風邪をひいた際に「なぜくしゃみが頻繁に出るのだろう」と疑問に思われる方は多いのではないでしょうか。
風邪でくしゃみが出るのはなぜかというと、主に風邪ウイルスによる鼻粘膜の刺激と炎症が原因とされており、体がウイルスや異物を排除しようとする自然な防御反応の一つです。
風邪によるくしゃみは単なる不快症状ではなく、体の免疫システムが正常に機能している証拠でもありますが、その頻度や強さには個人差があります。
適切な対処により症状の軽減が期待できる場合がありますが、くしゃみの原因は風邪以外の可能性もあるため、症状が長期間続く場合や他の気になる症状を伴う場合には専門的な相談も重要とされています。
風邪でくしゃみが出るのはなぜ?原因とメカニズム
風邪でくしゃみが出るのは、風邪ウイルスによる鼻粘膜への刺激と炎症反応により、体が異物を排除しようとする自然な防御メカニズムが働くためとされています。
くしゃみの基本的な仕組みについて、くしゃみは鼻腔内の刺激を感知した三叉神経が脳幹のくしゃみ中枢に信号を送り、その結果として起こる反射的な呼吸運動とされています。この反射は、鼻腔や上気道に入った異物やウイルスを強制的に外に排出するための生体防御機能の一つです。健康な状態でも、ほこりや強い匂いなどの刺激によりくしゃみは誘発されますが、風邪の際にはこの反射がより敏感になり、頻繁に起こるようになります。
風邪ウイルスによる鼻粘膜への影響では、ウイルスが鼻腔の粘膜細胞に感染すると、粘膜が腫れて炎症を起こし、神経末端が刺激されやすい状態になるとされています。この炎症により鼻粘膜の感受性が高まり、普段では刺激とならないような軽微な要因でもくしゃみが誘発されるようになります。また、ウイルス感染により鼻腔内の分泌物が増加し、これらの分泌物自体もくしゃみの刺激要因となる可能性があります。
炎症反応とくしゃみの関係として、風邪ウイルス感染により放出される炎症性物質(ヒスタミンなど)が神経を刺激し、くしゃみ反射を増強させる作用があるとされています。この炎症反応は感染初期に最も強く、風邪の症状が現れ始める段階でくしゃみが頻発する理由の一つと考えられています。炎症が治まるにつれてくしゃみの頻度も減少していく傾向があります。
体の防御反応としての意味では、くしゃみにより鼻腔内のウイルスや異物を物理的に排除し、感染の拡大を防ぐ重要な役割を果たしているとされています。一回のくしゃみで排出される飛沫には大量のウイルスが含まれており、これにより体内のウイルス量を減少させる効果があると考えられています。ただし、この飛沫は同時に感染源となるため、適切なエチケットが重要です。
風邪でくしゃみが出る理由は体の自然な防御反応によるものですが、その程度や頻度には個人差があります。
続いて、風邪によるくしゃみの具体的な特徴について見ていきましょう。
風邪によるくしゃみの特徴と他の症状との関係
風邪によるくしゃみは連続して起こることが多く、鼻水や鼻づまりなどの他の風邪症状と密接に関連して現れるという特徴があるとされています。
風邪のくしゃみの出方と頻度では、通常2〜3回連続して起こることが多く、アレルギー性のくしゃみと比較して回数は比較的少ないとされています。風邪の初期段階で最も頻繁に現れ、1日に数十回から時には100回近くのくしゃみが出る場合もあります。朝起きた時や温度変化のある環境に入った時に誘発されやすく、個人差はありますが通常は風邪の他の症状の改善と共に徐々に減少していく傾向があります。
鼻水・鼻づまりとの関連では、風邪によるくしゃみは透明でさらっとした鼻水を伴うことが多いとされています。感染初期には大量の鼻水とくしゃみが同時に現れ、これらは相互に関連しています。鼻づまりが強くなると、くしゃみによる鼻腔内の圧力変化により一時的に鼻の通りが良くなる場合もありますが、その後再び鼻づまりが起こることが多いとされています。感染が進行すると鼻水が粘性になり、くしゃみの頻度も変化する傾向があります。
時期による変化のパターンとして、風邪のくしゃみは感染初期の1〜3日目にピークを迎えることが多く、この時期に最も頻繁で強いくしゃみが現れるとされています。その後は徐々に頻度が減少し、通常1週間程度で大幅に改善します。ただし、鼻粘膜の過敏性が残っている場合には、風邪の他の症状が改善した後もしばらくくしゃみが続く可能性があります。季節や環境要因により、症状の持続期間に個人差が生じる場合もあります。
他の風邪症状との組み合わせでは、くしゃみは通常、鼻水、鼻づまり、のどの痛み、軽度の発熱などと同時に現れることが多いとされています。これらの症状の組み合わせパターンにより、風邪の進行段階やウイルスの種類をある程度推測できる場合もあります。咳と同時に現れる場合もありますが、くしゃみは主に上気道(鼻腔)の症状であり、咳は下気道(のど、気管)の症状であるため、症状の出現時期や程度は異なることが多いとされています。
風邪によるくしゃみの特徴を理解することで適切な対処につながりますが、症状の現れ方には個人差があります。
次に、くしゃみが出る時の具体的な対処法について説明いたします。
風邪でくしゃみが出る時の対処法
風邪でくしゃみが出る時の対処法として、鼻粘膜の保湿と刺激の軽減を中心とした基本的なケアと、適切なエチケットの実践が症状の軽減と感染予防に重要とされています。
基本的なケア方法では、鼻腔内の保湿が最も効果的とされています。加湿器を使用して室内の湿度を50〜60%程度に保つことで、乾燥による鼻粘膜への刺激を軽減できます。温かい蒸気を吸入することも有効で、湯気の立つ飲み物を飲む、蒸しタオルを鼻の上に置く、洗面器に熱いお湯を入れてタオルをかぶり蒸気を吸うなどの方法が推奨されます。軽い鼻うがいも鼻腔内の刺激物質を除去し、炎症を和らげる効果が期待できるとされています。
くしゃみを和らげる工夫として、急激な温度変化を避けることが重要です。冷たい空気に急に触れることでくしゃみが誘発されやすくなるため、外出時にはマスクを着用し、室内外の温度差を緩和することが有効とされています。強い匂いや刺激的な香料、ほこりなどもくしゃみの誘発要因となるため、これらの環境を避けることも大切です。鼻を強くかみすぎると粘膜を傷つけ、くしゃみがさらに誘発される可能性があるため、優しく鼻をかむことが推奨されます。
環境改善のポイントでは、空気清浄機の使用によりほこりや花粉などの刺激物質を除去することで、くしゃみの頻度を減らせる可能性があります。寝室の環境を整えることも重要で、枕カバーやシーツをこまめに洗濯し、ダニやほこりを除去することが効果的とされています。喫煙や受動喫煙は鼻粘膜を刺激してくしゃみを悪化させる可能性があるため、避けることが重要です。
エチケットと感染予防では、くしゃみをする際にはティッシュやハンカチで口と鼻を覆い、飛沫の拡散を防ぐことが最も重要とされています。ティッシュがない場合には、袖の内側(肘の内側)でくしゃみを受けることで、手による接触感染のリスクを減らすことができます。くしゃみの後は必ず手洗いを行い、使用したティッシュは速やかに廃棄することが推奨されます。人混みでのマスク着用は、自分の症状軽減と他者への感染予防の両方に効果的とされています。
風邪によるくしゃみへの対処法は個人の症状や環境により効果が異なるため、適切な方法を見つけることが重要です。
続いて、くしゃみが出る風邪以外の原因について見ていきましょう。
くしゃみが出る風邪以外の原因
くしゃみが出る症状は風邪以外にも様々な原因があり、特にアレルギー性疾患や環境要因による場合が多いため、症状の特徴や経過を観察して適切に判断することが重要とされています。
アレルギー性鼻炎との違いでは、アレルギー性鼻炎によるくしゃみは風邪のくしゃみと比較して連続回数が多く、5〜10回以上連続して出ることが特徴的とされています。アレルギー性鼻炎では透明でサラサラした鼻水が大量に出ることが多く、目のかゆみや涙目を伴う場合が多いのに対し、風邪では初期の透明な鼻水が徐々に粘性を帯びてくる傾向があります。また、アレルギー性鼻炎では発熱を伴うことは稀であり、のどの痛みや全身倦怠感も一般的には見られません。
花粉症との見分け方として、花粉症は特定の季節に症状が現れる季節性アレルギー性鼻炎の一種で、スギ花粉の飛散時期(2〜4月)やヒノキ花粉の時期(3〜5月)など、決まった時期に毎年症状が現れることが特徴です。花粉症では外出時に症状が悪化し、室内にいると症状が軽減される傾向があります。風邪の場合は季節性はなく、感染により急に症状が現れ、通常1〜2週間で改善するのに対し、花粉症は花粉の飛散期間中は症状が持続するとされています。
その他の疾患による可能性として、血管運動性鼻炎では温度変化や湿度変化、強い匂いなどの刺激により非アレルギー性のくしゃみや鼻水が生じる場合があります。副鼻腔炎では慢性的な鼻づまりに伴いくしゃみが出ることもあり、この場合は粘性の高い鼻水や後鼻漏(鼻水がのどに流れる)を伴うことが多いとされています。鼻中隔弯曲症や鼻ポリープなどの構造的な問題でも、慢性的な鼻の刺激によりくしゃみが生じる可能性があります。
刺激物質による反応では、化学物質、香水、洗剤、ペットのフケ、ハウスダストなどの環境中の刺激物質により非アレルギー性のくしゃみが誘発される場合があります。職業性の要因として、特定の化学物質や粉塵に曝露される環境で働く方では、職業性鼻炎によるくしゃみが問題となることもあります。薬剤性鼻炎として、血管収縮薬の点鼻薬を長期間使用することにより、かえって鼻粘膜の過敏性が高まりくしゃみが出やすくなる場合もあるとされています。
くしゃみの原因は多様であり、風邪以外の可能性も十分考慮して、症状の特徴や経過を観察することが重要です。
最後に、医療機関を受診すべきタイミングについて説明いたします。
風邪のくしゃみで医療機関を受診すべき場合
風邪のくしゃみで医療機関への相談を検討すべきタイミングとして、症状の重症度、持続期間、他の症状の有無を総合的に判断し、適切な時期に受診することが重要とされています。
注意が必要な症状として、くしゃみが異常に頻繁で日常生活に著しい支障をきたす場合があります。1日に数百回のくしゃみが出る、くしゃみにより睡眠が妨げられる、仕事や学業に集中できないほど症状が強い場合には早めの相談が推奨されます。また、くしゃみに伴い鼻血が頻繁に出る、激しい頭痛を伴う、呼吸困難を感じるなどの症状がある場合には、より緊急性の高い状態の可能性もあるため速やかな受診が必要とされています。
長期間続く場合の対応では、風邪の他の症状が改善したにも関わらず、くしゃみだけが2週間以上続く場合には他の原因の可能性を考慮した検査が必要とされる場合があります。季節を問わず慢性的にくしゃみが続く場合、特定の環境や時間帯に症状が悪化する場合なども、アレルギー性疾患や環境要因による可能性があるため専門的な診断が重要です。症状が徐々に悪化している場合や、従来の対処法で効果が見られない場合も受診のタイミングとされています。
基礎疾患がある方の注意点として、喘息の既往がある方では、風邪によるくしゃみが喘息発作の誘因となる可能性があるため、症状の変化に注意深く観察し、必要に応じて早めの相談が重要です。免疫不全の状態にある方、高齢者、妊娠中の方などでは、風邪症状が重篤化しやすいため、軽微な症状でも早期の医学的評価が推奨されます。アレルギー性疾患の既往がある方では、風邪とアレルギーの症状が重複し、診断や治療が複雑になる場合があるため専門的な判断が必要とされています。
適切な相談のタイミングについて、市販薬による治療で効果が見られない場合、症状により生活の質が著しく低下している場合、風邪以外の原因が疑われる場合などには積極的な受診が推奨されます。また、職場や学校での感染拡大を防ぐため、症状が続いている間の適切な対応について相談することも重要です。症状に対する不安や心配が強い場合、適切な対処法について詳しく知りたい場合なども、遠慮なく相談することが大切とされています。
風邪のくしゃみについての判断や対処法には個人差があり、適切な対応についてはご相談ください。早期の適切な診断と治療により、症状の改善や原因の特定が期待できる場合があります。
※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療に代わるものではありません。症状や治療に関するご相談は、医療機関にご相談ください。
監修医師

略歴
2014年10月 | 神戸大学博士課程入学 |
2019年3月 | 博士課程卒業医師免許取得 |
2019年4月 | 赤穂市民病院 |
2021年4月 | 亀田総合病院 |
2022年1月 | 新宿アイランド内科クリニック院長 |
2023年2月 | いずみホームケアクリニック |