程で味覚も段階的に改善していくことが多く、最初に一部の味覚から戻り始めることが一般的です。

風邪による味覚異常の種類と経過には幅がありますが、適切な対処により回復を促進できる可能性があります。

続いて、味がしない時の具体的な対処法について見ていきましょう。

風邪で味がしない時の対処法

風邪で味がしない時の対処法は、主な原因である鼻づまりの改善と、味覚機能の回復をサポートする方法に分けられます。

鼻づまり改善による味覚回復では、鼻腔の炎症を軽減し、嗅覚機能を回復させることが重要とされています。鼻うがいは塩水(生理食塩水)を使用して行うことで、鼻腔内の分泌物や炎症物質を除去し、粘膜の状態を改善する効果が期待できます。ただし、正しい方法で行うことが重要で、使用する水は煮沸後に冷ました水や蒸留水を使用することが推奨されます。

蒸気吸入も有効な方法の一つとされています。温かいお湯の蒸気を吸い込むことで、鼻腔内の湿度を上げ、分泌物の排出を促進することができます。洗面器に熱いお湯を入れ、タオルを頭にかけて蒸気を吸い込む方法や、加湿器を使用して室内の湿度を適切に保つことも効果的です。

口腔ケアと炎症軽減では、口の中を清潔に保つことで味蕾の機能回復を支援することができます。優しいうがいや歯磨きにより、口腔内の細菌や炎症物質を除去し、味蕾周囲の環境を改善します。ただし、強すぎるうがい薬や刺激の強い歯磨き粉は、かえって粘膜を刺激する可能性があるため注意が必要です。

嗅覚を刺激する方法として、意識的に香りの強い食材(生姜、ニンニク、ハーブなど)の香りを嗅ぐことで、嗅覚機能の回復を促進できる可能性があります。ただし、刺激が強すぎる場合は逆効果となることもあるため、様子を見ながら行うことが重要です。

十分な水分補給と栄養摂取も回復には重要とされています。脱水状態では粘膜の機能が低下し、味覚の回復が遅れる可能性があります。また、亜鉛やビタミンB群などの栄養素は味覚機能に重要な役割を果たすとされており、バランスの取れた栄養摂取が推奨されます。

市販薬の使用については、鼻づまりを改善する点鼻薬や内服薬が症状の軽減に役立つ場合がありますが、使用方法や期間について注意が必要です。長期間の使用は薬剤性鼻炎を引き起こす可能性があるため、適切な期間での使用が重要とされています。

風邪で味がしない時の対処法は個人の症状や体質によって効果が異なるため、様子を見ながら適切な方法を選択することが重要です。

次に、味がしない時の食事の工夫について説明いたします。

味がしない時の食事の工夫と注意点

味がしない時の食事の工夫では、栄養摂取を維持しながら食べやすさを重視することが重要とされています。

食べやすい食べ物の選び方では、温度による刺激を活用することが有効です。温かい食べ物は香りが立ちやすく、残存する嗅覚機能を刺激しやすいとされています。スープ類、温かいお茶、温かいおかゆなどは、嗅覚への刺激と水分補給を兼ね備えた優秀な選択肢です。逆に、冷たい食べ物でも、アイスクリームやシャーベットなど、口当たりが良く食べやすいものは食欲不振時の栄養補給に役立つ場合があります。

調理法や味付けの工夫については、通常より濃い目の味付けにすることで、低下した味覚でも味を感じやすくすることができます。ただし、塩分や糖分の過剰摂取には注意が必要で、他の調味料(だし、酸味、辛味など)を組み合わせることで、塩分を抑えながら味わい深い料理にすることが可能です。酸味(レモン、酢など)は比較的感じやすい味覚の一つとされており、食欲増進にも効果的です。

食感による刺激を活用することも重要なポイントです。プリンやゼリーなどの滑らかな食感、クラッカーやトーストなどの歯ごたえのある食感など、異なる食感を楽しむことで、味覚以外の感覚で食事の満足感を得ることができます。また、温度差のある食材を組み合わせることで、口の中での刺激を増やすことも効果的です。

栄養不足を防ぐポイントでは、少量でも栄養価の高い食品を選択することが重要です。味がしない時期は食事量が減少しがちですが、回復に必要な栄養素(タンパク質、ビタミン、ミネラル)の摂取を心がけることが大切です。栄養補助食品や栄養ドリンクの活用も、一時的な栄養不足を補う方法として考慮できます。

食事環境の工夫として、食事の見た目を美しくする、好きな音楽を聞きながら食べる、家族や友人と一緒に食べるなど、味覚以外の感覚で食事を楽しむ工夫も食欲維持に役立ちます。また、食事時間を規則正しく保つことで、体のリズムを維持し、回復を促進することも重要とされています。

注意点として、味がしないからといって極端に辛いものや刺激の強いものを摂取すると、炎症が悪化し、回復が遅れる可能性があります。また、味の濃い食事に慣れてしまうと、味覚が回復した際に通常の食事が物足りなく感じる可能性もあるため、段階的な調整が必要です。

味がしない時の食事の工夫は個人の好みや症状によって最適な方法が異なるため、様々な方法を試しながら自分に合った食事スタイルを見つけることが重要です。

最後に、受診を検討すべき場合について説明いたします。

味がしない症状で受診を検討すべき場合

味がしない症状で受診を検討すべき場合は、症状の持続期間や程度、随伴症状によって判断することが重要とされています。

風邪以外の原因による味覚異常の可能性では、副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、口腔内疾患、神経系疾患、内分泌疾患、薬剤による副作用など、様々な原因が考えられます。特に片側のみの味覚異常、突然発症した重篤な味覚異常、他の神経症状を伴う場合などは、風邪以外の原因を疑う必要があります。また、基礎疾患(糖尿病、腎疾患、肝疾患など)がある場合は、これらの疾患の影響による味覚異常の可能性も考慮する必要があります。

長期化する場合の対応として、風邪の他の症状が改善したにも関わらず味覚異常が2週間以上続く場合、症状が徐々に悪化している場合、完全に味を感じなくなった状態が1週間以上続く場合などは、専門的な評価が推奨されます。長期化した味覚異常は、栄養状態や生活の質に大きな影響を与える可能性があるため、早期の対応が重要とされています。

他の症状との関連で注意すべきサインとして、激しい頭痛や顔面痛を伴う場合、視覚や聴覚の異常を伴う場合、嚥下困難や構音障害を伴う場合、意識レベルの変化がある場合などは、重篤な疾患の可能性があるため緊急の評価が必要です。また、高熱が持続する場合、呼吸困難がある場合、首の強い痛みがある場合なども、風邪以外の重篤な感染症の可能性があります。

受診時の準備として、症状の開始時期と経過、味覚異常の程度と種類、随伴症状の有無、服用中の薬剤、基礎疾患の情報などを整理しておくことが重要です。可能であれば、どの味覚がどの程度感じられないかを具体的に記録しておくと、診断に役立ちます。

受診先の選択では、まずは内科やかかりつけ医への相談が適切とされています。必要に応じて耳鼻咽喉科や神経内科などの専門科への紹介を受けることができます。症状が重篤な場合や緊急性がある場合は、救急医療機関への受診も考慮する必要があります。

味覚異常は生活の質に大きな影響を与える症状であり、適切な時期での医療相談により、原因の特定や適切な治療につながる可能性があります。症状や経過についてご不安がある場合は、ご相談ください。


※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療に代わるものではありません。味覚異常に関する症状や対処法についてご相談がある場合は、医療機関にご相談ください。

監修医師

理事長・院長
今村 英利
Imamura Eli

略歴

2014年10月神戸大学博士課程入学
2019年3月博士課程卒業医師免許取得
2019年4月赤穂市民病院
2021年4月亀田総合病院
2022年1月新宿アイランド内科クリニック院長
2023年2月いずみホームケアクリニック